第21話 説得の天使

文字数 1,838文字

勇者ミウラの現れる所に、悪の組織・魔法の竿(株)があるのだと言う。


これがどういう意味を持つのか、スバルには理解が出来なかった。

悪あるところに勇者が登場するものではないのか?

正義が先にあるってこと?

魔王はいっぱいいるからね。

その中でも大魔王は影に潜んでいるし、小物の魔王は世間にちょっかいを出すのが常だよね。

何故、勇者にちょっかいを出すと思う?

妬みかな。

それか、早めに危険な芽を摘んでおこうという心理?

その通りだよ。

魔王スケアクローは、勇者ミウラを妬んで襲撃をかける。

ミウラは迎え撃つだけだね。

ちっちゃくない?

魔王なのに。

そういうものなの?

そういうものだよ。

ばいきんまんは、アンパンマンのいない世の中では暴れ回る事はないよね。

ドキンちゃんの我儘を叶える為に奔走はしても。

え!

そうだったの?

ばいきんまんは、かまってちゃんの精神でアンパンマンワールドで暴れ回っていたの?

世界の名前がそのまんまだからね。

アンパンマンと絡むために、ばいきんまんは存在しているんだね。

これが宇宙真理だというの?

なんてお粗末なんだ。

スバルは敵と味方の複雑な関係性について考え、段々と混乱してきた。


卵が先か鶏が先か。


そういえば、主人公の設定の核心に迫る要素に敵なる存在が群がり、そこから主人公が巻き込まれなどの形で事態が膨れ上がっていくパターンが多い気がする。

勇者ミウラは何のために存在しているのだろう。

そもそも、勇者とはなんだろう?

それを調べに行こうか。

ミウラの場所は既に掴んでいるよ。

第三者を装って近付いてみる?

そうだな。

仕事をするか。

すみません、ドミニオンさん。

ちょっと出てきます。

はい。

残業になったら必ずタイムカードに記入をお願いします。

タイムカードですって?

ぼく、押してませんよ?

私が手書きで書いていますので、心配しないでください。

完全アナログなんです。

呑気な会社だな。

では、行ってきます。

玉座の間にて、一人高笑いをしている魔王スケアクローを無視し、スバルは会社の外へと出た。


外の空気は澄み切っており、如何に会社の建物内が埃っぽいかが分かる。

掃除が行き届いていないのかな。

掃除機を持ち込むか。

スバルちゃん、あの建物は老朽化が進み過ぎているのもあるけど、埃っぽさの原因は魔王スケアクローによるものだよ。

彼は感染症に罹患しているんだね。

恐らく、梅毒だよ。

ごめん、ソロネちゃん。

吐きそうになったよ。

空気感染はしないよね。

梅毒に罹患すると、体臭が埃っぽくなるね。

空気感染はしないけど、やっぱりばっちいよね。

バリヤーの魔法をかけようか?

お願いします。
スバルはそのまま自宅に戻ると、すぐに入浴をした。

細部まで念入りに洗体後、服を全て破棄した。

変身ブレスレットをアルコールで拭き上げ、新しい衣服に着替えた。

靴も捨てた。


きれいになったところで、スバルは辟易しながら家を出発する。

酷い目にあった。

あの会社、燃してしまいたいようだよ。

ドミニオンが壁の修復作業の時に時空魔法を使っていたね。

つまり、現状維持の必要性を感じたんだと思うよ。

あの建物は燃しては駄目かもね。

ドミニオンはしっかりバリヤーを張っていたね。

スバルちゃんにも、念入りに三重バリヤーを張るね。

早く言ってよ、ソロネちゃん。

しかし身に沁みて理解した。

空気質の分析は常に行うべきだね。

元素分析は出来る?

アカシックレコードに読み方があるけど。

素粒子は流石に読めないな。

ぼくはマヨナラを知らなかったくらいだから。

素粒子を読むには、波動マスターにならないと無理だね。

これが出来るのはイザナミだけだったよ。

アカシックレコードのイザナミの項目を丸暗記して対処していくしかないね。

イザナミはお母さんの転生体だ。

つまり、ソロネちゃんは素粒子を読めるの?

残念ながら、私はあなたのお母さんの霊魂の一部でしかないから完全には素粒子は読めないな。

ごめんね。

でも、第三段階素粒子構築までは何とか読めるから、ほぼ読めるとしても過言ではないよ。

難し過ぎて本当に分からない。

でも、ソロネちゃんを頼っていいんだよね?

ぼくはもう間違えたくないんだ。

スバルちゃんは、まだ道を踏み外しても間違ってもいないよ。

出来る限り、スバルちゃんの応援とお世話をするね。

ぼくはまだ間違った道を進んでいない?

それは知らなかった。

まだ間に合うんだね。

余裕だったよ。

心配しないでね。

スバルちゃんは出来る子だよ。

心底安心した。

ありがとう、ソロネちゃん。

スバルは胸を撫で下ろし、ソロネと手を繋いで勇者ミウラの元へと急いだ。
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登場人物紹介

スバル

魔法使い志望。

ジュニアアイドルをしていた。

ノボル

スバルの級友

突然全てが虚しくなり、出家を決意する。

カンタ

スバルにいちゃもんをつける級友

マリナ

スバルの母

ネリア

可愛い彼女

魔王スケアクロー

スバルの上司にして魔王

ミウラ

打倒の標的にされている勇者

座天使ソロネ

スバルの守護天使

ドミニオン

会社の事務の人

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