第12話 告白の天使

文字数 2,198文字

翌日、スバルは早起きするとネリアの女学校の校門で待ち伏せをした。


登校する女学生がスバルを見て黄色い歓声を上げたが、彼は平然と無視をする。

凄い人気だね。

サインまで求められているよ。

ぼくは自分を安売りしないことにした。

塩対応を貫くよ。

ネリアを待つんだ。

やがて、ネリアが静々と登校する。
ネリア、おはよう。
おはようございます。

スバルさま。

スバルちゃん、ネリアちゃんには隠れてプレゼントした方がいいよ。

妬まれて、ネリアちゃんが苛められちゃうかも。

しまった、ぼくとした事が。

ネリア、少し時間をくれ。

そこの喫茶店にでも。

いいえ。

ここでお話しましょう。

実はプレゼントがあるんだ。

渡したいけど、ここで渡したら皆に羨しがられるんじゃないかと思って。

それなら、校内の体育館裏に行きましょう。

どうぞこちらへ。

ネリアに案内されるままに、スバルは紙袋を持って後についていった。


体育館裏の桜の木の下に案内される。

ここでなら。
スバルちゃん、ここは伝説の告白スポットだよ。

ここで愛の告白をしたカップルは永遠に結ばれるという噂があるし、間違いなくおしどり夫婦になってずっと一緒にいられるよ。

私は向こうで休んでいるね。

頑張って。

そうだったのか。

しかしここは女学校だよね。

ここで告白……?

まあいいか。

スバルは紙袋を持ち直すと、ネリアの顔を真っ直ぐ見つめた。


雪柳の蕾が静かに膨らみ陽の光を浴びて、ちらりと輝く。

ネリア。

いつもありがとう。

きみには感謝しかない。

ぼくはきみを永遠に愛するよ。

そしてこれは気持ちだ。

アラザンたっぷりの、なまらでかいシュークリームとクッキーだよ。

プレッツェルもある。

まあ……。

ありがとうございます。

私もスバルさまを愛しています。

これを今開けても良いですか?

勿論だ。

甘い香りが飛び出してくるから、気を付けてね。

本当に甘いですわ。

まあ、全て美味しそう。

私、未来永劫スバルさまを愛し続けます。

良かった。

ぼくもだよ。

未来永劫、ネリアを愛し続けるね。

二人は吸い込まれるように熱い接吻を交わし、やがて大変惜しみながら唇を遠ざけた。


潤んだ瞳で見つめ合い、やがてそっとそれぞれの学び舎に向かうべく足を向けた。

また会おうね。

愛しているよ。

いつでも泊まりに来てね。

はい、スバルさま。

ご機嫌よう。

女学生達に見送られながら、スバルは女学校の門を堂々と出発していった。
あの告白スポットでは、主に教師と生徒が愛の告白を交わすんだよ。

でも、学生同士はスバルちゃんが初めてだよ。

通常なら男子禁制故に箒で追い出されるからね。

イケメンは得だね。

見てたの?

まあ、ぼくくらいの美貌なら歓迎はされど追い出される事はないだろう。

見てないよ。

大丈夫。

信じてもらえなくても構わないけど。

天使だもんね。

ぼくの事をいつも見ていたっていうから……。

大丈夫。

濡れ場くらいなんでもない。

スバルちゃんとネリアちゃんくらいの美男美女なら、そりゃ普通の人は濡れるよね。
それもそうだな。

美しさは罪、か。

ニクイネ。
二人は談笑しながらマルテラス魔法学校へと向かった。



今日は魔法の授業があった。

いつもなら的あてに火の玉が当たらず、世界を暗闇に包むところだったが、今回は無事にミッションをこなす事が出来た。

凄い。

魔法が得意になった。

カチューシャの力だけど。

スバルちゃんはいつもラナルータを使っていたんだね。

ドラクエの魔法が使えたんだ。

凄すぎるね。

えっ?

ドラクエの魔法が?!

知らなかった。

確かに洞窟から一瞬で脱出することは出来たが、まさかのリレミトだったってこと?

さっきのはメラかな?
メラミのつもりだった。

威力が弱いな。

スバルはイオナズンを試しに放ってみたが、MPが足りなかった。

不発となり、今度はイオを試したが、小さな爆発未満の粒が飛び出るだけに終わった。

復活魔法は使えるかな?

そこに死んでいるネズミがいるよ。

ザオリクかな?

ザオラルかな?

ネズミの蘇生か。

取り敢えず、確実に生き返らせたいからザオリクで。

スバルの魔法により、ネズミは瞬時に蘇ると体育館倉庫の方へと逃げていった。

スバルは顔を顰め、瞬時にメラゾーマを放った。

ネズミはそのまま焼死体となる。

何故か、ザオリクやメラゾーマはMPを気にせずに打つことが出来るようだった。

駄目だ。

死者蘇生は宇宙倫理に反する。

これは封印しておこう。

スバルちゃん、凄い倫理観だね。

枯れた花くらいなら復活させてもいいんじゃない?

臨機応変だろう。

普段は使わないよ。

そうだね。

切り札の中の切り札だね。

ソロネちゃんはザオリクは使える?
私はサマリカームなんだ。

ゲーム違いかな。

ソロネちゃんは転生する女神なのか。
今回の魔法の授業はSR判定が出たことで、スバルは購買部にて乾杯のコーラを購入した。


ソロネと二人で、静かに祝杯を挙げる。

スバルちゃんは嬉しい事があると、いつもコーラで乾杯するんだ?

いやー。

坂が急だったよね。

本当に自ら苦労に飛び込む性質があるんだね。

良くないかな?

こうやって気分で動くのは。

今後は控えるようにしないと、やっぱり損だらけになっちゃうかもね。

緊張と弛緩を意識しよう。

なるほど。

ぼくが今迄深く傷付いてきた原因はそれか。

スバルはコーラを一気に飲み干した。

強炭酸により喉が焼けるようになり、思わず顔を顰めた。

鼻から抜ける二酸化炭素が痛いでしょ?

気を付けようね。

うっ。

げふっ。

わ、わがっだ。

ぎをづげる。

スバルは水飲み場に向かい、お口直しならぬお喉直しをした。
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登場人物紹介

スバル

魔法使い志望。

ジュニアアイドルをしていた。

ノボル

スバルの級友

突然全てが虚しくなり、出家を決意する。

カンタ

スバルにいちゃもんをつける級友

マリナ

スバルの母

ネリア

可愛い彼女

魔王スケアクロー

スバルの上司にして魔王

ミウラ

打倒の標的にされている勇者

座天使ソロネ

スバルの守護天使

ドミニオン

会社の事務の人

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