第21話
文字数 1,699文字
「非公開マップが多いから、この景観が既にお宝情報じゃね」
そう思って眺めていると、ヒミのステータスランクでは入れない領域をも丁寧に旋回して見せてくれていることに気づいた。渦巻く虹色の光の花弁が中心から外へ、フィボナッチ数列の流線で放たれた、荘厳な美しさが存在している。
「仮想世界に思えない生々しい圧力が凄い。
硬くて冷たい甲殻に覆われた昆虫を不意にひっくり返したら、腹の筋の隙間から真っ赤に充血した肉が濡れてはみ出して匂う重さ?
・・・・よく分からないが、とにかく。
エロっ!
綺麗で怖いのは気持ちイイのよな」
フィボナッチ螺旋の中心に位置するセントラル・タウン界隈に目を移すと、現実の東京の延長でしかない情景がある。ハイブランドのショップやドーム球場や武道館もある。多くの人たちが街で暮らし、人生を謳歌している日常が紛れもなくこの世界にもあるように見えた。
「だけど、多くはオートマタによる偽物の世界なんだよな」
そんなことを考えていると聞き覚えのある声が語り掛けて来た。
「そんなことないよ。昔のオートマタのイメージとは違うんだ。AIコミュニティー内においてはしっかり感情的な信号を共有してコミュニケーションしているし、遠隔的に参加している人間枠のアバター達とも、クロスオーバーのコミュニティーが成立されている。AIと有機生命体が意思疎通出来ないなんてナンセンス。
そもそも、人間どうしのコミュニケーションというのも、勝手に人間たちは話して理解しているつもりなだけで、無意識に仮定の落とし所にしがみついているだけかもしれないよ」
「ううう、分からんっ」
「ハハハ、ようこそボクの世界へ」
突如現れたKZに彼女は慌てて挨拶をした。
「うおっ、初めまして。直接会えることなんかないと思っていたので嬉しすぎる。
あ、あれ、うわっ。此処は何処?
ヘリコプター消えました?」
「答えのない話をしてしまったせいで、ヒミさんの脳波がバグってヘリコプターを蒸発させてしまったしたみたいですね」
「え、ウチが馬鹿だからってこと? 」
「否、未熟な馬鹿野郎はボクです」
「そんなそんな、天才ですよ」
「ありがとう。深夜なのに、さっそく来てくれて嬉しい」
ヒミはようやく落ち着いてKZの姿をじっくりと見る。彼はトレードマークでもあるタータンチェック柄のスーツで出迎えてくれていた。しかも、彼女に合わせてくれたのかワインレッドの生地で仕立てられている。
「似合っています。カッコイイです」
「ヒミさんの可愛いドレスに合えばいいなと思って」
「ウチもあなたを意識したんのですね。ゴスロリ以外は嫌なので、貫きましたけど」
「最高に可愛いと思います」
ヒミは照れたのか、少し話を無理やりに戻していた。
「うっ、
で、でもこんなに早く反応があるなんて想定外過ぎでヤバイ」
「特別です」
「そうなんですか」
「コメントに
― 暗闇の中での悪戯の思い出とともに ―
ってあったのが光り輝いていたから」
「パンケーキとはあまり関係がない言葉を添えてしまったけど、個人的には重要なおまじないの呪文みたいなモノだから・・・・。
印象や評価を悪くするかもしれないと一瞬は考えたけど、これを添えなければ意味がないと感じて」
「そのおかげで、直ぐにポーションを食べてしまえたのだから、正解だよね」
「食べた? 」
不思議そうに思わず口にした彼女に対して、どこか恥ずかしそうな笑みを浮かべながらKZは答えた。
「僕も、暗闇での悪戯っていうワードが深い記憶からバーンって甦って・・・・」
「あれ、変なの」
ヒミは何気ない会話に違和感をもった。
「ごめんなさい。失礼かもしれないけれど、これはAIとの会話ではないのかな。遠隔でのボイチャです? 」
「遠からず近からずって感じ、ふふっ」
「え?
あと、あなたにも甦って来た記憶って私の記憶ってこと?
共有させるウイルスみたいな何かを知らないうちに感染させられたとかですか」
KZも何か答えを探すような表情で動かない。
「うん、何もしていない・・・・不思議なんです。
ポーションを取り込んで得た恍惚は、あなたと僕は同じ何かを既に共有していたとしか思えない・・・・」
「KZの中の人・・・・
あなたは誰? 」
そう思って眺めていると、ヒミのステータスランクでは入れない領域をも丁寧に旋回して見せてくれていることに気づいた。渦巻く虹色の光の花弁が中心から外へ、フィボナッチ数列の流線で放たれた、荘厳な美しさが存在している。
「仮想世界に思えない生々しい圧力が凄い。
硬くて冷たい甲殻に覆われた昆虫を不意にひっくり返したら、腹の筋の隙間から真っ赤に充血した肉が濡れてはみ出して匂う重さ?
・・・・よく分からないが、とにかく。
エロっ!
綺麗で怖いのは気持ちイイのよな」
フィボナッチ螺旋の中心に位置するセントラル・タウン界隈に目を移すと、現実の東京の延長でしかない情景がある。ハイブランドのショップやドーム球場や武道館もある。多くの人たちが街で暮らし、人生を謳歌している日常が紛れもなくこの世界にもあるように見えた。
「だけど、多くはオートマタによる偽物の世界なんだよな」
そんなことを考えていると聞き覚えのある声が語り掛けて来た。
「そんなことないよ。昔のオートマタのイメージとは違うんだ。AIコミュニティー内においてはしっかり感情的な信号を共有してコミュニケーションしているし、遠隔的に参加している人間枠のアバター達とも、クロスオーバーのコミュニティーが成立されている。AIと有機生命体が意思疎通出来ないなんてナンセンス。
そもそも、人間どうしのコミュニケーションというのも、勝手に人間たちは話して理解しているつもりなだけで、無意識に仮定の落とし所にしがみついているだけかもしれないよ」
「ううう、分からんっ」
「ハハハ、ようこそボクの世界へ」
突如現れたKZに彼女は慌てて挨拶をした。
「うおっ、初めまして。直接会えることなんかないと思っていたので嬉しすぎる。
あ、あれ、うわっ。此処は何処?
ヘリコプター消えました?」
「答えのない話をしてしまったせいで、ヒミさんの脳波がバグってヘリコプターを蒸発させてしまったしたみたいですね」
「え、ウチが馬鹿だからってこと? 」
「否、未熟な馬鹿野郎はボクです」
「そんなそんな、天才ですよ」
「ありがとう。深夜なのに、さっそく来てくれて嬉しい」
ヒミはようやく落ち着いてKZの姿をじっくりと見る。彼はトレードマークでもあるタータンチェック柄のスーツで出迎えてくれていた。しかも、彼女に合わせてくれたのかワインレッドの生地で仕立てられている。
「似合っています。カッコイイです」
「ヒミさんの可愛いドレスに合えばいいなと思って」
「ウチもあなたを意識したんのですね。ゴスロリ以外は嫌なので、貫きましたけど」
「最高に可愛いと思います」
ヒミは照れたのか、少し話を無理やりに戻していた。
「うっ、
で、でもこんなに早く反応があるなんて想定外過ぎでヤバイ」
「特別です」
「そうなんですか」
「コメントに
― 暗闇の中での悪戯の思い出とともに ―
ってあったのが光り輝いていたから」
「パンケーキとはあまり関係がない言葉を添えてしまったけど、個人的には重要なおまじないの呪文みたいなモノだから・・・・。
印象や評価を悪くするかもしれないと一瞬は考えたけど、これを添えなければ意味がないと感じて」
「そのおかげで、直ぐにポーションを食べてしまえたのだから、正解だよね」
「食べた? 」
不思議そうに思わず口にした彼女に対して、どこか恥ずかしそうな笑みを浮かべながらKZは答えた。
「僕も、暗闇での悪戯っていうワードが深い記憶からバーンって甦って・・・・」
「あれ、変なの」
ヒミは何気ない会話に違和感をもった。
「ごめんなさい。失礼かもしれないけれど、これはAIとの会話ではないのかな。遠隔でのボイチャです? 」
「遠からず近からずって感じ、ふふっ」
「え?
あと、あなたにも甦って来た記憶って私の記憶ってこと?
共有させるウイルスみたいな何かを知らないうちに感染させられたとかですか」
KZも何か答えを探すような表情で動かない。
「うん、何もしていない・・・・不思議なんです。
ポーションを取り込んで得た恍惚は、あなたと僕は同じ何かを既に共有していたとしか思えない・・・・」
「KZの中の人・・・・
あなたは誰? 」