第62話

文字数 1,954文字

それはフィボナッチの螺旋形状をしている『ノベンバー・ソウル・ランド』全景を背にしたKZが、ハットのトップに手を添えた図柄で『ブルースに立つ』とタイトルがあった。
「勝手に作ったの? 」
「パンクでもいいかと思ったけど、魂が漂うんだからブルースだろううう」
「盛り過ぎでしょ」
「ソレな、ギャははは。しかもSSRのレアなアポカだぜ。ほら、点滅しているそのスキル名をタッチしな。さっきワレをスキャンした要素から【正直者バカの極み】を固有スキルとして格納したからよおおお」
KZはメアを少し睨んだ。
「弱い箇所に効能のある意思コントロールスキルを追加しておいた。お人好し過ぎるワレには役立つぜ。見ろ、早速効果出ているんじゃないか。そんな感じで少しは怒りの感情を表現してみればいいんだよおおお」
KZから心許したフウとしての溜息が漏れた。
「フッ、ボクには生み出せない愛おしい儚い世界だな。生きる人間の生きざまが芸術か・・・・」
「理解が早いな。意識にノミやヘラで造形物を生み出す非霊感的芸術っていうのかな。そっちの、形がないけど魂に憑依して宇宙にも奏でられるブルースハーブのような霊感的芸術とは違うが。どちらも愛おしい。失われていく肉体の世界と伝え継がれて残っていく音の世界がママンの子供によって混ざるんだぜえええ」
「エロティックだね」
「え、エロろろろろ?
そうなのか? ダメだだめだ未成年は捕まるルルル」
「意外と初心なんだね」
「お前こそ、むっつりHコドモめえええ」
「フフフ。やっぱり、ファスビンターさんは来るべき明日を嗅ぎつけたのかなあ」
「悪魔が来る・・・・そんな明日をみたいかあああ? 」
KZはゆっくり、力を重心に置くように首を横に振った。
「そうとなりゃ、手下の尻尾を早めに切ってしまわなきゃ」
「父さんだね・・・・」
「ハットのエッジ裏にワチキとワレのカードを重ねて貼っときな。2枚でスキルたちが連携するから効果も強くなるからなあああ」
「面白そうだ」
「よし。後は、任せたアアアアアア」
「え?」
「ワレのオッサンが目覚める頃だからな。戻ってもそのカードを使ってサポートするから安心しな。嘘を暴く証拠映像も送ってやるから、待ってなアアア」
メアはイヤリングに触れようとしたが指先は空を切った。
「あれ、ない。竜巻を起こした時に、耳を触られた時だな。
ごめん、ワレの世界からシーウエイブのサーバーへ指示出来ないわ。イヤリングはこっち側からシーウエイブ社の機密サーバーとつなぐオプションになっとるううう」
「そもそも、君はどういう接続をしてメアに入り込んだのさ。父さんの脳インプラントと『ノベンバー・ソウル・ランド』側のサーバー間でハッキングしている感じでもない。
一緒の場所にいて、割り込んでるの? 」
「半分はビンゴ。間にいるんじゃなくて後ろにいるんよ。ケケケケ。チクリとハイエナオジサンに針を刺して脳に土足でおじゃまんごな。これ以上、物理的に悪戯したら壊れちゃうからそろそろお邪魔ンゴするからワレに任せたあああ。
おっと、忘れるところだった。源蔵のアポカカードも渡しておくぜよ。彼の嘘にスキルが反応して光る。ノーマルなRカードだけどデバフ満載だから逆にレアだぜエエエ」
メアはピアスを失った耳を触りながらニヤリと笑っている。
「・・・・まあいいか。逆に・・・・ウヒヒヒヒ。
うまくやれよ、ママンンを泣かすな」
「正直言うと、人間として明日は見たくないんだよね・・・・。元気なうちに命を使い切って、人類の最新の最後になるくらいはしたい。地球上で物理的な生命からサイバーワールドに魂を転生させて、神の領域へと人類の進化を掬い上げる。その時、人間様の領域を貸してやる位の野卑な詩人になって神と対等になる・・・・なあんて、そんな夢を見ている・・・・。
人類をきれいごとで自滅させない為には、神聖とも言える罰当たりの芸術家が宿す魂の戯れがまだ必要なんだ。今ある要素だけではモブの値は出せても新しい生命体を包む歌は流れやしないのね。
『ノベンバー・ソウル・ランド』のモブたちは他のオープンワールドと比べたら次元? 否、存在している意味が違うけど。未だ不完全な程に整いすぎている。ワクワクする未来サイバーのイメージとは程遠いしょぼくれた現状を誤魔化せなくなった」
「長っ。呆れたけどボクちゃんの純粋過ぎる思いは受け取ったぞ。うひゃひゃひゃあああ。
とにかく、ワレのメタバースに足りない物理との遊びが『きもちラボ』のアポカリプスカードにはあるぜ。酸化コードを浄化へとコントロールする虹色のスキルを潤わせてなあああ」
「もしそうならば、二つの世界をあるべき関係に配置させたい」
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ。ワレのオッサンが目を覚ますぞ。
さて、オサラバするぜ。バイバイバイなあああ・・・・」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
  • 第1話
  • 第一章    DAY:LOVE MINUS     # 推し(1)

  • 第2話
  • # 推し(2)

  • 第3話
  • # 純喫茶 第九 (1)

  • 第4話
  • # 純喫茶 第九 (2)

  • 第5話
  • # パティシエ失踪事件(1)

  • 第6話
  • # パティシエ失踪事件(2)

  • 第7話
  • 第二章    DAY:LOVE ZERO  #KZ-1

  • 第8話
  • # マイ・エンジェル

  • 第9話
  • # 出会い (1)

  • 第10話
  • # 出会い (2)

  • 第11話
  • # パンケーキ(1)

  • 第12話
  • # パンケーキ(2)

  • 第13話
  • # KZ―2(1)

  • 第14話
  • # KZ―2(2)

  • 第15話
  • 第3章    DAY:LOVE PLUS  # プレゼント

  • 第16話
  • # キャンペーン

  • 第17話
  • # ライブが終わって(day.1)

  • 第18話
  • # 再出発の記憶

  • 第19話
  • # オープンワールド

  • 第20話
  • # 招待(1)

  • 第21話
  • # 招待(2)

  • 第22話
  • 第4章    DAY LOVE CROSS # バイバイ麻衣

  • 第23話
  • # 鈴野菓乃(1)

  • 第24話
  • # 鈴野菓乃(2)

  • 第25話
  • # 鈴野菓乃(3)

  • 第26話
  • 第5章    DAY:LOVE LIVE  # ライブが終わって(day.2)

  • 第27話
  •  # チェキ会(1)

  • 第28話
  • # チェキ会(2)

  • 第29話
  • # 拉致ラレ

  • 第30話
  • # 恵仁海総合病院別館(1)

  • 第31話
  • # 恵仁海総合病院別館(2)

  • 第32話
  • # 恵仁海総合病院別館(3)

  • 第33話
  • # 恵仁海総合病院別館(4)

  • 第34話
  • 第6章  DAY:LOVE COME # スカイ・ヴィヴィアンヌ・ホテル(1)

  • 第35話
  • # スカイ・ヴィヴィアンヌ・ホテル(2)

  • 第36話
  • # ベッドの上の幼なじみ(1)

  • 第37話
  • # ベッドの上の幼なじみ(2)

  • 第38話
  • # 薔薇に蛇(1)

  • 第39話
  • # 薔薇に蛇(2)

  • 第40話
  • # 新しい終わり(1)

  • 第41話
  • # 新しい終わり(2)

  • 第42話
  • # 新しい終わり(3)

  • 第43話
  • # メアの尊厳(1)

  • 第44話
  • # メアの尊厳(2)

  • 第45話
  • # メアの尊厳(3)

  • 第46話
  • # メアの尊厳(4)

  • 第47話
  • # メアの尊厳(5)

  • 第48話
  • # メアの尊厳(6)

  • 第49話
  • 第7章  DAY LOVE CROSS # スイートルームでパンケーキを(1)

  • 第50話
  • # スイートルームでパンケーキを(2)

  • 第51話
  • # スイートルームでパンケーキを(3)

  • 第52話
  • # スイートルームでパンケーキを(4)

  • 第53話
  • # スイートルームでパンケーキを(5)

  • 第54話
  • # 喋れないきれいな子(1)

  • 第55話
  • # 喋れないきれいな子(2)

  • 第56話
  • # 喋れないきれいな子(3)

  • 第57話
  • # 喋れないきれいな子(4)

  • 第58話
  • # 喋れないきれいな子(5)

  • 第59話
  • 第8章  DAY: LOVE PLUS  # アポカリプス・カード(1)

  • 第60話
  • # アポカリプス・カード(2)

  • 第61話
  • # world apart(1)

  • 第62話
  • # world apart(2)

  • 第63話
  • #  裏切り者

  • 第64話
  • 第9章 DAY:LOVE STARTS  # 救出 (1)

  • 第65話
  • # 救出 (2)

  • 第66話
  • 第10章 DAY: LOVE  # 死ハ死ヌ(1)

  • 第67話
  • # 死ハ死ヌ(2)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み