第26話 軍師の天使
文字数 2,219文字
ネリアを見送ってから、スバルは業務のことについて考え込んでいた。
ヘンゼルとグレーテルになぞらえた戦法。
パンの撒き方。
光る石の置き方。
紙に図をサラサラと書き出す。
早速普段着に着替えると、ソロネに三重バリヤーを張って貰ってから家を出た。
お向かいさんのアルミサッシのすりガラスの引き戸を開けると、玉座の間にて魔王スケアクローは鼻糞をほじっていた。
スバルは肩を竦めながら事務室へと向かった。
いつものパソコンの前にドミニオンはおらず、彼は給湯室でシフォンを焼いていた。
スバルは首を傾げながらパソコンの席へと向かった。
変身データの開き、キャラクターを検索する。
やがて検索結果から、劉項羽というキャラクターが出て来た。
スバルは迷わずクリックをし、変身ブレスレットを接続する。
マウントの接続を切ると、スバルは変身ブレスレットを掲げた。
眩いばかりの光につつまれ、スバルは黒髪ポニーテールの美少年に変身した。
ゆったりとした出で立ちの、含み笑いの似合う顔付きをしている。
シフォン作りを終えたドミニオンは、事務室に戻るなり声を荒げた。
酷く動揺した様子で、何度も項羽扮するスバルを凝視したり視線を外したりを繰り返す。
スバルは変身を解くと、ドミニオンの焼いたシフォンケーキを見に行った。
シフォンケーキは焼き立ての熱を冷ましている最中であり、強いバニラの香りを放っていた。