第39話 崩壊の天使
文字数 2,187文字
勇者ミウラは、1245672143の経験値を得た!
ミウラはレベル47に上がった!
勝ち誇った様子のミウラを確認し、神々しい青年の姿をした天使がそっと彼の前に現れる。
彼の正体はドミニオン。
そしてガブリエルでもあった。
スバルはドミニオンの変化の姿に目を見張った。
事務室に音もなく戻り、元の見た目に戻る。
煤となった魔王スケアクローの残骸に向かって、勇者ミウラは何やら呟いていた。
いや、スケアクローだったな。
君はいつだって最強でひとりぼっちで、僕は君のことをとても放ってはおけなかった。
あの春の日、君はスーパーで半額シールが貼られたポークビッツを全て買い占めていたね。
カゴいっぱいになるまでポークビッツを手に取っている姿は異常過ぎたよ。
大好きだ。
あの夏の日、僕らはキャンプに出掛けて初めて結ばれたね。
トランクの扉を全開にして後部座席を倒して、何回も何回も君を抱いた。
そのシチュエーションが好き過ぎて隠し撮りして動画をネットに投稿したくらいだ。
大好きだ。
あの秋の日、君はラブホでSMの女王になるとか言ってバカみたいに散財して料金が支払いきれなくなって僕が慌てて消費者金融に駆け込んだ。
あの時の君の、残酷なまでに無垢な笑顔。
永遠に忘れないよ。
死ねよ、と本気で思った。
あの冬の日、クリスマスの前日に君が予定をドタキャンしてくるので落ち込んでいたら、君は何の罪の呵責もなくメールを送ってきたね。
「メリーウェーイ!クルシミマス!」
の文字を見た時、殺意が止まらなくなったよ。
永遠に愛しているよ、数子。
彼はゲッソリとした様子でパソコンの椅子に腰掛けた。
愛の口上を述べたり、美容液サンプルの袋を弄ったりして何やらガサゴソしていた彼が帰宅したのは、それから約三時間後であった。
ドミニオンが工場跡地のような会社の建物に両手を翳すと、建物全体が金色の粒となりキレイに消え去っていく。
その中の、魔女ルカ☆魔獣リカの作品を開く。
世界律を一瞬で崩壊させるリカの存在。
ドミニオンはその力を持っているらしいと理解し、スマホの画面を閉じた。