第27話
文字数 1,915文字
「まだ、真っ暗で何も見えないけど」
「衣装の裏側に上手く収まりそうなところを探してるんだから、待ちなって」
「光が恋しい。
アッ、うっ、眩しい・・・・見えた」
「レンズを露骨に出したらバレちまうのよね」
妃美香は表情を変えずレンズの位置を調整した。
「1日経たずにタメ口? らしいね」
「ア? 何よ」
「否、なんでもない、ふふっ」
「推しです・・・・」
少し妙な間をKZは当たり障りのない感想で埋める。
「人がいっぱい並んでいる」
「・・・・そうよ。地下アイドルの中ではまあまあ人気あるんだから」
「アッ、見えなくなった」
「ゴメン、これならどうよ」
「良くはなったけど・・・・そうだ、この会場には固定カメラとか有るのかな」
「ステージ側から客席に向かってのカメラが真ん中に1台、あと客席側からステージに向いているカメラが3台かな」
他のメンバーもそれぞれ準備ができて、スタッフがハンドマイクで案内を始めている。
― チェキ券をご用意下さい。これから開始致します ―
「あ、始まっちゃう、大丈夫かな」
反応がない為、焦りながらも慎重にカモフラージュさせて呼び掛けた。
「おーい・・・・ゴホン・・・・ケイ・・・・ジィー・・・・ゴホンウウン・・・・(むにゃむにゃ)」
「お待たせ。後ろの髪飾りの十字架のピン凄くかっこいいよ。
そういうパンキッシュなヤツ大好き」
「え、なに、そこまで、映していないぞ。怖い」
隣のレーンのリンは挙動がおかしいヒミに気付いたようだ。
「ヒミちゃん、顔赤くして、熱っぽいの? 具合悪くない? 」
焦りながらも落ち着いた素振りで、ふてぶてしく笑ってごまかそうとした。イヤホンには笑いの混じったKZの声が響いた。
「その顔、覚えているよ。今から思えば、君も怖かったのに僕を守ってくれていたんだよね」
少し落ち着きを取り戻した妃美香は、KZがカメラの存在を聞いてきたことを思い出し、素早い反応で4か所を順に睨んでいった。
「はい正解。察しが早いよね、相変わらず。
ネットに繋がっていたから、勝手にお邪魔しちゃった」
「オイ! 」
会場内はざわついていたが、妃美香から半径数メートル程度にいた人は一斉に彼女の方を向いた。でも、すぐにそれぞれが元通りの動きに戻っていった。
「アハ、イメージと同じだから誰も気にしないんだね」
妃美香はむっとしながら、口元を手で隠しながらスマホのマイク部分に近づける。
「実際に会った時は覚悟しときな」
「ごめん、ふふっ」
「で、どうなん?
何か感想とかないのかな。成長したウチを見て」
「これがアイドルかって」
「何よ、似合わないとでも?
この衣装、君の世界でのHimi.G.L.とは少し方向性が違うけど、アイドルらしいパニエのスカートもカワイイでしょ」
「ひらひら感が強い振る舞いとミックスしてカワイイに成るんだね」
「何だ、その感想。
見て見て、レースにラメも織りこまれているんじゃ」
少し控え身だがスカートの裾を掴んでひらひらさせる。
「アバターのダークなパープルもいいけどこの陽気な紫も好きだよ。でも、短くない? まあ脚がきれいだから強いよ」
「もっと見せたろか」
「やめてっ」
「フッ、幼なじみとネットで再会したってことをリーダーに心配されて、正直なところ少し不安にも思えていたけど、この楽しい感じはムムムムッ」
「何だなんだ、ヘンテコな含み笑いは?
なんかいろいろ思い出してきた。こういう状況で君は心外なことを言い出すとか」
妃美香は笑いを抑えきれないままに言った。
「フフフひっ。その、『やめてっ』のリズムがこんな風に『ふにゃ』ってる感触。
唯一無二、ウチの幼なじみの証やん」
「なんか嫌だ・・・・」
「まあ、いいじゃない。これで、ディスり合いはおあいこってことで手打ち。
ウハハハ、楽しい」
「楽しくない・・・・くっ。
でも・・・・いいな。変わらんね、ヒミちゃんは」
「ヤバっ。ちょっと、ごめん。仕事に戻る」
ツーショットのチェキの鍵開けを任されたファンの女の子が緊張した表情でスタンバイしていた。
「OK。ボクも緊張してきたよ」
「恥ずかしいけど、好きなようにしていて。
多分、後で、声をかけると思うけど。ちょっと、君の意見を聞きたいこともあってさ。
フッ、お楽しみに」
「うん? 何だ、その意地悪な笑い。
まあいいや、しばらく勝手にしているから」
KZは早速、カメラ4台をうまく渡り歩き、他のメンバーも見たりして、初めての体験を楽しむのだった。
「ボクの世界でも取り入れよう。この感情をCODE化して魂をもっと幸せで満たせたら、スイーツとはまた違った供与体のシナプスになるかな。そうだ、昨日が初日だったらしいから、ライブ中の映像はハードディスクにまだあるかな。お、有った。
さて、刮目させて頂きます」
「衣装の裏側に上手く収まりそうなところを探してるんだから、待ちなって」
「光が恋しい。
アッ、うっ、眩しい・・・・見えた」
「レンズを露骨に出したらバレちまうのよね」
妃美香は表情を変えずレンズの位置を調整した。
「1日経たずにタメ口? らしいね」
「ア? 何よ」
「否、なんでもない、ふふっ」
「推しです・・・・」
少し妙な間をKZは当たり障りのない感想で埋める。
「人がいっぱい並んでいる」
「・・・・そうよ。地下アイドルの中ではまあまあ人気あるんだから」
「アッ、見えなくなった」
「ゴメン、これならどうよ」
「良くはなったけど・・・・そうだ、この会場には固定カメラとか有るのかな」
「ステージ側から客席に向かってのカメラが真ん中に1台、あと客席側からステージに向いているカメラが3台かな」
他のメンバーもそれぞれ準備ができて、スタッフがハンドマイクで案内を始めている。
― チェキ券をご用意下さい。これから開始致します ―
「あ、始まっちゃう、大丈夫かな」
反応がない為、焦りながらも慎重にカモフラージュさせて呼び掛けた。
「おーい・・・・ゴホン・・・・ケイ・・・・ジィー・・・・ゴホンウウン・・・・(むにゃむにゃ)」
「お待たせ。後ろの髪飾りの十字架のピン凄くかっこいいよ。
そういうパンキッシュなヤツ大好き」
「え、なに、そこまで、映していないぞ。怖い」
隣のレーンのリンは挙動がおかしいヒミに気付いたようだ。
「ヒミちゃん、顔赤くして、熱っぽいの? 具合悪くない? 」
焦りながらも落ち着いた素振りで、ふてぶてしく笑ってごまかそうとした。イヤホンには笑いの混じったKZの声が響いた。
「その顔、覚えているよ。今から思えば、君も怖かったのに僕を守ってくれていたんだよね」
少し落ち着きを取り戻した妃美香は、KZがカメラの存在を聞いてきたことを思い出し、素早い反応で4か所を順に睨んでいった。
「はい正解。察しが早いよね、相変わらず。
ネットに繋がっていたから、勝手にお邪魔しちゃった」
「オイ! 」
会場内はざわついていたが、妃美香から半径数メートル程度にいた人は一斉に彼女の方を向いた。でも、すぐにそれぞれが元通りの動きに戻っていった。
「アハ、イメージと同じだから誰も気にしないんだね」
妃美香はむっとしながら、口元を手で隠しながらスマホのマイク部分に近づける。
「実際に会った時は覚悟しときな」
「ごめん、ふふっ」
「で、どうなん?
何か感想とかないのかな。成長したウチを見て」
「これがアイドルかって」
「何よ、似合わないとでも?
この衣装、君の世界でのHimi.G.L.とは少し方向性が違うけど、アイドルらしいパニエのスカートもカワイイでしょ」
「ひらひら感が強い振る舞いとミックスしてカワイイに成るんだね」
「何だ、その感想。
見て見て、レースにラメも織りこまれているんじゃ」
少し控え身だがスカートの裾を掴んでひらひらさせる。
「アバターのダークなパープルもいいけどこの陽気な紫も好きだよ。でも、短くない? まあ脚がきれいだから強いよ」
「もっと見せたろか」
「やめてっ」
「フッ、幼なじみとネットで再会したってことをリーダーに心配されて、正直なところ少し不安にも思えていたけど、この楽しい感じはムムムムッ」
「何だなんだ、ヘンテコな含み笑いは?
なんかいろいろ思い出してきた。こういう状況で君は心外なことを言い出すとか」
妃美香は笑いを抑えきれないままに言った。
「フフフひっ。その、『やめてっ』のリズムがこんな風に『ふにゃ』ってる感触。
唯一無二、ウチの幼なじみの証やん」
「なんか嫌だ・・・・」
「まあ、いいじゃない。これで、ディスり合いはおあいこってことで手打ち。
ウハハハ、楽しい」
「楽しくない・・・・くっ。
でも・・・・いいな。変わらんね、ヒミちゃんは」
「ヤバっ。ちょっと、ごめん。仕事に戻る」
ツーショットのチェキの鍵開けを任されたファンの女の子が緊張した表情でスタンバイしていた。
「OK。ボクも緊張してきたよ」
「恥ずかしいけど、好きなようにしていて。
多分、後で、声をかけると思うけど。ちょっと、君の意見を聞きたいこともあってさ。
フッ、お楽しみに」
「うん? 何だ、その意地悪な笑い。
まあいいや、しばらく勝手にしているから」
KZは早速、カメラ4台をうまく渡り歩き、他のメンバーも見たりして、初めての体験を楽しむのだった。
「ボクの世界でも取り入れよう。この感情をCODE化して魂をもっと幸せで満たせたら、スイーツとはまた違った供与体のシナプスになるかな。そうだ、昨日が初日だったらしいから、ライブ中の映像はハードディスクにまだあるかな。お、有った。
さて、刮目させて頂きます」