第20話
文字数 1,738文字
妃美香はゲームチェアに飛び込みパソコンを起動して『ノベンバー・ソウル・ランド』にログインした。
「なんか、サーバー重いけど大丈夫か?
あ、繋がった。いかん、ウチの感情の方も重くてバグってしまいそう」
彼女は照会ロビーから一旦戻り、アバターのカスタマイズを始めた。
「どんなに急いでいても、女性にとって身だしなみは必須事項。アバターだとしてもね。
推しからの御招待ならばなおのこと。危ない、やらかす所だったわ」
妃美香は顎にかけて細く流れる顔の印象と低俗でおせっかいな大人に対する反骨行動などからクールなイメージを与えたが、彼女のアバターは本来の嗜好を誠実に具現化した姿になっていた。少し丸顔でロリポップな娘の名前はHimi.G.L.となっている。
「いつ見ても、
嗚呼ァ、カワイイ。ゴシック・ロリータ最強やね。
お決まりで、回転させちゃうぞ、ムぅ」
黒を基調にして白いレースがあしらわれたパニエ、短めのスカートがひらりとめくれがちに舞う様子にいつものように身もだえた。
「うぉおおおうっ、うん?
待てよ、ご招待なんだから、もう少しフォーマルを感じさせるような気品を漂わせたいな。そうだ、ゴシック・ロリータでいくのは当然として、ワインレッド基調のワンピース・ドレスはどうかしら。フリルは大きめにして。
あ、神!
そうなると、ヘアスタイルもアレンジが必要だ」
妃美香はゲーム・エリアで獲得したポイントを全部使ってしまっても、グレードアップさせる気であった。
「ポイント足はりるか。まあいいさ。足りなければ・・・・
こういう時の課金ですッ」
ニヤリと笑いながらおめかしを続ける。
「そうだ、ベール付きのお帽子も飾らせていただきましょう・・・・
うっ、お、お、お、尊死! 」
幸福の沼にまったり嵌まっていたが、小腹が空き何気に時間を確認して正気に戻った。
「ヤバッ、0時過ぎちゃうじゃん。熱くなり過ぎた。まあでも、相手はどうせAI制御だから時間は関係ないかな。遠隔ってことはないだろうし。
いかん、自らファンタジーを剥ぎ取ってしまってはダメだ」
カスタマイズを終えるとロビーに行き、招待コードを入力した。
「いけね、VRゴーグル・ヘッドセットフル装備で行かなきゃ。
さて、行先はタウン・エリアね」
装着してブレイン・インプラント機能をONにする。
切り替える瞬間に妃美香の存在は消えてヒミとしてオープンワールドの世界人として生きるのだ。
「あー、何回経験しても、この転生感覚は気持ちよすぎる。
感じるわー」
ヒミはエリア分岐の入管ステーションから先が不慣れ過ぎてウロウロしていると、ステーション・ロータリーにVIP専用のヘリコプターが爆音と共に着陸してきた。朦朧とする中、黒のスーツを着た執事が現れた。
「ヒミ様ですね。お待ちしておりました。ミッドタウンにあるセントラルポイントまでお連れ致します。ご搭乗くださいませ」
ヘリコプターのステップを登る際も優しく手を携え補助してくれた。ヒミはキョロキョロと不安になって尋ねる。
「えーと、ウチはどうなっちゃうんでしょうか。KZ様とは会えないんですかね」
男は静かな表情のまま答えた。
「お嬢様は安心して、ごゆっくり空の旅を楽しみください。様々なゲーム世界も上空より安全にご覧いただけます。
『ノベンバー・ソウル・ランド』の全景こそ最上級のグレードの証としてのプレゼントになるでしょう」
「お嬢様なんてガラにもないんで。それに、下手に使いこなせるスキル以上の秘密を手にした危うさは、この世界のゲーム・エリアで何回も痛い目に合ってるから逆に怖いのですが」
執事の表情が柔らかく崩れて。
「今後、ゲーム・エリアでお楽しみいただく際の助けにもなりますよ。この程度の秘密をそんなに怖がる必要ありませんよ」
「え? でも、この世界にも普通に強盗とか居るじゃないですか? 」
「あっ」
男はオートマタ特有のタイミングの表情の緩和ではなく、自然な安心させる緩さで見つめていた。
「まあ・・・・ヒミさまのスキルからすると、確かに・・・・荷が重いですね」
「ねえ、その間と問い掛け・・・・
ツボるんで止めてもらっていいですか。まあいいっすけど」
「どうぞリラックスしてくださいませ」
少し緊張が解けた彼女は、軽く息を吐いて柔和な表情で下界を眺め始めた。
「なんか、サーバー重いけど大丈夫か?
あ、繋がった。いかん、ウチの感情の方も重くてバグってしまいそう」
彼女は照会ロビーから一旦戻り、アバターのカスタマイズを始めた。
「どんなに急いでいても、女性にとって身だしなみは必須事項。アバターだとしてもね。
推しからの御招待ならばなおのこと。危ない、やらかす所だったわ」
妃美香は顎にかけて細く流れる顔の印象と低俗でおせっかいな大人に対する反骨行動などからクールなイメージを与えたが、彼女のアバターは本来の嗜好を誠実に具現化した姿になっていた。少し丸顔でロリポップな娘の名前はHimi.G.L.となっている。
「いつ見ても、
嗚呼ァ、カワイイ。ゴシック・ロリータ最強やね。
お決まりで、回転させちゃうぞ、ムぅ」
黒を基調にして白いレースがあしらわれたパニエ、短めのスカートがひらりとめくれがちに舞う様子にいつものように身もだえた。
「うぉおおおうっ、うん?
待てよ、ご招待なんだから、もう少しフォーマルを感じさせるような気品を漂わせたいな。そうだ、ゴシック・ロリータでいくのは当然として、ワインレッド基調のワンピース・ドレスはどうかしら。フリルは大きめにして。
あ、神!
そうなると、ヘアスタイルもアレンジが必要だ」
妃美香はゲーム・エリアで獲得したポイントを全部使ってしまっても、グレードアップさせる気であった。
「ポイント足はりるか。まあいいさ。足りなければ・・・・
こういう時の課金ですッ」
ニヤリと笑いながらおめかしを続ける。
「そうだ、ベール付きのお帽子も飾らせていただきましょう・・・・
うっ、お、お、お、尊死! 」
幸福の沼にまったり嵌まっていたが、小腹が空き何気に時間を確認して正気に戻った。
「ヤバッ、0時過ぎちゃうじゃん。熱くなり過ぎた。まあでも、相手はどうせAI制御だから時間は関係ないかな。遠隔ってことはないだろうし。
いかん、自らファンタジーを剥ぎ取ってしまってはダメだ」
カスタマイズを終えるとロビーに行き、招待コードを入力した。
「いけね、VRゴーグル・ヘッドセットフル装備で行かなきゃ。
さて、行先はタウン・エリアね」
装着してブレイン・インプラント機能をONにする。
切り替える瞬間に妃美香の存在は消えてヒミとしてオープンワールドの世界人として生きるのだ。
「あー、何回経験しても、この転生感覚は気持ちよすぎる。
感じるわー」
ヒミはエリア分岐の入管ステーションから先が不慣れ過ぎてウロウロしていると、ステーション・ロータリーにVIP専用のヘリコプターが爆音と共に着陸してきた。朦朧とする中、黒のスーツを着た執事が現れた。
「ヒミ様ですね。お待ちしておりました。ミッドタウンにあるセントラルポイントまでお連れ致します。ご搭乗くださいませ」
ヘリコプターのステップを登る際も優しく手を携え補助してくれた。ヒミはキョロキョロと不安になって尋ねる。
「えーと、ウチはどうなっちゃうんでしょうか。KZ様とは会えないんですかね」
男は静かな表情のまま答えた。
「お嬢様は安心して、ごゆっくり空の旅を楽しみください。様々なゲーム世界も上空より安全にご覧いただけます。
『ノベンバー・ソウル・ランド』の全景こそ最上級のグレードの証としてのプレゼントになるでしょう」
「お嬢様なんてガラにもないんで。それに、下手に使いこなせるスキル以上の秘密を手にした危うさは、この世界のゲーム・エリアで何回も痛い目に合ってるから逆に怖いのですが」
執事の表情が柔らかく崩れて。
「今後、ゲーム・エリアでお楽しみいただく際の助けにもなりますよ。この程度の秘密をそんなに怖がる必要ありませんよ」
「え? でも、この世界にも普通に強盗とか居るじゃないですか? 」
「あっ」
男はオートマタ特有のタイミングの表情の緩和ではなく、自然な安心させる緩さで見つめていた。
「まあ・・・・ヒミさまのスキルからすると、確かに・・・・荷が重いですね」
「ねえ、その間と問い掛け・・・・
ツボるんで止めてもらっていいですか。まあいいっすけど」
「どうぞリラックスしてくださいませ」
少し緊張が解けた彼女は、軽く息を吐いて柔和な表情で下界を眺め始めた。