第7話 提案の天使
文字数 1,894文字
翌日、学校に登校するとノボルの姿がなかった。
スバルは首を傾げながら席につく。
スバルは暫く焦った気持ちになっていたが、カバンから音楽プレーヤーを取り出すと、イヤホンをセットしてヘビメタルを聴き始めた。
すると、心が少しずつ落ち着いていった。
スバルは時間を確認し、すぐにお菓子を持って職員室へと向かった。
お世話になっている教諭に感謝の気持ちを伝え、クッキーの包みを配布していく。
教師一団の表情が徐々にほころんでいくのが見て取れた。
教室に戻ると、カンタがスバルの前に躍り出てきた。
カンタは乱暴にスバルの手からクッキーの包みを奪い取ると、そのまま教室の隅の席へと向かっていった。
スバルは半目になりながら、自分の席につく。
スバルちゃんの成長に認識を合わせた回答をしているよ。
あんなのに気を取られることそのものが不毛であり、いちいち気にする価値もないという心を根底に置いて、その上で無難で柔和な態度を心がけていこうね。
世渡りの秘訣だよ。
意気投合したような空気になったが、先程の会話はスバルにとって喧嘩に思えた。
アカシックレコードに載っていた「正しい心理戦の行い方」という本の内容を当て嵌めていくと、最上級のバトルの例の項目と合致したからだった。
心理戦なるものに一種の憧れを抱くこともあったが、思うようなものではない事を身に沁みて理解する。
人類の知能の頭打ちは案外遠くない事を、何となくだが自覚したのである。