第14話 狩魔の天使
文字数 1,939文字
終業の鐘の後に、スバルとソロネは静かに下校をした。
いつもなら右折するところを、今日は左折をする。
マリナの家に行くつもりだった。
あの魔法陣の儀式は真魂のキネツ体幹をほんの少し焼いて、スバルちゃんと私をタキオン傍受装置で繋ぎ合わせる儀式だったの。
つまり、その儀式でやっとスバルちゃんは肉眼で私を認知できるようになったというわけ。
その前から私はずっとスバルちゃんを見守っていたよ。
スバルはポケットからハンカチを取り出し、涙を拭った。
寂しかった。
それは間違いのない事実。
しかし、どんなに見守られていたとて実感を伴わない事には心の寂しさが埋まる事はない。
そう考え、唇を噛み締めた。
それは誰にでも当て嵌まることだよ。
視、聴、触、香、味の五感全てを働かせた、結果としての相手を感じ取ることが出来ないのは辛い事だよ。
どれか一つでも存在しないことには、そこには誰も居ないのと同じだよ。
やっと会えたね、スバルちゃん。
マリナの家は、高級住宅街の一角にあった。
青い屋根の、ペンションのようなお洒落な建物で、父の遺産の一部で自分で建てたものだった。
スバルは呼び鈴を押す。
お菓子の包みを渡すと、スバルは静かにマリナの家から去っていった。
心の中に冷たい風が吹き抜けるようで、虚無に包まれながらトボトボと歩き始める。
悲しみを振り切るように、二人はコンビニに入ってドカ買いをして帰った。