第34話
文字数 1,427文字
「此処は・・・・」
妃美香は指示されたホテルに着いた筈であったが、ハイブランドの商業施設やカフェしか見当たらなかった。JKはいないし、ステージ衣装の派手なフリフリを、アウターの下からとはいえ、チラチラさせている人種などは皆無だ。
「マジかよ。嫌な予感が満載やん」
妃美香は行ったり来たりを数回繰り返しやっと、少し奥のエレベーター乗り場の上に案内プレートを見つけた。
「危なっ、見過ごすとこじゃん。
スカイ・ヴィヴィアンヌ・ホテル見つけたぞ、ふう」
到着を知らせる光が点灯した。彼女はエレベーターへとダッシュして、ドアが開いた瞬間に飛び乗った。素早く【閉】を押し、ようやく箱の中での孤独に心休めることが出来た。
「こんなにもひとりが落ち着くとは。さて、57階よね。
え?
なんで?」
30階までの表示ボタンしかなかった。
「どういうことよ。えーと、30階にフロントがあるのか。やっぱり誰にも会わずには行けないのかよ。
難関にも程が有るってんだ、クソっ」
ドアが開いた。正面には全面ガラスの向こうに都心を見渡せるカフェ&バーが在り、成功者の大人たちが楽しい時間を過ごしている様子が目に入った。
「場違いだ。死ぬ。本当にクソ祭りだ。息あるうちにフロントへたどり着けるんかな。
ハアハアハア」
なんとなく一度降りたエレベーター側を振り向くと、乗降口の横に広い通路が奥へと伸びていて、人の流れも目に入った。
「あああああ、光が射してきたぞ・・・・ファッキンなめんなよ」
彼女は自ら発破を掛けて進撃していく。
ふと、左手を見ると少し低いエリアが、レストランになっていて、遅い時間ながらも静かに食事をとるカップルが目に入った。
「地獄だな・・・・なんか。
この世界線の人間の日常はウチとは違いすぎる。
あああああ、フロントはどこだよ。
遠いよ。もう死なせてくれ。おや、あったかも・・・・ヒミちゃん天才。
マズイ、フロントの人と目が合っちまったよ」
「お疲れ様です。こちらへどうぞ」
妃美香は絶望した。
「ゲロゲリ。これじゃあ、無視して行けないじゃん」
悲しみとも喜びとも判別のつかない虚無の中、最後の力を振り絞るように部屋番号を伝えた。
「5700号室・・・・」
女性従業員は穏やかな笑顔で迎えているように見えたが、緊張感がさっとフロント内に張り詰める。
「お客様のお名前をお聞かせ願えますか」
「ヒミです」
女性スタッフは直ぐに5700号室に連絡を取った。確認が取れたのか一瞬にして柔和な表情を取り戻して、VIP専用エレベーターまで一緒について来た。奥から一人の男性が加わり、エレベーターのドアが閉まるまで深々とお辞儀をしていたのであった。
「後から現れたイケオジ、名札が支配人ってなってた・・・・怖っ」
そして、不意にリーダーの顔が浮かんできて説教されるのであった。
「ほら、騙されたのよ。だから、言ったでしょ」
面識もない人間を信じてよかったのか、エレベーターの階数の表示を見ながら今更ながら不安が増す。その上、声しか聴いたことのない者の言いなりになって、幼馴染を誘拐事件の被害者にしてしまったのかもしれなかった。
「ウチも誘拐犯の一味じゃん」
様々な妄想と超スピードで上昇するエレベーターの合わせ技で妃美香はえずいてしまう。
「おぅえっ」
― ゴクリ ―
「危なっ。出るかと思った」
彼女は階数表示の数字が40階を示したのを見て、別の階を押せば今なら戻れると考えたのも束の間、ボタンのない階数に突入し、程なくスピードが緩まると最上階に到着した。
妃美香は指示されたホテルに着いた筈であったが、ハイブランドの商業施設やカフェしか見当たらなかった。JKはいないし、ステージ衣装の派手なフリフリを、アウターの下からとはいえ、チラチラさせている人種などは皆無だ。
「マジかよ。嫌な予感が満載やん」
妃美香は行ったり来たりを数回繰り返しやっと、少し奥のエレベーター乗り場の上に案内プレートを見つけた。
「危なっ、見過ごすとこじゃん。
スカイ・ヴィヴィアンヌ・ホテル見つけたぞ、ふう」
到着を知らせる光が点灯した。彼女はエレベーターへとダッシュして、ドアが開いた瞬間に飛び乗った。素早く【閉】を押し、ようやく箱の中での孤独に心休めることが出来た。
「こんなにもひとりが落ち着くとは。さて、57階よね。
え?
なんで?」
30階までの表示ボタンしかなかった。
「どういうことよ。えーと、30階にフロントがあるのか。やっぱり誰にも会わずには行けないのかよ。
難関にも程が有るってんだ、クソっ」
ドアが開いた。正面には全面ガラスの向こうに都心を見渡せるカフェ&バーが在り、成功者の大人たちが楽しい時間を過ごしている様子が目に入った。
「場違いだ。死ぬ。本当にクソ祭りだ。息あるうちにフロントへたどり着けるんかな。
ハアハアハア」
なんとなく一度降りたエレベーター側を振り向くと、乗降口の横に広い通路が奥へと伸びていて、人の流れも目に入った。
「あああああ、光が射してきたぞ・・・・ファッキンなめんなよ」
彼女は自ら発破を掛けて進撃していく。
ふと、左手を見ると少し低いエリアが、レストランになっていて、遅い時間ながらも静かに食事をとるカップルが目に入った。
「地獄だな・・・・なんか。
この世界線の人間の日常はウチとは違いすぎる。
あああああ、フロントはどこだよ。
遠いよ。もう死なせてくれ。おや、あったかも・・・・ヒミちゃん天才。
マズイ、フロントの人と目が合っちまったよ」
「お疲れ様です。こちらへどうぞ」
妃美香は絶望した。
「ゲロゲリ。これじゃあ、無視して行けないじゃん」
悲しみとも喜びとも判別のつかない虚無の中、最後の力を振り絞るように部屋番号を伝えた。
「5700号室・・・・」
女性従業員は穏やかな笑顔で迎えているように見えたが、緊張感がさっとフロント内に張り詰める。
「お客様のお名前をお聞かせ願えますか」
「ヒミです」
女性スタッフは直ぐに5700号室に連絡を取った。確認が取れたのか一瞬にして柔和な表情を取り戻して、VIP専用エレベーターまで一緒について来た。奥から一人の男性が加わり、エレベーターのドアが閉まるまで深々とお辞儀をしていたのであった。
「後から現れたイケオジ、名札が支配人ってなってた・・・・怖っ」
そして、不意にリーダーの顔が浮かんできて説教されるのであった。
「ほら、騙されたのよ。だから、言ったでしょ」
面識もない人間を信じてよかったのか、エレベーターの階数の表示を見ながら今更ながら不安が増す。その上、声しか聴いたことのない者の言いなりになって、幼馴染を誘拐事件の被害者にしてしまったのかもしれなかった。
「ウチも誘拐犯の一味じゃん」
様々な妄想と超スピードで上昇するエレベーターの合わせ技で妃美香はえずいてしまう。
「おぅえっ」
― ゴクリ ―
「危なっ。出るかと思った」
彼女は階数表示の数字が40階を示したのを見て、別の階を押せば今なら戻れると考えたのも束の間、ボタンのない階数に突入し、程なくスピードが緩まると最上階に到着した。