第38話 討伐の天使
文字数 2,125文字
スバルはソロネから簡易的な仏教典を受け取ると、さっと目を通した。
転輪王とは転生世界の仕組みを作る力そのもののことであり、長く敷かれた世界律の溝に捕われし者は永遠に藻掻き続ける。
そのようなことが記載されていた。
三人は納得し、オレンジロードと書かれた缶ジュースを飲み干すと、缶をゴミ箱に放り込んだ。
ミウラを誘導させる罠を即席で作り、道の端端に仕込む。
作戦では、そのまま待機という事であった。
少しの間の後で、会社のアルミサッシの引き戸が開かれた。
扉を開けたのは、なんと勇者ミウラであった。
三人は息を飲んで彼の姿を凝視する。
あっと思う間に、二人は剣を交わし始める。
その様子を事務室からこっそりと覗きながら、ドミニオンは息を吐いた。
やがて魔王スケアクローと勇者ミウラはぐったりとして座り込み、肩で息をするまでに弱り果てた。
彼らの戦いに決着が付きそうにはなかった。
ふとスバルは彼らのチャンバラごっこに嫌気が差し、右手の人差し指を頭に乗せた。
突然ミウラが立ち上がり、魔王スケアクローに斬り掛かった。
魔王は汗みどろになったまま、勇者が振りかぶる様子を見上げている。
スバルは密かに影からメドローアを100発放った。
星王烈龍剣とメドローアは見事に魔王スケアクローに命中し、彼は塵と化す。
野焼きの煤のように散り果てていく魔王の最期を見届け、ミウラはフラつきながらもニヤリと笑った。