第59話
文字数 1,632文字
街を飲み込んだ虹色の竜巻の内部では五原色の光が緩やかに漂っていた。
メアはガシッとKZに抱きついて尋ねる。
「ねえねえねえ、ここではワチキの語尾も割れんでズゴシ聞きやすいでしょううゥアアア」
「まあ、そうだね。ハウリングも抑えられているから。
語尾は癖が強いけど・・・・。
それよりも、今、メアの中身の人は父さんじゃないとすれば、君は誰? 」
「ごちゃごちゃ何だアアアア。ワチキはシュットだあってエエエ」
「シュット君とボクは現実世界での面識はあるの?
本名は言わなくてもいいよ」
「ぶわはははは。気遣いできるボクちゃんが誇らしいなあぁ。
あ、いけね。ワチキはKZの中身はママからボクちゃんと呼ばれているなんて知りませんよっううう」
「知ってるじゃないか。ただならぬ繋がりがあることだけは察せられたよ。
それよりも・・・・」
KZは身体をモゾモゾとくねらせるのであった。
「君に抱きつかれてから、ずっと、痒いのだけれども。
ダニ? 」
「コラクソガキンチョ失礼者野郎がアアア。ちょいとスキャンしているだけじゃあああ」
「無駄だからもう放して。KZのアバターは既存のプログラムでもないし、『ノベンバー・ソウル・ランド』のデータサーバーへ入り込もうとか考えても無駄だよ」
「ウヲ?
鋭いな。でも残念ながら本気でハッキングする気もないっさァ。今は無粋なことを言わないで、プログラムの交感で感じ合おうって。もっと抱いておくれってなあアアア」
メアは離れようともがくKZを更にがっちり抱きしめると首筋に鼻を押し付け嗅いだ。
「ママの手癖がプンプンに匂うプログラムコードだこと」
「嗅がないで」
「ワレには分からないかな。恵まれし者の不幸てっかあああ」
逃れる事をあきらめたKZはざわつく感情の要因に触れた。
「もういいや。二人にとってのお母さんって本当? 」
「お、聞きたくて、うずうずしてたんかあああ。
お待たせしとんな、ヒヒヒ。
まあ安心しておくれ。そういう気を使いすぎる自分に落ち込むが、意地悪しないように答えてやるわぁ、ガヒヒヒ。
あの人はな・・・・ワチキを生んではいないよおおお。
物理的な地平においては、兄弟や姉弟とかではないぜ。でも、ワチキはママによってやっとこの世で産声を上げたんよ。だからさ。『ママああアアア―』っていう絶叫は正解デッス。
どうもありがとう」
するとメアは何の未練もない如くKZから離れた。
「え? 」
あっけない感じにびっくりしながらも、KZの視線はメアの胸元に注意が向いた。彼女は胸元に指を入れながら初心な少年を意地悪にからかう。
「イヤらしいな。フフッ、スケベは隠さないでよろしい」
メアは悪乗りして、挑発するように身体のラインを更に見せつけていく。
「そういうのは止めて」
初心な態度はメアの性癖を刺し、満足した顔で中指と人差し指に挟んだカードを差し出した。
「『きもちラボ』ではアポカリプスカードと言う。俗称はアポカなので以後、よろしくなあああ」
KZはカードを受け取ると裏表を丁寧に見る。
「トレーディングカードだね」
「名刺代わりにシュットのSSR(スーパーレア)アポカをプレゼント配布しちゃうんよ」
「シュット君が作っているの」
「ワチキの相棒のAIが生成している。『ナギ(NAGI)』っていう名前だから覚えておいてなあああ」
「ありがとう。このカードはどうやって遊ぶのかな」
「遊ぶ? アハハハ、まあそうか。娯楽ゲームというより、人生をより賢く、豊かに遊ぶツールと言えるんよ。この『きもちラボ』のアポカカードには、脳インプラントによる意識補正や才能覚醒を働きかけるスキルが保管されておるんよ。
ワレのオープンワールドでの互換性はまだ弱いけど、こうしてふたりは大仲良しになったからいずれ連携できるんさあああ」
「乗っ取る気? 」
「ガヒヒヒ。その気があれば、レインボーゴーストとか言われてウイルス扱いされる前にこの世界を食いちぎってたわ、バーカバーカ。
ふん、ゆっくり説明するからちゃんとこのカードを見れってんだあアアア」
メアはガシッとKZに抱きついて尋ねる。
「ねえねえねえ、ここではワチキの語尾も割れんでズゴシ聞きやすいでしょううゥアアア」
「まあ、そうだね。ハウリングも抑えられているから。
語尾は癖が強いけど・・・・。
それよりも、今、メアの中身の人は父さんじゃないとすれば、君は誰? 」
「ごちゃごちゃ何だアアアア。ワチキはシュットだあってエエエ」
「シュット君とボクは現実世界での面識はあるの?
本名は言わなくてもいいよ」
「ぶわはははは。気遣いできるボクちゃんが誇らしいなあぁ。
あ、いけね。ワチキはKZの中身はママからボクちゃんと呼ばれているなんて知りませんよっううう」
「知ってるじゃないか。ただならぬ繋がりがあることだけは察せられたよ。
それよりも・・・・」
KZは身体をモゾモゾとくねらせるのであった。
「君に抱きつかれてから、ずっと、痒いのだけれども。
ダニ? 」
「コラクソガキンチョ失礼者野郎がアアア。ちょいとスキャンしているだけじゃあああ」
「無駄だからもう放して。KZのアバターは既存のプログラムでもないし、『ノベンバー・ソウル・ランド』のデータサーバーへ入り込もうとか考えても無駄だよ」
「ウヲ?
鋭いな。でも残念ながら本気でハッキングする気もないっさァ。今は無粋なことを言わないで、プログラムの交感で感じ合おうって。もっと抱いておくれってなあアアア」
メアは離れようともがくKZを更にがっちり抱きしめると首筋に鼻を押し付け嗅いだ。
「ママの手癖がプンプンに匂うプログラムコードだこと」
「嗅がないで」
「ワレには分からないかな。恵まれし者の不幸てっかあああ」
逃れる事をあきらめたKZはざわつく感情の要因に触れた。
「もういいや。二人にとってのお母さんって本当? 」
「お、聞きたくて、うずうずしてたんかあああ。
お待たせしとんな、ヒヒヒ。
まあ安心しておくれ。そういう気を使いすぎる自分に落ち込むが、意地悪しないように答えてやるわぁ、ガヒヒヒ。
あの人はな・・・・ワチキを生んではいないよおおお。
物理的な地平においては、兄弟や姉弟とかではないぜ。でも、ワチキはママによってやっとこの世で産声を上げたんよ。だからさ。『ママああアアア―』っていう絶叫は正解デッス。
どうもありがとう」
するとメアは何の未練もない如くKZから離れた。
「え? 」
あっけない感じにびっくりしながらも、KZの視線はメアの胸元に注意が向いた。彼女は胸元に指を入れながら初心な少年を意地悪にからかう。
「イヤらしいな。フフッ、スケベは隠さないでよろしい」
メアは悪乗りして、挑発するように身体のラインを更に見せつけていく。
「そういうのは止めて」
初心な態度はメアの性癖を刺し、満足した顔で中指と人差し指に挟んだカードを差し出した。
「『きもちラボ』ではアポカリプスカードと言う。俗称はアポカなので以後、よろしくなあああ」
KZはカードを受け取ると裏表を丁寧に見る。
「トレーディングカードだね」
「名刺代わりにシュットのSSR(スーパーレア)アポカをプレゼント配布しちゃうんよ」
「シュット君が作っているの」
「ワチキの相棒のAIが生成している。『ナギ(NAGI)』っていう名前だから覚えておいてなあああ」
「ありがとう。このカードはどうやって遊ぶのかな」
「遊ぶ? アハハハ、まあそうか。娯楽ゲームというより、人生をより賢く、豊かに遊ぶツールと言えるんよ。この『きもちラボ』のアポカカードには、脳インプラントによる意識補正や才能覚醒を働きかけるスキルが保管されておるんよ。
ワレのオープンワールドでの互換性はまだ弱いけど、こうしてふたりは大仲良しになったからいずれ連携できるんさあああ」
「乗っ取る気? 」
「ガヒヒヒ。その気があれば、レインボーゴーストとか言われてウイルス扱いされる前にこの世界を食いちぎってたわ、バーカバーカ。
ふん、ゆっくり説明するからちゃんとこのカードを見れってんだあアアア」