第13話 約束の天使
文字数 2,096文字
スバルは今日に限って弁当を忘れた為、手作りの菓子で凌ぐことにした。
なまらでかいシュークリームが4つ。
クッキーが20 枚。
プレッツェルが54個ある。
スバルがほっこりしていると、教室の出入り口からカンタが激しいダンスを踊りながら飛び込んできた。
カンタが去っていく後ろ姿を見送りながら、スバルは深い溜息を吐いた。
クッキーはあと1枚しか残っていない。
スバルちゃん、周囲の人間を密かに見下していたんだね。
分かるけど、そこはもう少し平らにしよう。
視線を合わせて。
そうすると、皆何故か離れていくよ。
自分で上下を作るから、上下関係の苦にハマってしまうんだよ。
その通りだよ。
視線を同じ高さに合わせると、嫌な人は去っていくし気の合う人と本当の意味で仲良くなれるの。
ずっと欲しかった家族の絆が育まれるようになるよ。
スバルちゃんが幸せになるまで、私とことん応援するね。
私はあなたのお母さんの意識の一部から生み出された、世界を動かす車輪の役目なの。
お母さんがリカームドラを放った後に私という存在を生み出したんだ。
そうしないと世界は崩壊していたの。
回転を生み出すシバがどうしても必要で。
スバルは信じられない想いでクッキーを齧った。
まさかの母の忘れ形見。
そして、母の死因の結果。
座天使ソロネ。
スバルはルドルフ・シュタイナーの文献の一節を思い出していた。
座天使の苦しみを描いた、過去の栄光と屈折を。
許されるよ。
少なくともあなたのお母さんは、無限に乳が出る人だったから。
でも兄弟が23人もいては、それも難しいかな。
スバルちゃんは男兄弟の中の下から三番目。
人間の姿だからね。
豚ならなんとかなっただろうけどね。
静かなる制約を交わし、その後は穏やかに過ごす。
スバルは来世を想い、かつてないほどに心が晴れ渡っていた。