第18話 望郷の天使
文字数 1,714文字
廃工場のような見た目の会社はどこか埃っぽさがあり、これでは出勤の度に念入りに入浴しなければならなくなるだろう。
ドライヤーをかけながら、スバルは溜息を吐いた。
服を脱いで丁寧に畳み、パンツ一丁になるとフード付き巻きタオルを頭から被った。
どうやら変身モーションは存在しないようだった。
耐久性も充分だし、変身機構は空中元素固定装置の応用だね。
自分の周囲の量子に対し
「集まれ」
「言う事を聞け」
「固定しろ」
という命令を無理矢理かけているんだ。
つまり、将来的に軋轢の発生しない衣服を身に着けないと、スバルちゃんは後で大変なことになるよ。
自分の身の回りに置く物も意識していこう。
好きなものに囲まれて過ごせば、大体大丈夫だけどね。
それは宇宙アストラルのベクトルに点在する絶対的なセレスティアルゲートから発するミルキィウェイの中でも、お母さんのお気に入りのタオルだよ。
スバルちゃんにプレゼントしたってことは、スバルちゃんはお母さんにとって特別な存在なんだね。
洗いざらしのバスタオルのゴワゴワした感触が肌を刺激する。
繊維の質を守るために、スバルは柔軟剤の類を使わないようにしていた。
そして衣装室へと向かい、お気に入りの服を特に吟味して、不要な服を全て捨てた。
ゴミ袋に4枚程、縁起の悪い服が詰め込まれることになった。