第16話 入社の天使
文字数 1,901文字
寒さがゆるゆると和らぐ頃。
スバルはスーツを着て鏡の前に立っていた。
二人は手を繋いで築120年の洋館を出ると、そのままお向かいにある廃工場のような建物に入って行った。
玄関ドアを開けると中は巨大な1DKになっており、広々とした部屋に一本のレッドカーペットが敷かれていた。
カーペットの果てには玉座があり、何者かが座っている。
スバルは恐る恐る、中に足を踏み入れる。
スバルちゃん、この人は代表取締役社長だよ。
ノボルちゃんの名前とスバルちゃんの名前を入れ替える魔法を掛けたんだけど、まだ記憶値定着に至っていないから自分の名前を強調していこう。
そうすれば、得る社代は完全に完成となるよ。
玉座に座ったその男は、にこやかにスバルに握手を求めた。
魔王スケアクローの怒声と共に、奥の部屋から覇気のない男性が現れた。
ドミニオンと呼ばれた男性は、静かに外へと向かう。
スバルは気まずい表情になりながら、魔王スケアクローに弁解をする。
スバルは指を親指と人差指を立ててグーを組むと、魔王スケアクローに向かって人差し指からメラゾーマを100発程放った。
魔王スケアクローにかすりもせず、彼の後ろの玉座は蜂の巣のように穴だらけになった。
何故か、メラゾーマに関してはスバルはMP切れを起こすことはなかった。
魔王スケアクローは下半身を濡らしながら、その場に倒れ込んだ。
キツいアンモニア臭が辺りに立ちこめ、二人は眉を顰めた。
背後から、ドミニオンと呼ばれた男性が静かに現れた。
彼は魔王スケアクローを跨いで通り、穴だらけになった壁を魔法で修復し始める。
スバルは訝しげに彼の背中を見つめながら、泡を吹いて倒れている魔王スケアクローを跨いで通り、後についていった。