第40話 解脱の天使
文字数 2,218文字
やがて溜息を吐いて、ソファーに座り込む。
またいつかの世で再現・顕在化されるので完全なる死とは言い切れないから。
罪とは本来、自分の使命を自覚しないことにあるからね。
スバルちゃんはこれまで、希望の星としての自覚が足りないとして罪穢を積んでいたね。
今回の転生で使命を悟ったことで、それらが全て清算されたよ。
これから美の追求を永遠に続けようね。
翌日。
スバルはネリアの女学校へと向かった。
西の門を潜ってこの世界から脱出するのに、彼女と共にあるべきだと思ったのだ。
門前で待機し、ネリアを待つ。
暫くすると彼女は男性と並んで姿を現した。
それはかつてのクラスメイトのカンタだった。
放心するスバルに、ソロネは耳打ちをするようにそっと話りかける。
どんなに仲が良くてもね。
それでも何とか折り合いを付けて努力を続けるのが人としての在り方だよ。
スバルちゃんは精一杯頑張った。
ネリアちゃんと縁が途切れてしまったけど、それはスバルちゃんが使命を自覚したから……。
脈性のその先の、神性領域まで到達してしまったからだよ。
荷物を纏めてから、築120年の洋館をソーマ還元の業を以て消し去った。
ふと後ろを振り向くと、同じく荷物を纏めたドミニオンが立っていた。
土管が三本横に並んで置かれた既視感しかないその空間にドミニオンが手をかざすと、天から黄金色に輝く桟が現れる。
勇者ミウラはターニングポイントとして設置されたこの地の秘密を無自覚に嗅ぎつけてどうにかしようとしていたようですが、まだまだ甘い。
この天の桟に到達出来ませんでした。
彼はまだ、ここから出られません。
暁の茜の門をくぐること。
それこそがアセンションにして解脱の証であることに、スバルは未だ気付くことはなかった。
その後にソロネからこの事実を伝えられた彼は、心底安心して今後の活動について思索を始める。
彼の天性の才能を活かした希望の星としての活動は、未だ序章のうちに……。