第28話:バルセロナ2

文字数 1,317文字

 この広場はギリシャ劇場のように半円形の形だが実際に住民たちが集合する場所のようにしたかったようだ。もう1つの役割はホールの列柱下にある貯水槽へ雨水を送る事。あまりに精緻なので驚かされることばかりだった。また、ここからバルセロナの街が一望できる絶景スポットとなってるため広場の最先端へ行き写真を撮ると良い。そして、この広場で見逃せないのが、広場の周りを彩る超長いベンチ。

 トレンカデイスを用いた全長110メートルもある蛇行した形のこのベンチは、ガウディの裏方を務めて貢献した、ジョセップ・マリア・ジュジョールの作。広場を出たら横にある階段を降りると洗濯女の回廊または柱廊と呼ばれている場所で、傾斜地のある公園に道路を通すために建設された擁壁。その形状や回廊の色合いなどの独特な雰囲気は、まるで古代へタイムスリップした気になる。

 次に、なぜこの場所が「洗濯女の回廊」と呼ばれるのか? たくさん並んでいる柱の一番手前に1本柱が見え、ロングスカートをはいた人間の女性が左手を頭の方へあげて、なにやら籠の様なものを頭に乗せている。これはグエル公園内で唯一の人間の形をした像だがギリシャ彫刻の「奉納像」を表現した言われてる。ここに洗濯かごを頭に乗せた女性の像が1本あるので「洗濯女の回廊」と名づけられた。

 中央エントランスの両脇にあるこの可愛い2つの家がある。1つは管理事務所だったが現在はショップになっている。もう1つは守衛さんの家になっている。どちらもヘンゼルとグレーテルの物語の中に出てくる「お菓子の家」がモデルとなっていて形や装飾がとても可愛らしい。ここカタルーニャ州出身の、あの天才画家サルバドール・ダリは、「ほんとにケーキの様だ」と感心したと言われている。

 同じカタルーニャ州の偉大なる画家ジョアン・ミロも「粉砂糖をかけたお菓子の様だ」という言葉を残してる。もう1つの「守衛さんの家」の方は内部を見学できる。定員が30名で中ではガウディ作品関連についての説明ビデオが流れてるが英語版はあるが日本語版はない。たまに長蛇の列になるので、そんな時、外からの写真撮影だけでも充分だ。

 グエル公園は元々ブルジョワ階級の人々のために作られた庭園住宅。スポンサーのグエル伯爵が後援者となり1900から14年にかけガウディのデザインで製作。自然を愛するガウディらしく小高い丘の上に自然をそのまま残した姿で広場や邸宅、礼拝堂を設計。

 またグエル伯爵とガウディが最も愛した芸術はリヒャルト・ワーグナーの楽劇でガウディは同じ芸術センスを持つグエル伯爵の下で自然との調和を表現する総合芸術を作り上げようとした。当時ガウディは、現代のゲーテッドコミュニティーのように住宅地を外壁で囲みアクセスを管理できるような計画をたてた。

 ちなみにゲーテッドコミュニティーとはゲートを設けて周囲を塀で囲んで、住民以外の敷地内への出入りを制限し通過交通の流入を防ぎ、また防犯性を向上させた住宅地の事。しかし町の中心から離れていて地の利が悪く公共の交通手段もないという悪条件の上、2人の進み過ぎた発想と自然の中で暮らすという価値観は、当時の人々にはあまり受け入れられなかった。
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