第65話
文字数 1,846文字
CODE化された脳波が『ノベンバー・ソウル・ランド』側の魂を受け入れて、異常値を示す。零香のキーボードを打つ速さに勢いが増す。数字の激流から直感に従って拾い上げたCODEをプログラムとして整え、KZの魂へと必死に戻していった。
「卵子に挑む精子」
マリコは淡々とした口調で言う。
零香は口元を左側にゆがめて言い返した。
「エロいでしょ」
「奥様は。変態です」
「ふっ。褒めてくれるね。
あ、ダメェ、ソースコードが流れに引き戻される」
「難しいことです」
マリコはヒントとなる違和感に気付いたようだ。
「フウ様はキスを。された。ことが一度ある。そうおっしゃっていました」
零香はつい喚いた。
「あんた、フウとそんな会話していたんかよ」
「それが何か? 」
「くううっ。で、何を言いたいのさ」
「あのお嬢さんも、された、と。どちらも受けですね」
その瞬間、スッとスリムな影が二人の横を通り過ぎた。
菓乃がキスを終えても期待していた変化が何も起こらないことで、自分の意味に戸惑い始めていたその時、不意に顎をクイっと持ち上げれた。
あの時の気配で、懐かしい匂いを纏った影は唇を重ねた。
「ヒミちゃん・・・・」
電子機器の光が顔を映す。
「あっ」
舌を突っ込まれ軽く絡まれて。そっと引き抜かれた。
「あの時のベロの感覚。パンケーキの生地、ホイップクリーム、
そして、この人間の体液の匂い・・・・」
妃美香は腰を落とした菓乃をゆっくりサポーとするようにカーペットに優しく座らせ、きれいな導線で風の唇へと自分の唇を重ねていく。
菓乃にしたように舌をグイっと突っ込んだ。あの時の不器用さを重ね合わせて。
マリコはニヤリと笑う。
「すべての緩いかみ合わせが吸い付いた。
濡れ合ってます。ふふふ」
そう言って『ノベンバー・ソウル・ランド』の現状を確かめる為にディスプレイに向き直った。メアとKZの光の環へと視点を移動させていく。龍が巻き付いていた塔を光の輪が吹き飛ばしたように爆心地が現れた。零香が何かに気付いた。
「光の環の中に龍がいるわ。頭が二つ!
それぞれが、二人を咥えている。今にも同時に食べてしまいそうよ」
次の瞬間一つの頭が口を開き一気に閉じて血しぶきの数字が溢れあがった。
「あれはメア? フウ? 」
血の数字が片方の首を包むと龍が嘶(いなな)いて、首が吹き飛んだ。
「メアが食われたようです。大丈夫、大丈夫に決まっています」
常に冷静なマリコの声も僅かに感情的であった。
KZがもう一方の龍の舌に大切にまかれながら地面に降り立っているのが見えた。
大地に落ちた龍とメアの破片の山の上に置いたRカードから、光が芽吹いてメアが再び姿を現した。零香はメアをスキャンしながら分析する。
「物理的反応の人格と切り離された魂の枠だけ。中身は空です」
「フウ様が手を振っています」
「よかった、よかった。でも、戻ってきたらややこしい事を説明させなきゃ。
まあ、その前に・・・・」
零香は影のように現れた妃美香に詰め寄って尋ねた。
「あなたなだったの? 」
問いかけにチラッとだけ目を合わせたが、妃美香はすぐにそらして頭をポリポリと掻いて。
「戻ります」
そう一言残して、先ほどと同じ場所で、同じ態勢でヘッドセットを付けるとKZの元へ戻って行ってしまうのであった。
「オイ。まあ、いいわ。全て終わったらガン詰めしてやるわ。
うふふ」
零香は静かに続ける。
「ありがとう。至急、修正プログラムを掛けるから、安定化したらふたりで戻っておいで」
様子を見ていた菓乃は気持ちを抑えきれずにマリコに質問した。
「妃美香ちゃんは、どれくらいで戻って来るのですか?」
「一時間ぐらいです」
菓乃は零香に向き直って懇願した。
「全てが終わったその時に美味しさを味わってもらいたいから、もう一度パンケーキを焼かせてください。いいですか? 」
零香は笑顔で答えた。
「当然よ」
零香は菓乃の心情を察して言った。
「なんか、いろいろとあなたも複雑よね」
「最初は、ぐちゃぐちゃでしたけど。一番、私が得したような」
「うん? どういうことかな」
菓乃は恥ずかしさを誤魔化すように話し始めた。
「いえ、否、何でもないです。二人の為に最高のパンケーキを作るためのシュミレーションでぼうっとしていまして。改めて材料を用意してもらっていいですか」
零香は笑いながら必要な材料が掛かれたメモを受け取った。
「アハハハ、二人前用にレシピが微妙に練り直されたのね。変態だ。フフフ」
そう言ってフロントに電話を掛けようとした時マリコが冷静に伝えた。
「1人前です」
零香は受話器を落とした。
「卵子に挑む精子」
マリコは淡々とした口調で言う。
零香は口元を左側にゆがめて言い返した。
「エロいでしょ」
「奥様は。変態です」
「ふっ。褒めてくれるね。
あ、ダメェ、ソースコードが流れに引き戻される」
「難しいことです」
マリコはヒントとなる違和感に気付いたようだ。
「フウ様はキスを。された。ことが一度ある。そうおっしゃっていました」
零香はつい喚いた。
「あんた、フウとそんな会話していたんかよ」
「それが何か? 」
「くううっ。で、何を言いたいのさ」
「あのお嬢さんも、された、と。どちらも受けですね」
その瞬間、スッとスリムな影が二人の横を通り過ぎた。
菓乃がキスを終えても期待していた変化が何も起こらないことで、自分の意味に戸惑い始めていたその時、不意に顎をクイっと持ち上げれた。
あの時の気配で、懐かしい匂いを纏った影は唇を重ねた。
「ヒミちゃん・・・・」
電子機器の光が顔を映す。
「あっ」
舌を突っ込まれ軽く絡まれて。そっと引き抜かれた。
「あの時のベロの感覚。パンケーキの生地、ホイップクリーム、
そして、この人間の体液の匂い・・・・」
妃美香は腰を落とした菓乃をゆっくりサポーとするようにカーペットに優しく座らせ、きれいな導線で風の唇へと自分の唇を重ねていく。
菓乃にしたように舌をグイっと突っ込んだ。あの時の不器用さを重ね合わせて。
マリコはニヤリと笑う。
「すべての緩いかみ合わせが吸い付いた。
濡れ合ってます。ふふふ」
そう言って『ノベンバー・ソウル・ランド』の現状を確かめる為にディスプレイに向き直った。メアとKZの光の環へと視点を移動させていく。龍が巻き付いていた塔を光の輪が吹き飛ばしたように爆心地が現れた。零香が何かに気付いた。
「光の環の中に龍がいるわ。頭が二つ!
それぞれが、二人を咥えている。今にも同時に食べてしまいそうよ」
次の瞬間一つの頭が口を開き一気に閉じて血しぶきの数字が溢れあがった。
「あれはメア? フウ? 」
血の数字が片方の首を包むと龍が嘶(いなな)いて、首が吹き飛んだ。
「メアが食われたようです。大丈夫、大丈夫に決まっています」
常に冷静なマリコの声も僅かに感情的であった。
KZがもう一方の龍の舌に大切にまかれながら地面に降り立っているのが見えた。
大地に落ちた龍とメアの破片の山の上に置いたRカードから、光が芽吹いてメアが再び姿を現した。零香はメアをスキャンしながら分析する。
「物理的反応の人格と切り離された魂の枠だけ。中身は空です」
「フウ様が手を振っています」
「よかった、よかった。でも、戻ってきたらややこしい事を説明させなきゃ。
まあ、その前に・・・・」
零香は影のように現れた妃美香に詰め寄って尋ねた。
「あなたなだったの? 」
問いかけにチラッとだけ目を合わせたが、妃美香はすぐにそらして頭をポリポリと掻いて。
「戻ります」
そう一言残して、先ほどと同じ場所で、同じ態勢でヘッドセットを付けるとKZの元へ戻って行ってしまうのであった。
「オイ。まあ、いいわ。全て終わったらガン詰めしてやるわ。
うふふ」
零香は静かに続ける。
「ありがとう。至急、修正プログラムを掛けるから、安定化したらふたりで戻っておいで」
様子を見ていた菓乃は気持ちを抑えきれずにマリコに質問した。
「妃美香ちゃんは、どれくらいで戻って来るのですか?」
「一時間ぐらいです」
菓乃は零香に向き直って懇願した。
「全てが終わったその時に美味しさを味わってもらいたいから、もう一度パンケーキを焼かせてください。いいですか? 」
零香は笑顔で答えた。
「当然よ」
零香は菓乃の心情を察して言った。
「なんか、いろいろとあなたも複雑よね」
「最初は、ぐちゃぐちゃでしたけど。一番、私が得したような」
「うん? どういうことかな」
菓乃は恥ずかしさを誤魔化すように話し始めた。
「いえ、否、何でもないです。二人の為に最高のパンケーキを作るためのシュミレーションでぼうっとしていまして。改めて材料を用意してもらっていいですか」
零香は笑いながら必要な材料が掛かれたメモを受け取った。
「アハハハ、二人前用にレシピが微妙に練り直されたのね。変態だ。フフフ」
そう言ってフロントに電話を掛けようとした時マリコが冷静に伝えた。
「1人前です」
零香は受話器を落とした。