第1話 秘密の天使
文字数 1,891文字
そこは、剣と魔法の世界。
ハンダール王都から西に300km程向かった先に、マルテラスという小さな街があった。
マルテラスにある唯一の魔法学校。
マルテラス魔法学校。
時折大出世をする逸材を生み出すとして、密かに国内にその名が知られていた。
今日も終業の鐘が鳴る。
普通科。
魔法科。
工業科。
物語は、普通科最上級の教室から始まる。
ここ普通科7年2組の名物で、眼鏡三兄弟と呼ばれる男子三人組の内の一人である。
そして毎日のようにカンタに暴言を吐きかけられるスバルも、その内の一人として数えられていた。
落ち着き払ってカンタを宥めているが、正直なところ内心では軽蔑さえしている。
終業のチャイムはとうに鳴り終わっている。
スバルはそそくさと帰宅の準備を始めた。
学校の門の付近で、唐突にハスキーな声がスバルを呼び止めた。
マリナはスバルの母だった。
父と離婚し家を出たが、時折スバルを待ち伏せてはデートに誘ってくる。
最初は喜んだが、あまりに強過ぎる性格故に泣かされる事が多く、最近は距離を置いていた。
見た目のデザインは古いが、内装は非常に豪華であり、クラッシックな雰囲気が気に入っていた。
自室に戻ると、スバルは二階の音楽室へと向かった。
座天使ソロネと名乗る彼女は、常に彼の元へ降り立つ訳ではなかったが何かと援助をしてくれた。