第42話
文字数 1,512文字
「メタバースにおいて魂が内在的意思を持ち得て宿り、数字と原子の融合爆発を引き起こした仮想世界はどうなるか」
「なんだ、ムズっ」
「喋りたいだけだから、ちょいちょい耳残りの良い所だけ聞いていてくれれば、いいからさ」
「馬鹿にすんな。ウチはあんたのちゃんとした話し相手になる」
「最高。じゃあどうなる? 」
ヒミは妃美香の癖である左の口角をゆがめて言った。
「スイーツを腹いっぱい食べても太らない世界」
「ハハハ。あながち間違っていないから、面白いよね、君って」
「君って? なんだよ、偉そうにチビなボクちゃんのくせに」
「言ったな。こっちは褒めたのに」
「そうなんか、スマン。どんな世界なんよ~ぅ」
KZは不貞腐れた仕草を見せながらも答える。
「肉体があるゆえに様々な存在的制約に縛られている人類の概念がガラッと変わるんだ。生きる意味や楽しみを物理的世界ですべて賄う必要が無くなるからね。
物理的価値が下がることでは領土意識にも影響を与えるだろうな。そうなれば、現実世界の利便的価値が暴落して、今も世界で勃発している紛争や戦争における多くの要因となるものが無意味となる。
その夜明けに人間は真のエコロジーの扉を見つけるのかもしれないな」
ヒミは腕を組み自分なりの思索の上に考えた。
「最近見た映画では、人間が容器の中で飼育されて仮想世界を現実として生きている未来が描かれていたんだ。あれは哀しい」
「ボクもその映画を見た。あれは嫌だ。そんなクソとは此処の世界では絶対に許さないし戦う」
「口が悪くなってる」
「そう? ボクの描く未来では、ゲームを一日中する感覚のプラットフォームだから。
個々の意思で行き来出来るし、好きなら居ついてもいいよって感じのやつなんで」
「安心した」
「うん。生身の肉体での生活こそが素晴らしいと考える人もいれば、そんな社会では生き辛くて死ぬしかないのなら『ノベンバー・ソウル・ランド』で暮らせばいいみたいなさ。
現実世界では肉体があるゆえに争うことが此の地では排除されるのさ。
まあ、完全とは言えなくても、肉体を持ち存在しうる関係性のすべては低位の感情取引になるってこと。肉体軽視でなくて、有機生命体の弱肉強食的世界がなくなり人間の情緒もより文化的な愛へと促されると思うんだ。
誰かが捕食され、自分は生き延びるというような世界を払拭しうる絶対的計算により、純粋無垢な弱弱しい魂の居場所が『ノベンバー・ソウル・ランド』には在るから安心してね」
「拒絶反応を示す人達も多そうじゃんか。目先の不安に怯えて、その先のもっと大きな致命的困難を見逃すみたいな」
「そういう人が自然界では淘汰されてしまうからこそ、本当は手を差し伸べているのだけれど」
「でも、そういう人たちって、一番KZを吊るし上げようとすんのよ」
「国の直接な強制だけでなく、民意の雰囲気か生み出す化け物には敵わないかな。
あの頃を思い出しちやうよ」
「ウチ、今、急に誕生会の後の狂騒の匂いがしたよ。
何だろうか、コレ」
「ふたりの記憶が共鳴したんだ。今、ボクもあの時のマスコミや近所の大人たちの顔に襲われていたから」
「スゴイ、この世界」
「記憶のコードは最強なんだよ。でもこの匂いは一旦しまっておこうか。
悲しくなってきた」
「でも、そこまで考えているKZが『ノベンバー・ソウル・ランド』にはいるから、安心だ」
「それだと・・・・良かったんだけど」
「え、終わったことを悔やんでいるその感じ何よ? 」
― ウゥーウ~~ ―
カフェテラスの前でパトカーに囲まれ、武装警備隊に銃口を向けられながら叫ぶ者が突如現れた。
― バン、バン、バン ―
一体のモブが威嚇射撃に怯むこともなく、KZとヒミが座るテーブルへと歩いて来ていた。
「なんだ、ムズっ」
「喋りたいだけだから、ちょいちょい耳残りの良い所だけ聞いていてくれれば、いいからさ」
「馬鹿にすんな。ウチはあんたのちゃんとした話し相手になる」
「最高。じゃあどうなる? 」
ヒミは妃美香の癖である左の口角をゆがめて言った。
「スイーツを腹いっぱい食べても太らない世界」
「ハハハ。あながち間違っていないから、面白いよね、君って」
「君って? なんだよ、偉そうにチビなボクちゃんのくせに」
「言ったな。こっちは褒めたのに」
「そうなんか、スマン。どんな世界なんよ~ぅ」
KZは不貞腐れた仕草を見せながらも答える。
「肉体があるゆえに様々な存在的制約に縛られている人類の概念がガラッと変わるんだ。生きる意味や楽しみを物理的世界ですべて賄う必要が無くなるからね。
物理的価値が下がることでは領土意識にも影響を与えるだろうな。そうなれば、現実世界の利便的価値が暴落して、今も世界で勃発している紛争や戦争における多くの要因となるものが無意味となる。
その夜明けに人間は真のエコロジーの扉を見つけるのかもしれないな」
ヒミは腕を組み自分なりの思索の上に考えた。
「最近見た映画では、人間が容器の中で飼育されて仮想世界を現実として生きている未来が描かれていたんだ。あれは哀しい」
「ボクもその映画を見た。あれは嫌だ。そんなクソとは此処の世界では絶対に許さないし戦う」
「口が悪くなってる」
「そう? ボクの描く未来では、ゲームを一日中する感覚のプラットフォームだから。
個々の意思で行き来出来るし、好きなら居ついてもいいよって感じのやつなんで」
「安心した」
「うん。生身の肉体での生活こそが素晴らしいと考える人もいれば、そんな社会では生き辛くて死ぬしかないのなら『ノベンバー・ソウル・ランド』で暮らせばいいみたいなさ。
現実世界では肉体があるゆえに争うことが此の地では排除されるのさ。
まあ、完全とは言えなくても、肉体を持ち存在しうる関係性のすべては低位の感情取引になるってこと。肉体軽視でなくて、有機生命体の弱肉強食的世界がなくなり人間の情緒もより文化的な愛へと促されると思うんだ。
誰かが捕食され、自分は生き延びるというような世界を払拭しうる絶対的計算により、純粋無垢な弱弱しい魂の居場所が『ノベンバー・ソウル・ランド』には在るから安心してね」
「拒絶反応を示す人達も多そうじゃんか。目先の不安に怯えて、その先のもっと大きな致命的困難を見逃すみたいな」
「そういう人が自然界では淘汰されてしまうからこそ、本当は手を差し伸べているのだけれど」
「でも、そういう人たちって、一番KZを吊るし上げようとすんのよ」
「国の直接な強制だけでなく、民意の雰囲気か生み出す化け物には敵わないかな。
あの頃を思い出しちやうよ」
「ウチ、今、急に誕生会の後の狂騒の匂いがしたよ。
何だろうか、コレ」
「ふたりの記憶が共鳴したんだ。今、ボクもあの時のマスコミや近所の大人たちの顔に襲われていたから」
「スゴイ、この世界」
「記憶のコードは最強なんだよ。でもこの匂いは一旦しまっておこうか。
悲しくなってきた」
「でも、そこまで考えているKZが『ノベンバー・ソウル・ランド』にはいるから、安心だ」
「それだと・・・・良かったんだけど」
「え、終わったことを悔やんでいるその感じ何よ? 」
― ウゥーウ~~ ―
カフェテラスの前でパトカーに囲まれ、武装警備隊に銃口を向けられながら叫ぶ者が突如現れた。
― バン、バン、バン ―
一体のモブが威嚇射撃に怯むこともなく、KZとヒミが座るテーブルへと歩いて来ていた。