第15話 卒業の天使

文字数 1,922文字

蛍の光 窓の雪

書読む月日 重ねつつ

何時しか年も すぎの戸を

開けてぞ今朝は 別れゆく

止まれも行くも 限りとて

瓦みに思ふ 千万の

心の端を 一言に

幸くと許り 歌うなり

筑紫の極み 陸の奥

海山遠く 隔つとも

その真心は 隔てなく

一つに尽くせ 国の為

千島の奥も 沖縄も

八州の内の 護りなり

至らん国に 勲しく

努めよ我が兄 恙無く

今日で魔法学校も卒業か。

蛍の光を卒業式に歌うなんて古風だな。

戦後の雰囲気満載だもんね。

卒業ソングでは仰げば尊しと二強だけど、蛍の光は特に古めかしい感じがするね。

最早蛍の光のイメージは閉店だもんな。

営業時間終了の曲だよ。

可愛い四天王がいちにん、風の蛍石号の事だよ、蛍の光って。

文明が最高まで育った時に訪れる、ほんの一瞬の磨き抜かれた技術のシンボルなんだけど。

可愛い四天王の一人!?

風の蛍石号とは……。

とっても可愛い、宇宙を支える象の神様だよ。

普段は大人しいけど、健気でまじめで本当に良い子なんだ。

……象?!

ぼくは象と仲良くなれるかな。

象は仮の姿で、本体は男の子です。

蛍石ちゃんは本当に可愛くて、ものづくりがとっても上手だよ。

あまりにもストイックな性格なので理解者は少ないけど、あの可愛さは中々出せるものではないよ。

……ぼくも可愛さにはとびきり自信があるんだけど。

そんなにいい子なの、蛍石ちゃんとやらは?

スバルちゃんと蛍石ちゃんは、可愛さの畑が違うんだな。

それぞれの個性や長所となる部分を磨いて、個々の可愛さレベルをMAXまで輝かせてね。

ぼくにはぼくの可愛さがあるってこと?

奥深いんだね、可愛さとは。

その通りだよ。

スバルちゃんの可愛さは特有過ぎて誰も真似できないんだよ。

レジェンドレベルになると、底しれぬ哀愁を漂わせた繊細にして究極の可愛さが醸し出されるようになるの。

レジェンドレベルとは?

ぼくより可愛いの?

殿堂入りには、星の宮という最高に可愛いお星様の神様がいるよ。

この子は本当に可愛くて、その愛らしさは恐らく宇宙一だよ。

スバルちゃんも頑張ろう。

匹敵する輝きの潜在能力を持っている筈だから。

可愛さの潜在能力?

ぼくにはまだまだ、伸びる要素があるということ?

そういうことだね。

レジェンドと四天王のみんなと仲良くなれるといいね。

美しさで争うのは良くないよ。

お互いに讃え合おうね。

レジェンド、四天王と上下関係を作っておいて、そんな事を言うの?

美しさとは、本当に罪深いな。

レジェンドは女の子の部。

四天王は男の子の部だよ。

上下は微妙にあるけど、みんな中身の可愛さが外へ滲み出た結果だからね……。

心の美しさか。

分かった。

ぼくも眩いばかりの神々しさを放つように心を磨くね。

いい子になる必要がここで出てくるんだね。

体育館で二人が内緒話をしていると、後ろからノボルが肩をつつく。
何を話している、スバル?

美しさについて聞こえてきたが。

ノボル……。

中身の可愛さは、やがて見た目の美しさへと滲み出て来るようだ。

その事について、少し……。

そのことなら問題ない。

ぼくは宇宙最強の美しさと知性を兼ね揃えていることになるな。

マジか。

気づかなかったよ、ごめん。

今知ったか。

仕方ないな。

お前の目は節穴だからな。

ぼくほどになると、宇宙の全てがひれ伏してくる。

あまりの神々しさと美しさ故に、何もかもが変化していくのさ。

ドブ川さえも清められる。

それは、色蘊というものか?
よく知っているな。

お前にしては上出来だ。

褒めてやろう。

ぼくは色の全てを扱う事も出来る。

例え黄土色だろうと、何もかもを変え果てて金色に輝かせる事が出来るのさ。

黄土色に何の罪が……。

分かった。

おや、そろそろ退場の時間だ。

卒業式も終わりだな。

帰りに紅白饅頭を貰って帰ろう。

それでおさらばだ。

黄土色の意味が分からんのか?

まだまだだな。

そろそろ終わりか。

また会おうな。

やがて退場の音楽と共に、列に倣って二人は静かに体育館から退出をする。


スバルはチラリとソロネに視線を送る。

ノボルの言う、黄土色ってなんなの?
宇宙量子の最高峰の事かな?

四次元転換のことだと思うよ。

ノボルちゃんはこれから宇宙創生を行う尊いお方になるから、言動などに気を付けた方がいいよ。

きっとそのうち、スバルちゃんもノボルちゃんのお世話になるから。

深く感謝する日が来るよ。

実感が沸かないが、恐らくそうなるんだろう。

サインくらい貰っておくべきか?

サインはともかく、ノボルちゃんにプレゼントをして全く損は無いと思うよ。

シールとかどう?

シールか。

卒業の記念だしな。

キラキラのフォイルシールでも渡すか。

教室に戻ると、スバルはカバンから虹色の銀シールを取り出し、ノボルに手渡した。


ノボルはいたく感激し、スバルの事を褒めちぎった。


穏やかに、卒業の日は過ぎ去っていった。

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登場人物紹介

スバル

魔法使い志望。

ジュニアアイドルをしていた。

ノボル

スバルの級友

突然全てが虚しくなり、出家を決意する。

カンタ

スバルにいちゃもんをつける級友

マリナ

スバルの母

ネリア

可愛い彼女

魔王スケアクロー

スバルの上司にして魔王

ミウラ

打倒の標的にされている勇者

座天使ソロネ

スバルの守護天使

ドミニオン

会社の事務の人

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