第28話 憑霊の天使
文字数 2,348文字
幾ら待てども彼が出て来ないので、痺れを切らしたスバルは会計を済ませることにした。
会計は、2471円(税込)だった。
一抹の不安を覚えつつ、スバルはレジに領収書の発行を頼むことにした。
経費で落とせるかもしれない。
そう考えたのだった。
木の垣根に囲まれ、少しの雑草が生えた更地の中心部に横たわらせられた土管が三本、積み上げられている。
光の刃は土管の端にかかり、コンクリート製の土管が薄くスライスされた。
地面に、厚さ一センチのコンクリートの輪が三つほど地面に落ちる。
彼は男娼扱いされ、酷い目にあった霊魂だった。
今のように謂れのない言い掛かりを付けられて、言葉に言い表せぬ程いたぶられたのかもしれない。
そう考え、スバルはミウラを睨んだ。
話を上手く逸らす。
出来るだけ、相手のプラスになるように。
何故か、そういったテクニックについて妙に頭が回った。
ニックとは誰だ?
何故、ミウラについて何も知らない筈なのに見ず知らずの名前が飛び出てくるのか。
まさか、これが項羽の能力であると言うのだろうか。
変身ブレスレットは変装能力だけには終わらないのかもしれない。
そう考え、このブレスレットの開発者の底しれぬ才能を感じた。
突如として紙袋の中身が重く感じ、ミウラにそっと差し出した。
胸を撫で下ろしながらも、スバルは胸の中のもやもやを掻き消すことが出来ずにいた。
貰いそびれたとはなんだ?
ミウラは配布イベントに参加できなかったとでも考えているのだろうか。
なんて奴だ。
彼の薄汚い根性を考えた途端に、猛烈な疲労が襲う。
ミウラの後ろ姿を最後まで見届けてから、スバルはガクッと気が抜けてしまった。
そのままフラフラと先程のサイゼリヤに戻り、トイレで変身を解く。
そして、欲望に任せて食べ切るか分からない程の注文をした。
サイゼリヤは経費削減の為に容器などのクオリティを落としているが、味はまだ頑張っている。
有難みの感情と涙が滾々と湧き出て止まらず、視界が滲んだ。