第2話 定着の天使
文字数 1,919文字
メロディーを覚え、その通りに歌う。
ソロネに言われた事を思い出し、曲を注意深く耳に叩き込んだ。
箒と塵取りを持ち出し、丁寧に掃除をしてレコードの欠片を棄てる。
激務の末に蒸発し、スバルは築120年の洋館に取り残され、そのまま一人で住んでいる。
幸いにも掃いて棄てる程に財産が残されていたが、それらを湯水のように使い潰す程理性が欠落した男ではなかった。
支度をし、家を出る。
道の途中で、ネリアに会った。
彼女の通う女学校はスバルの学校とは反対方向にある。
わざわざスバルの為にヤフオクでプレゼント品を落札し、少し早起きして届けてくれたのだ。
そう考えると、スバルの心は少し暖かくなった。
彼は手洗いうがいの後で、居間のソファーに座り、本を端から端まで熟読を始めた。
この手の本は、きちんと最後まで読んでから悪魔召喚を行わないと酷い目に遭うことは、あらゆる書籍などから情報として得ていた。
魔法書は20ページしか存在せず、袋とじまで見ると計30ページと極端に薄い本であったが、10回読み直す。
杖を振るうと、赤と青のチョークと、医療セットが現れた。
穿刺をして血を採取しようという作戦であった。
病院にアルバイトとして勤務していた頃もあったが、同僚に酷く虐められてから辞めてしまったのだ。
大腸炎の患者のケアを思い出しながら、注射セットを肛門に刺していく。
ヒリヒリする下腹部を押さえながら、スバルは魔法陣に向かって祈りを捧げる。
スバルはあまりの眩しさに目を閉じ、やがてそろそろと目を開く。
目の前には、見慣れた顔の天使が居た。