第8話 内定の天使
文字数 1,964文字
幸せな時間は少しずつ過ぎていく。
スバルはソロネとの共同生活で、嫌なことを全て忘れてしまっていた。
何もかもが順調に見えた。
就活以外は。
そんなある日。
実はぼくは先日の面接にて、余裕で内定を取ってね。
ぜひ来てくれとオファーの嵐だった。
ところが、最後の一社があまりのしつこさに断りきれなかった。
ぼくは全ての希望を失ったよ。
ぼくの代わりに入社してくれないか?
ノボルは言うだけ言うと、颯爽とスバルの前から立ち去った。
スバルは眉を顰めつつ、彼の後ろ姿を見つめる。
どう頑張っても、ノボルとは完全に相容れる事は出来ない。
そんな気がした。
スバルは微妙な面持ちで、内定代行を引き受けることにした。
魔法の竿(株)の所在地を把握していなかった為、学校に置いてあった電話帳で調べることにした。
目的の会社は、なんと自宅の真ん前にあった事が判明した。
所在地及び通勤時間の問題が一挙に解決し、スバルは一応の安堵を得た。
仮に徒歩1時間もかかる場所だったら、通勤手段を考えねばならない。
スバルはカバンから財布を出すと、何十枚という運転免許証を机の上に並べた。
特殊大型から牽引車、フォークリフトから農耕車まで、あらゆる免許証が揃っている。
スバルは免許証を仕舞うと、今度は入社式当日にスーツを着るべきか考え始めた。