第25話 背徳の天使

文字数 1,954文字

翌日、スバルは隣で寝ているネリアの髪を掻き上げ、ベッドでゆっくりと過ごしていた。



先日の内にネリアに連絡を取ると宿泊OKの返事を貰った為、彼女を迎えに行ったのだった。


ネリアは先に夕飯を済ませたのだという。

スバルはそっと、彼女を抱いた。

可愛いな、ネリア。

まだ女学生だけど、すっかり大人びて。

う、ん。

おはようございます、スバルさま。

昨夜は素敵でした。

おはよう、ネリア。

今日は学校?

はい。

午後から登校します。

ネリアは随分自由に生きているように見えた。

スバルは起き出し、朝食の支度をしながら彼女について考える。

無理に泊まらせちゃったかなあ?

会えないのは寂しいのは勿論だけど、ちょっと強引だった気がする。

おはよう、スバルちゃん。

ネリアちゃんはシャワーを浴びているよ。

ソロネちゃん。

昨夜はどこに行ってたの?

枕元のベッドサイドテーブルの上で、宝石箱になって深く眠っていたよ。

ほら、こんな感じ。

そう言いながら、ソロネは瞬時に小さな宝石箱へと姿を変えた。


スバルが驚いて箱を開けると、中はベッドのようになっていて、小さな金髪の天使が眠っていた。

なんだこれは。

ソロネちゃん、可愛すぎるでしょう。

気に入ったかな?

この中にいる時は、私は海よりも深く泥のように眠っているからね。

話も音も聞こえないよ。

そんなに気を使うものなの?
当たり前でしょう。

自分がやられて嫌なことはしないの。

私は本当に真面目にプライベートは守り続けるよ。

空気を読みます。

これが守護霊というものなのかな。

別格な気がする。

低次の存在には出来ないかもね。

大昔に守護霊なる存在が流行った時は酷いものだったよ。

プライバシー皆無で。

今は基本的に守護霊は廃止になっていて、守護霊行には厳しいテストを受けなければならなくなっているよ。

今のところ、私しかパスしていないね。

もしかして、お迎えの時は消えちゃうとか?
それは無いよ。

スバルちゃんがこの世を去る時は、私がそっと抱き締めてお家まで送るね。

その後は、いつもの通りだよ。

ずっと守護霊になっているね。

真魂が消え果てる時はどうなるのかなと思って。
それは有り得ないよ。

スバルちゃんは全ての霊魂を無に帰す光の海に入っても自我が消えないくらい強い存在だから、魂は永遠だよ。

そういうものなのか。

ぼくはいつか、自分が消滅するとばかり考えていて。

それは荒御魂だね。

転生時のトポロジー変換の歴代カタチの内、何かに引っ張られているんだね。

その程度にこだわり続ける未熟な霊魂は、光の海に飛び込むまでもなく自然に消えてしまうだろうね。

スバルちゃんは消えなかった。

自我が弱いけど、理性があるから。

理性?

ぼくに?

信じられない。

ぼくはいつも獣ように生きていると、そればかり考えていて。

少し理想が高すぎるのかな。

人間とは何かをよく分かっていないのかもしれない。

スバルちゃんに求められる希望の星の要素は平均的人間像の遥かなる超越と君臨だから、無理もないね。

君臨?

それはなさそうだけど、その気質の為に軋轢に苦しんでいるというのかな。

本物になりつつある証拠だね。

凄いよ、スバルちゃん。

青い妖精の意識が宿っているね。

え?

まさかのYO!SAY!

なの?

そうだよ。

ナマ足魅惑のマーメイド。

やがて、ネリアがそっと起き出してきた。

スバルはすぐにネリアに駆け寄り、熱い抱擁とキスを交わした。


その後で、朝食のセッティングに取り掛かる。

ごめん。

無理に言って泊まらせちゃったかな?

イングリッシュスタイルの朝食を摂りながら、スバルは少し済まなそうにネリアに訊ねた。

ネリアは小さく笑うと、少し俯いた。

いえ。

実は私、学校で嫌がらせを受けていまして。

先日スバル様がクッキーを届けてくださったのを皆になじられ、孤立をしているのです。

やはり気を付けるべきでした。

スバル様があんなにおモテになるなんて。

まさか、そんな事が。

申し訳なかったね。

いいえ。

大丈夫です。

スバルちゃん。

ネリアちゃんがいじめられているのは本当だけど、スバルちゃんとの昨日の熱い夜はネリアちゃんに優越感を与えているよ。

どんなに周りから嫉妬されて酷い事を言われても、スバルちゃんからの愛は確かなものだからね。

学校に行きたくないのは本当だし、今日は午前休にしたかったからちょうど良かったみたい。

気にしなくても大丈夫そうだよ。

えっ?

ゆう?

まさか……はは。

きよ、ら?だよね?

はい。

そうです。

一筋縄ではいかないのが、人間の心だよ。

ネリアちゃんの清らかさは、深い部分からなる成長から来る美しさだからね。

薄くないんだよ。

厚いんだよ。

そうなのか……。

ではぼくも、そんなに悩む事もなかった?

否、悩み合ってこその今のぼく……。

すっかり色男だね。
考えることは尽きないが、心のどこかで安堵の念が生まれる。


お洒落なバラのティーセットが、朝日を反射して美しく光った。

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登場人物紹介

スバル

魔法使い志望。

ジュニアアイドルをしていた。

ノボル

スバルの級友

突然全てが虚しくなり、出家を決意する。

カンタ

スバルにいちゃもんをつける級友

マリナ

スバルの母

ネリア

可愛い彼女

魔王スケアクロー

スバルの上司にして魔王

ミウラ

打倒の標的にされている勇者

座天使ソロネ

スバルの守護天使

ドミニオン

会社の事務の人

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