第32話
文字数 1,949文字
無言になった零香の気持ちを察したのか源蔵は神妙になって。
「マジな話なら・・・・何でもするぞ」
「信用は出来ないけど仕方ないわね」
「どうするよ」
元夫婦ではあっても子供にとっては両親なのであった。
「こっちのサーバーとシンクロした状態であなたは『NSL』に入って、KZであるあの子と接触してもらいたい。あなたのアバター・プログラムにKZの生体コードと共感するキーコードを組み込むから、フウの現状が言葉で説明するよりもダイレクトに理解出来る。
先ずアバターの解析IDを教えて」
源蔵は何か含みのある微笑を浮かべて歯切れ悪い返事をした。
「あ、あー。わ、分かった。
そうだ、あと忘れちゃいかん。
バックアップに菓乃ちゃんのパンケーキのデータを早速使いたいんだが。その方があいつも何か感じるんじゃないか」
零香は菓乃の芸術的コードが、シーウエイブ社のサーバーを通過することに抵抗感を感じたものの、万全を期すためには仕方がないと考えた。
「そうね。でもこっちにも共有させてもらうわよ。インプットが終わったらホテルに彼女を連れて行って、フウに援護射撃をしたいから。
サンドウィッチ作戦ってか、アハハ」
「お前に任すよ」
「おい、笑わなくてもいいから、毒づけよ。もう、いいや」
「今のお前に俺はまだ慣れてないからすまん」
苦笑いをしながら凹んだ姿を見て、過去に悪行を浴びせ尽くされた男を僅かだけ許した。変わらず大嫌いだが。
「もういいや。菓乃ちゃーん!
戻って来ておくれ。頼みがあるんよ。
誕生日会のパンケーキを早速、ここで再現して欲しいの」
小走りで戻ってくる少女の顔はどこか戸惑いが見えた。
「あの時って」
「紗耶さんとあなたが作ったパンケーキ。細かく説明する時間はないけど、あなたのパンケーキに救われる人がたくさんいるのさ」
「パティシエの方々をですか」
「そう」
「分かりました」
「あと、フウ、体調が悪いのよ。
一口でも食べれたなら元気に成ってくれると思うんだけどな」
「え? 私のパンケーキなんか役に立ちますか」
零香は黙って頷いた。
「パティシエの方々が自由になるきっかけになれば嬉しい。
それに、フウ君の力に成るって言われたら断る理由などありません」
「ありがとう。頼むわね。じゃあ、前払いを受け取って。
チュッ」
少し零香らしい態度に戻って、頬に軽くキスをしていた。
「うふふ」
菓乃は少し顔を赤らめながら答える。
「あ、ありがとうございます。否、任せてください」
零香は少女の覚悟を受け留めると、源蔵に念を押した。
「こんな純粋な思いを踏みにじるんじゃないよ。
裏切ったらどうなるか」
「分かったよ」
「あんたのアバターとコネクトしたいから、早く見せて」
「え? やっぱり見る?
うん? マジ?」
源蔵は急に口ごもった。
「何それ。おっさんに純情な感情見せられて、こっちはどうすりゃいいのさ。
早く出しな、どれよ」
おじさんは、何処かやましさを隠しきれない様子でちょこっとモニター画面に指差した。
「メア・・・・ってやつ」
「ぐぅわッ、勘弁してよ。元、旦那だとしてもハズイぞ」
「うっ、うるせいや」
菓乃は興味津々でモニターを覗いた。
「あら、可愛いですね。ちょっとエチエチですけど」
胸元が開き気味のピンクのワンピース衣装で、少し日焼けしたギャル系のアイドル少女がニコニコしながら、くるくるとあざとく踊っていた。
「キショっ」
「なんだよ、カワイイだろ、メアちゃんだ・・・・ぞ」
零香のあからさまな軽蔑に心を折られ、過去の己の無礼の因果応報を思い知ったかつての暴君はしょげて答えた。
「なんだよ、冗談だよ。じゃあもう少しパンクなハードでエチカワ方向で攻めればいいかな。お前の今のファッションの近い系譜のあたりでどうかな。見るか零香? 」
「そういう問題じゃないんだよ」
「何が? ほら見てみろ」
「誰が見るか」
菓乃は元夫婦のやり取りを何となく聞きながら、二人の間に入ってディスプレイを覗く。
「この感じもいいですけど、もうちょっとコアなカワイイにしてみてもいいかもしれないです」
「あ、そう?
それは神過ぎる提案だ。やっぱり、現役としか俺の感性は合わんのだよ。正直な感想をくれるかな」
「喜んで」
零香はすべてをディレートしてやりたい気持ちを抑える自信がなかった。
「破壊・・・・殺・・・・それでも足りん」
「怒るなよ。菓乃ちゃんも楽しそうだ」
「・・・・」
元妻の態度など気にする心の負荷はすっかり消え去り、調子づいた中年は早口にまくし立てた。
「そうとなれば、俺はこっち側から邪魔させないようにネットワークをガードする。あいつはこの状況も直ぐに察知してアタックしてくるだろう。地域メンテナンスの案内をしてあるけど」
「海上のこと? 」
「否、うん、まあそうだが。別人だ」
「誰? 」
「ある意味、お前のもう一人の息子さ」
「え? 」
「マジな話なら・・・・何でもするぞ」
「信用は出来ないけど仕方ないわね」
「どうするよ」
元夫婦ではあっても子供にとっては両親なのであった。
「こっちのサーバーとシンクロした状態であなたは『NSL』に入って、KZであるあの子と接触してもらいたい。あなたのアバター・プログラムにKZの生体コードと共感するキーコードを組み込むから、フウの現状が言葉で説明するよりもダイレクトに理解出来る。
先ずアバターの解析IDを教えて」
源蔵は何か含みのある微笑を浮かべて歯切れ悪い返事をした。
「あ、あー。わ、分かった。
そうだ、あと忘れちゃいかん。
バックアップに菓乃ちゃんのパンケーキのデータを早速使いたいんだが。その方があいつも何か感じるんじゃないか」
零香は菓乃の芸術的コードが、シーウエイブ社のサーバーを通過することに抵抗感を感じたものの、万全を期すためには仕方がないと考えた。
「そうね。でもこっちにも共有させてもらうわよ。インプットが終わったらホテルに彼女を連れて行って、フウに援護射撃をしたいから。
サンドウィッチ作戦ってか、アハハ」
「お前に任すよ」
「おい、笑わなくてもいいから、毒づけよ。もう、いいや」
「今のお前に俺はまだ慣れてないからすまん」
苦笑いをしながら凹んだ姿を見て、過去に悪行を浴びせ尽くされた男を僅かだけ許した。変わらず大嫌いだが。
「もういいや。菓乃ちゃーん!
戻って来ておくれ。頼みがあるんよ。
誕生日会のパンケーキを早速、ここで再現して欲しいの」
小走りで戻ってくる少女の顔はどこか戸惑いが見えた。
「あの時って」
「紗耶さんとあなたが作ったパンケーキ。細かく説明する時間はないけど、あなたのパンケーキに救われる人がたくさんいるのさ」
「パティシエの方々をですか」
「そう」
「分かりました」
「あと、フウ、体調が悪いのよ。
一口でも食べれたなら元気に成ってくれると思うんだけどな」
「え? 私のパンケーキなんか役に立ちますか」
零香は黙って頷いた。
「パティシエの方々が自由になるきっかけになれば嬉しい。
それに、フウ君の力に成るって言われたら断る理由などありません」
「ありがとう。頼むわね。じゃあ、前払いを受け取って。
チュッ」
少し零香らしい態度に戻って、頬に軽くキスをしていた。
「うふふ」
菓乃は少し顔を赤らめながら答える。
「あ、ありがとうございます。否、任せてください」
零香は少女の覚悟を受け留めると、源蔵に念を押した。
「こんな純粋な思いを踏みにじるんじゃないよ。
裏切ったらどうなるか」
「分かったよ」
「あんたのアバターとコネクトしたいから、早く見せて」
「え? やっぱり見る?
うん? マジ?」
源蔵は急に口ごもった。
「何それ。おっさんに純情な感情見せられて、こっちはどうすりゃいいのさ。
早く出しな、どれよ」
おじさんは、何処かやましさを隠しきれない様子でちょこっとモニター画面に指差した。
「メア・・・・ってやつ」
「ぐぅわッ、勘弁してよ。元、旦那だとしてもハズイぞ」
「うっ、うるせいや」
菓乃は興味津々でモニターを覗いた。
「あら、可愛いですね。ちょっとエチエチですけど」
胸元が開き気味のピンクのワンピース衣装で、少し日焼けしたギャル系のアイドル少女がニコニコしながら、くるくるとあざとく踊っていた。
「キショっ」
「なんだよ、カワイイだろ、メアちゃんだ・・・・ぞ」
零香のあからさまな軽蔑に心を折られ、過去の己の無礼の因果応報を思い知ったかつての暴君はしょげて答えた。
「なんだよ、冗談だよ。じゃあもう少しパンクなハードでエチカワ方向で攻めればいいかな。お前の今のファッションの近い系譜のあたりでどうかな。見るか零香? 」
「そういう問題じゃないんだよ」
「何が? ほら見てみろ」
「誰が見るか」
菓乃は元夫婦のやり取りを何となく聞きながら、二人の間に入ってディスプレイを覗く。
「この感じもいいですけど、もうちょっとコアなカワイイにしてみてもいいかもしれないです」
「あ、そう?
それは神過ぎる提案だ。やっぱり、現役としか俺の感性は合わんのだよ。正直な感想をくれるかな」
「喜んで」
零香はすべてをディレートしてやりたい気持ちを抑える自信がなかった。
「破壊・・・・殺・・・・それでも足りん」
「怒るなよ。菓乃ちゃんも楽しそうだ」
「・・・・」
元妻の態度など気にする心の負荷はすっかり消え去り、調子づいた中年は早口にまくし立てた。
「そうとなれば、俺はこっち側から邪魔させないようにネットワークをガードする。あいつはこの状況も直ぐに察知してアタックしてくるだろう。地域メンテナンスの案内をしてあるけど」
「海上のこと? 」
「否、うん、まあそうだが。別人だ」
「誰? 」
「ある意味、お前のもう一人の息子さ」
「え? 」