第5話 辛辣の天使
文字数 2,064文字
全ての授業内容が空気のように感じられる事があるのか?
スバルはそのような意識を以て通常通りに授業を受けたが、まるで空気のようには感じられなかった。
何かもっとほかの、重要な要素を悟る事が出来、いつもより授業が楽しく充実したように感じられる。
授業の内容を当然のように理解した上で、真のアストラルの持続の断片を感じ取る事が、叡智の扉を開くコツだよ。
アストラルには色々あって、スバルちゃんはいつも紫の道を歩いていたね。
今度は赤い道を歩いていこうね。
滞りなく授業は終わり、スバルは過去の自分を振り返っていた。
ジュニアアイドルとして、モデルに歌にと活躍してきたが、自分の実力不足を感じ、静かに恥じ入った。
スバルとソロネの会話を盗み聞いたカンタが、突然席の前に躍り出てきた。
スバルは動揺しつつ、冷静にカンタの姿を捉えた。
必死に言い訳を探す。
スバルはタイガー&ドラゴンについて考え、カンタの罵詈雑言を半分程聞き流した。
あれ程迄鬱陶しかった彼の言葉が、耳に半分も入って来ない。
それはまるで、自動で内容を要約されているように感じられた。
スバルちゃん、カンタくんは低次が過ぎて、一周回って究極真理しか話せないようになっているよ。
カンタくんの事が死ぬほど鬱陶しく感じても、邪険にしすぎるのはよくないね。
取り敢えず、親愛の印をプレゼントしてみたらどうかな?
スバルはカバンから、樹脂製のタイルシールを取り出した。
タイル型の半立体のシールで、うさぎのイラストが描いてあった。
それを、そっとカンタに手渡す。
飛び上がって喜ぶカンタの背中を見送り、スバルは小さく溜息を吐いた。
カバンの中のシールは、あと三組しかない。
またどこかで仕入れねばならんだろう。
二人は和やかに会話を交わし、やがて学校を出た。
帰りにモスに寄り、贅沢に散財をした。