第66話
文字数 1,590文字
「ここはどこ? 」
ヒミはKZの世界に戻って来たが、すぐには居場所を把握できなかった。
「うーん」
後ろを振り向くと、ソフトドリンクからアルコールまで揃うドリンクサーバーが幾つも並んでいた。
「KZとポーションを味わう為に入ったカフェの中か」
彼女は今まさに注がれたように濡れ光る注ぎ口に目を止める。少し上を見るとキャンペーン専用ポーションと紙が貼りつけられていた。
「ウチはここから入って来たんか。うわっ、サイバーワールド映画に出てくる工作員やん。
いかんいかん、早くKZを探しに行かなきゃ」
ヒミはカフェを飛び出したが直ぐに足が止まった。。
「モブキャラたちがいない。ゴーストタウンになっている」
彼女はひょいッと跳ねて、180度回転しながら着地するまでに全方位を確認した。
「現実のアイドル人生でもこんなキレある回転してぇな。そんなことはどうでもいいか。
あれ、竜巻の爆風で破壊された痕跡がない」
何事もなかったように街は元に戻っていた。
「マジ、仮想世界は神だな。うん?
でも・・・・塔は失われたままじゃね。多分あっちか。
KZもモブみたいに消滅してないよな。あのキスで救われたのをホテルの部屋でみんな見てたじゃん。ウチの幻覚じゃないさ、大丈夫よ」
ヒミは不安に襲われながらも心を強く持ち塔を目指した。
「そうだこのハイブランドのショップを背にしてみれば向こうだな。あれ? 」
ヒミはショウウインドに映るカスタムしたメイド服に違和感を覚えた。
手を頭へと持っていく。
「わあああカワイイ!
紫色の生地にネイビーの刺繍、マリコさんと同じになっている。いつの間に。気に入っているのなんで分かってくれたんだろう。あの人何者?
怖そうなのに優しいよ」
彼女はマリコのプレゼントに力をもらって元気に走りだした。
ショッピング街を抜けると戦場の如くに瓦礫が散乱していたが、その中心に大きな塔であろう残骸があり誰かが座っているのが見えた。KZとメアであった。ヒミは走る速度を緩めて静かに近づいていく。
数メートルの距離になったところでKZが振り向き軽く手を挙げた。ヒミは今になってホテルでのキスが恥ずかしくなり、思わず視線を逸らした。
KZは察したのか先に声を掛けてくれた。
「ヒミ、ありがとう」
クール担当のアイドルはぎこちないリズムで答える。
「ご、めん、ホてルの、あれ、わりイね、へへへ」
「アハハハ、強烈だった。吹き飛んでしまったよ。おかげで、全てが再構成されて成虫の蝶に成ったよ。この仮想世界に魂をちゃんと宿らせる秘密を交わせられてね」
ヒミはKZにしな垂れ寄りかかって動かないメアに、僅かながら嫉妬心を感じていた。
「ねえ、親子でラブついてんの? 」
「停止中」
「ごめん。死んでないよね」
「物理的な父さんの頭はバフったけど、多分息はしていると思う」
「記憶喪失ってこと? 」
「魂の転生の際に人間としての記憶や情緒エネルギーが受け入れきれずに蒸発して、微細な電子となってネット界隈を漂流してしまってね。ボクのせいだ」
ヒミは気の利いた返しが出来ずメアの胸のふくらみに視線を逃がした。最初に会った時よりも服の面積は少なくなっていた。
「あれ、こんなにタトゥーあった? 」
露出している肌に龍の顔の一部や鱗が花びらのように舞う絵柄が見えた。
「これは、『ノベンバー・ソウル・ランド』の守り神である龍が千切れてしまたメアを繋ぎとめてくれているの」
妃美香はキスがすべての禍の元凶のように思えたのか動揺を露にした。
「ウチのせいね」
「違うよ。妃美香が矛盾が居座っていびつな誤魔化しのボクの世界をぶち抜いてくれた。最高の芸術家だよ。ボクは君に人間が存在すべき意味を突き付けてもらったのさ。
神様が人類はいらないなんて言えない、そんな答えをね」
「ウチは神様に罰を与えられる低俗な生き物、獣・・・・。
いやらしい・・・・」
KZはメアが寄りかかる反対側へと促して座わらせた。
ヒミはKZの世界に戻って来たが、すぐには居場所を把握できなかった。
「うーん」
後ろを振り向くと、ソフトドリンクからアルコールまで揃うドリンクサーバーが幾つも並んでいた。
「KZとポーションを味わう為に入ったカフェの中か」
彼女は今まさに注がれたように濡れ光る注ぎ口に目を止める。少し上を見るとキャンペーン専用ポーションと紙が貼りつけられていた。
「ウチはここから入って来たんか。うわっ、サイバーワールド映画に出てくる工作員やん。
いかんいかん、早くKZを探しに行かなきゃ」
ヒミはカフェを飛び出したが直ぐに足が止まった。。
「モブキャラたちがいない。ゴーストタウンになっている」
彼女はひょいッと跳ねて、180度回転しながら着地するまでに全方位を確認した。
「現実のアイドル人生でもこんなキレある回転してぇな。そんなことはどうでもいいか。
あれ、竜巻の爆風で破壊された痕跡がない」
何事もなかったように街は元に戻っていた。
「マジ、仮想世界は神だな。うん?
でも・・・・塔は失われたままじゃね。多分あっちか。
KZもモブみたいに消滅してないよな。あのキスで救われたのをホテルの部屋でみんな見てたじゃん。ウチの幻覚じゃないさ、大丈夫よ」
ヒミは不安に襲われながらも心を強く持ち塔を目指した。
「そうだこのハイブランドのショップを背にしてみれば向こうだな。あれ? 」
ヒミはショウウインドに映るカスタムしたメイド服に違和感を覚えた。
手を頭へと持っていく。
「わあああカワイイ!
紫色の生地にネイビーの刺繍、マリコさんと同じになっている。いつの間に。気に入っているのなんで分かってくれたんだろう。あの人何者?
怖そうなのに優しいよ」
彼女はマリコのプレゼントに力をもらって元気に走りだした。
ショッピング街を抜けると戦場の如くに瓦礫が散乱していたが、その中心に大きな塔であろう残骸があり誰かが座っているのが見えた。KZとメアであった。ヒミは走る速度を緩めて静かに近づいていく。
数メートルの距離になったところでKZが振り向き軽く手を挙げた。ヒミは今になってホテルでのキスが恥ずかしくなり、思わず視線を逸らした。
KZは察したのか先に声を掛けてくれた。
「ヒミ、ありがとう」
クール担当のアイドルはぎこちないリズムで答える。
「ご、めん、ホてルの、あれ、わりイね、へへへ」
「アハハハ、強烈だった。吹き飛んでしまったよ。おかげで、全てが再構成されて成虫の蝶に成ったよ。この仮想世界に魂をちゃんと宿らせる秘密を交わせられてね」
ヒミはKZにしな垂れ寄りかかって動かないメアに、僅かながら嫉妬心を感じていた。
「ねえ、親子でラブついてんの? 」
「停止中」
「ごめん。死んでないよね」
「物理的な父さんの頭はバフったけど、多分息はしていると思う」
「記憶喪失ってこと? 」
「魂の転生の際に人間としての記憶や情緒エネルギーが受け入れきれずに蒸発して、微細な電子となってネット界隈を漂流してしまってね。ボクのせいだ」
ヒミは気の利いた返しが出来ずメアの胸のふくらみに視線を逃がした。最初に会った時よりも服の面積は少なくなっていた。
「あれ、こんなにタトゥーあった? 」
露出している肌に龍の顔の一部や鱗が花びらのように舞う絵柄が見えた。
「これは、『ノベンバー・ソウル・ランド』の守り神である龍が千切れてしまたメアを繋ぎとめてくれているの」
妃美香はキスがすべての禍の元凶のように思えたのか動揺を露にした。
「ウチのせいね」
「違うよ。妃美香が矛盾が居座っていびつな誤魔化しのボクの世界をぶち抜いてくれた。最高の芸術家だよ。ボクは君に人間が存在すべき意味を突き付けてもらったのさ。
神様が人類はいらないなんて言えない、そんな答えをね」
「ウチは神様に罰を与えられる低俗な生き物、獣・・・・。
いやらしい・・・・」
KZはメアが寄りかかる反対側へと促して座わらせた。