第49話
文字数 854文字
零香と菓乃がシーウエイブの地下施設から地上へ出ると、強固な装甲が為された黒塗りの外車が静かに近づき止まる。零香は運転席側のドアが少し開いたところで、ハンドサインで降りなくてよいと示す。自ら後部席のドアを開けて菓乃を先に乗せた。
「お待たせ。
【スカイ・ビビアンヌ・ホテル】に戻って」
「かしこまりました」
ちょっと悪戯っぽく運転手に声を掛けた。
「よく撒かれなかったわね。結構、あのワゴンの運転手も優秀だったでしょう」
「馬鹿ですねあの運転手は。
というか日本人の感覚は今でも昭和の考えのままなのでしょうか」
「そう? 面白そうね、もっと聞かせて。運転の邪魔になって1秒でも遅れるなら嫌だけどね」
「ご心配なく。
私を撒くためにスピード違反したり、急な右折やら方向を変えていましたが、いつの時代の映画やドラマの世界なんでしょうか。
こっちは、標準で衛星を使うし、ネットに繋がった防犯カメラも必要ならハッキングします。そのデータはAIが即解析して居場所を出してくれるんですよ。この国、遅れてます」
「口悪いわね、ヒヒヒ。
でも、あの施設内は外部との電波は遮断されていたわよ」
「意外ですね。少し前まではハッキングして侵入した際に、施設内の監視カメラからあらゆるPC機器内臓のカメラまで繋げられたんですよね。
チグハグな連中ですね」
「そうね。
『きもちラボ』のプログラムを少しだけ覗いたんだけど、私にも意味不明なアルゴリズムが組み込まれていて、ちょっとビックリしたわ」
「そうなんですね。奥様のそんな顔を施設から生中継で会長にお見せ出来なかったなんて残念です」
「うるせえわよ、フフフ。この子を無事に連れ出すことの方が最重要事項なんだから。
菓乃さん、怖かった? もう大丈夫よ」
パティシエ少女の返事はない。
「ねえなんで無視するのさ」
菓乃はジッと手元を見つめていた。
零香の問い掛けから暫く経ってから静かに答えた。
「生地が大切なんです。微妙な振動だって影響するから。
フウ君の命に関わると聞かされたし、絶対に最高のパンケーキを作るんです」
「あんた変態ね」
「お待たせ。
【スカイ・ビビアンヌ・ホテル】に戻って」
「かしこまりました」
ちょっと悪戯っぽく運転手に声を掛けた。
「よく撒かれなかったわね。結構、あのワゴンの運転手も優秀だったでしょう」
「馬鹿ですねあの運転手は。
というか日本人の感覚は今でも昭和の考えのままなのでしょうか」
「そう? 面白そうね、もっと聞かせて。運転の邪魔になって1秒でも遅れるなら嫌だけどね」
「ご心配なく。
私を撒くためにスピード違反したり、急な右折やら方向を変えていましたが、いつの時代の映画やドラマの世界なんでしょうか。
こっちは、標準で衛星を使うし、ネットに繋がった防犯カメラも必要ならハッキングします。そのデータはAIが即解析して居場所を出してくれるんですよ。この国、遅れてます」
「口悪いわね、ヒヒヒ。
でも、あの施設内は外部との電波は遮断されていたわよ」
「意外ですね。少し前まではハッキングして侵入した際に、施設内の監視カメラからあらゆるPC機器内臓のカメラまで繋げられたんですよね。
チグハグな連中ですね」
「そうね。
『きもちラボ』のプログラムを少しだけ覗いたんだけど、私にも意味不明なアルゴリズムが組み込まれていて、ちょっとビックリしたわ」
「そうなんですね。奥様のそんな顔を施設から生中継で会長にお見せ出来なかったなんて残念です」
「うるせえわよ、フフフ。この子を無事に連れ出すことの方が最重要事項なんだから。
菓乃さん、怖かった? もう大丈夫よ」
パティシエ少女の返事はない。
「ねえなんで無視するのさ」
菓乃はジッと手元を見つめていた。
零香の問い掛けから暫く経ってから静かに答えた。
「生地が大切なんです。微妙な振動だって影響するから。
フウ君の命に関わると聞かされたし、絶対に最高のパンケーキを作るんです」
「あんた変態ね」