- 038 捕獲作戦(5) -
文字数 2,328文字
上空の空中戦を見ていたエレナ達は、湖岸まで出てきた。
エレナは、トランシーバの先にいるベルナスに言った。
「用意はいい? ベルナス」
「OKです、部長」
エレナは、エイジを見た。
「エイジ、もうすぐ落ちてくるから、ベルナスとエイジでハサミ撃ちよ」
「任せろ」
大きな肉の塊となって、ロイガーが落ちてきた。ちょうど、エイジ達のいた真ん前。だが、水しぶきも塊となって、エイジ達に降って来た。
「ちくしょう、ツァールめ、手加減なしか!」
エイジはぼやいた。
「今は、ロイガーが相手よ」
エレナが釘をさすように言った。
「わかってる!」
と、ベルナスが電撃を撃ってきた。その電撃の線上には、エイジ。
「なんだ、フサッグァのヤツも! 危ないな!」
「仕方ないじゃない。言っておくけど、ロイガーだけが相手よ」
「わかってる!」
電撃に痺れているはずだが、ロイガーはベルナスの方を向いた。
「早く、エイジ! ベルナスが狙われている」
エイジは掌打の構えでロイガーを狙った。
「哈!」
エイジは、衝撃波をロイガーに放った。その衝撃で、ロイガーは前のめりとなった。
そして、ベルナスも電撃を浴びせ続けていた。
引き攣り、苦悶の声を上げるロイガー。
湖の両岸からの攻撃に、ついにロイガーはいたたまれなくなり、湖に潜ろうとした。
「させるか!」
エイジは、次々と衝撃波を見舞った。だが、お構いなしにロイガーはずぶずぶと潜り始めた。
その時、上空のツァールが戻ってきた。ツァールの触手がうねうねと何本もロイガーに絡む。ツァールはばたばたと羽ばたき、ロイガーを潜らせまいと踏ん張った。
だが、その時、ロイガーは気づいた。
所詮、こいつらは人間の姿の部分があると。
すると、するっとロイガーから伸びた数本の触手が、対岸にいるベルナス、エレナ、ミラ、エイジ、上空のジェシカに絡みついた。いや、正確には、ジェシカには、触手の強烈なパンチがあびせられた。
すると、ジェシカは気を失ってしまい、顕現していたツァールそのものが消えてしまった。
そして、湖に落下していくジェシカ。
「しまった!」
エイジは、何とかジェシカを救わなければと思いながらも、ロイガーの触手に絡まれて、身動きできなかった。さらに悪いことに、ベルナスも、エレナも、ミラも、湖に引きずり込まれようとしていた。
一瞬で、形勢は不利になってしまった。
陰陽部は、エイジを除いて阿鼻叫喚の地獄図となっていた。だが、エイジは、渾身の力で触手をぶち切った。だが、ここからでは、ジェシカの湖面への衝突には間に合いそうにない! エイジは、目の前で湖面に叩きつけられる幼馴染など見たくない、と思ったが、手も足も出ない。
その時、エア・バイクが湖面の上を滑走して来た。
誰だ?
エイジは、その姿に驚いた。
乗っているのは、軍の会議の時に見たセイール人だ。そして、タンデムには、アリシア。そして、アリシアは、落下するジェシカを寸前で抱きとめた。
「アリシア先輩! ジェシカ!」
エイジは、思わず叫んだ。そして、その直後、アリシアは断裂波を放って、ベルナスに伸びていた触手を断ち切った。続いて、こちら側の湖岸にいるエレナとミラの触手も断ち切った。
なんとか、アリシアの土壇場の活躍で、陰陽部の危機は免れた。ほっと安心する陰陽部の一同。
だが、その隙に、ロイガーは湖に潜って行ってしまった。
ジェシカを抱きとめたアリシアの乗ったエア・バイクは静かに、Aチームの側に近づいて来た。
だが、ジェシカは気を失ったままである。
「アリシア、遅いわ!」
エレナは、怒っていた。
「すみません。言い訳はありません」
アリシアがエア・バイクから降りながら言った。そして、抱えていたジェシカをエイジに渡した。
「でも、ジェシカを救ってくれて、ありがとう」
エレナは、少し、にこりとした。
「セイールの方、ええと、ガゼルさんでしたっけ、アリシアのことを、ありがとうございます」
エレナは、ガゼルにもお礼をした。
その後、石化したまま動かなくなったチャウグナー・フォーンと死亡したアトラック・ナチャは、GPSのマークからPS部隊に回収された。
逃げたロイガーについて、湖の中の音波探査を任されたのは、PS部隊の中のランドー小隊だった。自分を含む三人の隊員をボートに乗せ、ビルセン曹長に湖岸からの後方支援活動を任せていた。ただ、ビルセン曹長は、背後から近づく影に気づくことなく、触手に絡まれて口を塞がれ、叫び声を上げることもできずに殺された。触手は、うまい具合に森の地面に穴を掘り、そこへ服を脱がされたビルセンを埋めた。やがて、何食わぬ顔で、元の持ち主から脱がした服を着た偽のビルセンは、トランシーバに少しの間応答をしなかったことを詫びた。
ボートの上のランドー小隊は、ついにロイガーの痕跡を見つけることはできなかった。
また、兄弟団の乗ってきた宇宙船と、彼等が設置していた巨大な通信機も軍の別働隊によって、その日のうちに回収されていった。
陰陽部は、その日は反省会もなく解散した。エイジのエルディリオン神族の顕現も元に戻った。ジェシカは軽い脳しんとうを起こしていたので、病院で検査したが異常もなく、その日の夜には家に帰れた。
その夜、エイジは疲れ果ててエレナと話す気にはなれなかった。
そして、静かに自室のベッドで横たわった。
そう言えば、最近、寝る前には、必ずエレナと話をしていたっけ。最近は、姉弟仲も以前ほどは悪くはない。以前は、エレナのことが心底嫌いだったような気がする。それに、なぜか姉とキスしてしまった。だが、今日は疲れた。エレナも疲れているに違いない。寝よう。エイジは、すぐさま寝息をたてた。
エレナは、トランシーバの先にいるベルナスに言った。
「用意はいい? ベルナス」
「OKです、部長」
エレナは、エイジを見た。
「エイジ、もうすぐ落ちてくるから、ベルナスとエイジでハサミ撃ちよ」
「任せろ」
大きな肉の塊となって、ロイガーが落ちてきた。ちょうど、エイジ達のいた真ん前。だが、水しぶきも塊となって、エイジ達に降って来た。
「ちくしょう、ツァールめ、手加減なしか!」
エイジはぼやいた。
「今は、ロイガーが相手よ」
エレナが釘をさすように言った。
「わかってる!」
と、ベルナスが電撃を撃ってきた。その電撃の線上には、エイジ。
「なんだ、フサッグァのヤツも! 危ないな!」
「仕方ないじゃない。言っておくけど、ロイガーだけが相手よ」
「わかってる!」
電撃に痺れているはずだが、ロイガーはベルナスの方を向いた。
「早く、エイジ! ベルナスが狙われている」
エイジは掌打の構えでロイガーを狙った。
「哈!」
エイジは、衝撃波をロイガーに放った。その衝撃で、ロイガーは前のめりとなった。
そして、ベルナスも電撃を浴びせ続けていた。
引き攣り、苦悶の声を上げるロイガー。
湖の両岸からの攻撃に、ついにロイガーはいたたまれなくなり、湖に潜ろうとした。
「させるか!」
エイジは、次々と衝撃波を見舞った。だが、お構いなしにロイガーはずぶずぶと潜り始めた。
その時、上空のツァールが戻ってきた。ツァールの触手がうねうねと何本もロイガーに絡む。ツァールはばたばたと羽ばたき、ロイガーを潜らせまいと踏ん張った。
だが、その時、ロイガーは気づいた。
所詮、こいつらは人間の姿の部分があると。
すると、するっとロイガーから伸びた数本の触手が、対岸にいるベルナス、エレナ、ミラ、エイジ、上空のジェシカに絡みついた。いや、正確には、ジェシカには、触手の強烈なパンチがあびせられた。
すると、ジェシカは気を失ってしまい、顕現していたツァールそのものが消えてしまった。
そして、湖に落下していくジェシカ。
「しまった!」
エイジは、何とかジェシカを救わなければと思いながらも、ロイガーの触手に絡まれて、身動きできなかった。さらに悪いことに、ベルナスも、エレナも、ミラも、湖に引きずり込まれようとしていた。
一瞬で、形勢は不利になってしまった。
陰陽部は、エイジを除いて阿鼻叫喚の地獄図となっていた。だが、エイジは、渾身の力で触手をぶち切った。だが、ここからでは、ジェシカの湖面への衝突には間に合いそうにない! エイジは、目の前で湖面に叩きつけられる幼馴染など見たくない、と思ったが、手も足も出ない。
その時、エア・バイクが湖面の上を滑走して来た。
誰だ?
エイジは、その姿に驚いた。
乗っているのは、軍の会議の時に見たセイール人だ。そして、タンデムには、アリシア。そして、アリシアは、落下するジェシカを寸前で抱きとめた。
「アリシア先輩! ジェシカ!」
エイジは、思わず叫んだ。そして、その直後、アリシアは断裂波を放って、ベルナスに伸びていた触手を断ち切った。続いて、こちら側の湖岸にいるエレナとミラの触手も断ち切った。
なんとか、アリシアの土壇場の活躍で、陰陽部の危機は免れた。ほっと安心する陰陽部の一同。
だが、その隙に、ロイガーは湖に潜って行ってしまった。
ジェシカを抱きとめたアリシアの乗ったエア・バイクは静かに、Aチームの側に近づいて来た。
だが、ジェシカは気を失ったままである。
「アリシア、遅いわ!」
エレナは、怒っていた。
「すみません。言い訳はありません」
アリシアがエア・バイクから降りながら言った。そして、抱えていたジェシカをエイジに渡した。
「でも、ジェシカを救ってくれて、ありがとう」
エレナは、少し、にこりとした。
「セイールの方、ええと、ガゼルさんでしたっけ、アリシアのことを、ありがとうございます」
エレナは、ガゼルにもお礼をした。
その後、石化したまま動かなくなったチャウグナー・フォーンと死亡したアトラック・ナチャは、GPSのマークからPS部隊に回収された。
逃げたロイガーについて、湖の中の音波探査を任されたのは、PS部隊の中のランドー小隊だった。自分を含む三人の隊員をボートに乗せ、ビルセン曹長に湖岸からの後方支援活動を任せていた。ただ、ビルセン曹長は、背後から近づく影に気づくことなく、触手に絡まれて口を塞がれ、叫び声を上げることもできずに殺された。触手は、うまい具合に森の地面に穴を掘り、そこへ服を脱がされたビルセンを埋めた。やがて、何食わぬ顔で、元の持ち主から脱がした服を着た偽のビルセンは、トランシーバに少しの間応答をしなかったことを詫びた。
ボートの上のランドー小隊は、ついにロイガーの痕跡を見つけることはできなかった。
また、兄弟団の乗ってきた宇宙船と、彼等が設置していた巨大な通信機も軍の別働隊によって、その日のうちに回収されていった。
陰陽部は、その日は反省会もなく解散した。エイジのエルディリオン神族の顕現も元に戻った。ジェシカは軽い脳しんとうを起こしていたので、病院で検査したが異常もなく、その日の夜には家に帰れた。
その夜、エイジは疲れ果ててエレナと話す気にはなれなかった。
そして、静かに自室のベッドで横たわった。
そう言えば、最近、寝る前には、必ずエレナと話をしていたっけ。最近は、姉弟仲も以前ほどは悪くはない。以前は、エレナのことが心底嫌いだったような気がする。それに、なぜか姉とキスしてしまった。だが、今日は疲れた。エレナも疲れているに違いない。寝よう。エイジは、すぐさま寝息をたてた。