第19話 統合の天使
文字数 1,761文字
スバルは眉を寄せながら、恐る恐る挨拶をする。
事務室のパソコンの前に、ドミニオンが座っている。
またしても彼は、何やら独り言を呟いていた。
フランス料理なんて急に用意出来ないよ。
「どうせアイツしか食べないから雑でいいのよ。バレっこないわ」
いや、でも流石にエスカルゴの代用はバレるだろう。
「あのスバルくんという子に忠告して、スケアクロー用に適当にご馳走を用意しておきなさい」
あいわかった。
そうするよ。
幾つかのマウス操作の結果、変身コスチュームデータと書かれたファイルが開かれた。
暫くの時間を置いて、画面いっぱいにコスチューム候補動画のサムネイルが展開されていく。
スバルは彼の後ろ姿を見送り、パソコンの画面に釘付けになる。
隣の派手なデザインの変身後の姿には目もくれず、敢えて変身前の姿をチョイスする。
ハグ辺りで奇を衒ってオリジナリティを目指したら、何故か絵師界隈で流行ったね。
恐らく原作者様はそんな事を望んでいなくて、謎に流行った目の描き方に嫌気がさして、ワンダフルで元の目のデザインに戻したね。
模写厨は滅びるべきだよね。
奇抜で元ネタがバレバレのデザインが社会的に定着してしまったことにより嘆く原作者がいる実情を、ユーザーは知るよしもない。
キアスムの欠落を嘆きつつ、スバルは正しい手順でUSBを引き抜いた。