第33話 一角の天使

文字数 2,223文字

スバルは外をぶらつきながら、水星の魔女の事を考えていた。


スレッタは驚異のパーメットスコア能力の持ち主である。

これはニュータイプを意味する、シリーズ共通の認識と言える。


ガンダムの能力を発揮するには、パーメットスコア、またはニュータイプの能力が必要不可欠となるようだ。

パーメットスコアは霊媒力。

ぼくも霊媒力が高い。

という事は、主人公御用達の白いガンダムにぼくも搭乗出来るかもしれない。

スバルちゃんなら余裕だろうね。

末那識まで到達しているんだもの。

でも、真にガンダムの本領を発揮させるにはムの力が必要になるの。

ムの力とは?
ガンダムに全ての能力を預ける事が可能な程に涅槃の領域に達した精神の事だよ。

解脱と輪廻を気の狂うなんてものではない程に行わないと、辿り着くことすら叶わない。

なんということだ。

ぼくにムの力はあるか?

あるよ。

スバルちゃんも天人の資格を持っている。

既にかなり高い所まで到達しているよ。

やはり、ムの力を完全に扱える者は一人しかいないんだろうね?

それは恐らく、ヴァーチャーだ。

勿論、ヴァーチャーもそうだけど。

ミカエルよりもはるかに高い存在にあるね。

セラフィム・ミカエルよりも?

それは誰だ?

ム神だよ。
……そのまんまなんだね。

ぼくは少しでもムの力に近づけるよう、にっこりを極めるよ。

スバルちゃんなら出来るよ!

その素質が充分にある。

今度、力試しにガンダムシリーズに出演してみよう。

主人公スバルで。

力不足の時は量子が動かない筈だから失敗はないだろう。

スバルちゃん!

凄い応用力だね!

スバルちゃんなら、完璧なガンダムの主人公を演じられるよ!

昔、ユニコーンガンダムで試したけど、まあまあな結果に終わってしまった。

ユニコーンだって?

いつの間にぼくはガンダムに乗っていたんだ。

しかし、いけないね、あれは。

お母さんへの執着が断ち切れていない上に、未だにネリアにおんぶにだっこな事に気付いていなかった頃だ。

勢いだけで生きるのは本当に良くない。

ぼくはもっと、大人になるんだ。

知らぬ間に試練を通過してきたね。

ユニコーンガンダムは意外にウケたけど、如何にもスバルちゃんって感じのヒットだったね。

しかしまだまともな方なんだよ。

ユニコーンは名作だったよ。

かなり耳が痛い話だ。

ぼくはヒットを生み出すが、大ヒットとまではいかないんだ。

もっと大衆にウケる大大大ヒットを飛ばしたいんだが。

あとからジワジワ伸びるタイプだよ、スバルちゃんは。

何百年も経ってから見直されたりして、ヒットどころではない伝説を生み出すからね。

著作権が切れた頃に。

それもそうだな。

ぼくはレベルアップの補助としてはうってつけなんだ。

前向きに考えよう。

スバルちゃんのガンダムシリーズに、私も出演しようかな。

ハロとして。

いいね。

ハロなら大歓迎だ。

大事にするね。

話が弾んだ頃に、ふと見覚えのある姿を見つけた。


それは、マリナだった。

あれ?

マリナさん?

ん?

スバル!

今日はどうしたんだ?

勤務中だよ。

休憩時間だ。

なんだ、仕事中か。

買い物にでも付き合って貰おうと思ったのに。

買い物か。

仕事中に私用で動くのは良くないな。

ごめん。

今日は駄目かも。

いいよ!

あんた、またヘタレになったんじゃない?

前より切れ味が落ちているよ。

……。

そうかもね。

刃を潰したんだ。

切れない剣だよ。

なんだ、なまくらか。

仕方ないね。

またね、スバル!

マリナを見送ってから、スバルは悲しそうに俯いた。

拳を握りしめ、顔を歪める。

う、う。

無理だ。

ソロネちゃんの会話のノリに慣れきってしまって、マリナさんの毒舌が苦しくて仕方ない。

泣きそうになった。

スバルちゃん……。

本当に褒めて伸びるタイプなんだね。

スバルちゃんは優しさ故に、刃を潰したんだよね。

人を傷付けるのが苦しくて。

スバルちゃんの優しさは、きっと三界五大を照らすから。

今は苦しくてもね。

スケールが大きすぎる気がするけど、ぼくほどになればそのくらいは……。

可愛い四天王として、その程度の事が出来なければ困るよね。

ありがとう、ソロネちゃん。

その通りだよ。

スバルちゃんは、太陽ではないけれど世界を照らす重要な光だから。

私はスバルちゃんの活躍を近くで見守ってるね。

一番近くにはいられないけど、それはネリアちゃんのものだけど、精一杯見守るね。

ソロネちゃん。

きみはなんて天使だ。

ソロネちゃんに貰ったものは、神がかっていて計り知れないよ。

ぼくは本当に、自分の悪い所を直さなくちゃいけない。

定質に引っ張られる癖を。

栄光と死は隣り合わせにあるからね。

スバルちゃんは本当に素直に真剣に生きている。

その証だよ。

スバルちゃんは既にエーテル回転とその輝きを身に着けていたね。

あとは自覚と受容だよ。

スバルちゃんならすぐに出来るよ。

栄光?

まさか……。


天光満つる処に我は在り

黄泉の門開く処に汝在り

出でよ 神の雷


の汝がぼくだと言うのか?

それがぼくの本体?

真核質……。

スバルちゃん……。

予想以上の神童っぷりだね。

インディグネイションを読み解くとは。

まさかの、最上にして底から発する天光だったね。

え?

まさか。

ジーニアスは確かにぼくだったけど。

ジェイドは違うみたいだけどね。

その系列にいるね。

なるほど。

インディグネイションにも色々あるんだね。

真核質、反核質についての相互関係を考えながら、スバルとソロネは吸い込まれるようにモスバーガーに入っていった。


オニオンリングとモスチキンとチーズケーキスティック、そしてココアを注文し、再び二人は白熱の議論を交わした。

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登場人物紹介

スバル

魔法使い志望。

ジュニアアイドルをしていた。

ノボル

スバルの級友

突然全てが虚しくなり、出家を決意する。

カンタ

スバルにいちゃもんをつける級友

マリナ

スバルの母

ネリア

可愛い彼女

魔王スケアクロー

スバルの上司にして魔王

ミウラ

打倒の標的にされている勇者

座天使ソロネ

スバルの守護天使

ドミニオン

会社の事務の人

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