その33 やられた!
文字数 1,331文字
次の日曜日、僕達は女子高生の聖地とも言える繁華街で待ち合わせをした。僕と健斗は早めに着いて星羅達を待っているのだが、周囲は女子ばかりである。男二人組の僕達は目立って仕方なかった。
「なぁ、矢野君」
「何?」
「僕達、目立っていないか?」
「うん。僕もさっきからそう思ってる」
「渡辺さんは、君も気にいる場所を探すって言ったんだよね」
「そう」
「ここなのか?」
僕は何も言えなかった。星羅は確かに僕も気にいる場所と言った。しかし、この場所がそうとはとても思われなかった。もしかすると、僕達は彼女達に体よく騙されたのかもしれない。
僕が不機嫌な顔をしていると、人混みの中から二人がやって来た。星羅の声がいつもより弾んで聞こえた。
「矢野君! お待たせ」
僕は女子の服の流行なんて全く分からないのだが、少なくとも今日の二人は雑誌で見かける今風のファッションでキッチリ仕上げて来ているように思う。二人とも毎日の制服姿では見られない綺麗な脚を晒していた。僕が思わず見とれていると、星羅が眉間に皺を寄せて言った。
「矢野君。嫌らしい目でどこを見ているのよ」
「嫌らしい目だなんて……二人とも綺麗な脚だなと思って」
その途端、星羅も美紀も顔を赤くしていた。美紀は思わず両手で足を隠すような仕草を見せていた。隠すくらいなら見せるなと言いたい。
しかし僕が感じた美観は健斗も同じだったようで、瞬きを忘れて二人を見ていた。
「いや、本当に綺麗だよ。びっくりした」
「そ、そうですか」
美紀が照れながら言った。その紅潮した顔を見て僕は思った。美紀は本当に健斗が好きなのかもしれない。恋愛経験など皆無に等しい僕が言うのも何だが、おそらく僕の予想は当っていると思う。しかし、その気持ちが健斗に届いているか、そしてこれから届くのか、相手が相手だけにかなり微妙な所だと思った。
何となくぎこちなくなった所に、星羅が切りだした。
「とにかく、行こうか」
「どこへ?」
僕が尋ねると、星羅は勝ち誇ったように言った。
「プラネタリウムよ」
「は? どうして」
「この前、二人で行くとか言っていたじゃない。でも男二人はさすがに絵にならないでしょう。だから私達が付き合ってあげるわ。予約はもう取ったから」
「流石君に話があるんじゃなかったのか」
「ふふ……そうでも言わなきゃ、二人は来なかったでしょ」
やられたと思った。そっと健斗を見ると、彼も同じ様に困り顔で頭を掻いていた。しかし、ここまで決まった話を断ると、この先が思いやられる。僕は従うことにした。
「仕方がないな。こうなったら行くしかないな。なぁ流石君」
「あ、うん」
僕達は二人に引っ張られるように歩き始めるのだった。
歩き始めてしばらくして健斗が僕の耳元で、彼女達に聞こえないような小さな声で言った。
「ねぇ、矢野君。石野さんの脚って、美味しそうだね」
「えっ!」
僕は思わず彼の顔を見た。いつもより細くしている目が無気味だった。
「そうかな」
「そうだよ」
どうにも健斗の趣味が分からない。筋肉の全く付いていない頭蓋骨が綺麗だと言ったかと思えば、今度は肉感溢れる女子の脚が良いなどと言う。しかも美味しそうだと……僕はもう一度彼の顔を見たがいつもの健斗で、おかしな所は感じられなかった。
「なぁ、矢野君」
「何?」
「僕達、目立っていないか?」
「うん。僕もさっきからそう思ってる」
「渡辺さんは、君も気にいる場所を探すって言ったんだよね」
「そう」
「ここなのか?」
僕は何も言えなかった。星羅は確かに僕も気にいる場所と言った。しかし、この場所がそうとはとても思われなかった。もしかすると、僕達は彼女達に体よく騙されたのかもしれない。
僕が不機嫌な顔をしていると、人混みの中から二人がやって来た。星羅の声がいつもより弾んで聞こえた。
「矢野君! お待たせ」
僕は女子の服の流行なんて全く分からないのだが、少なくとも今日の二人は雑誌で見かける今風のファッションでキッチリ仕上げて来ているように思う。二人とも毎日の制服姿では見られない綺麗な脚を晒していた。僕が思わず見とれていると、星羅が眉間に皺を寄せて言った。
「矢野君。嫌らしい目でどこを見ているのよ」
「嫌らしい目だなんて……二人とも綺麗な脚だなと思って」
その途端、星羅も美紀も顔を赤くしていた。美紀は思わず両手で足を隠すような仕草を見せていた。隠すくらいなら見せるなと言いたい。
しかし僕が感じた美観は健斗も同じだったようで、瞬きを忘れて二人を見ていた。
「いや、本当に綺麗だよ。びっくりした」
「そ、そうですか」
美紀が照れながら言った。その紅潮した顔を見て僕は思った。美紀は本当に健斗が好きなのかもしれない。恋愛経験など皆無に等しい僕が言うのも何だが、おそらく僕の予想は当っていると思う。しかし、その気持ちが健斗に届いているか、そしてこれから届くのか、相手が相手だけにかなり微妙な所だと思った。
何となくぎこちなくなった所に、星羅が切りだした。
「とにかく、行こうか」
「どこへ?」
僕が尋ねると、星羅は勝ち誇ったように言った。
「プラネタリウムよ」
「は? どうして」
「この前、二人で行くとか言っていたじゃない。でも男二人はさすがに絵にならないでしょう。だから私達が付き合ってあげるわ。予約はもう取ったから」
「流石君に話があるんじゃなかったのか」
「ふふ……そうでも言わなきゃ、二人は来なかったでしょ」
やられたと思った。そっと健斗を見ると、彼も同じ様に困り顔で頭を掻いていた。しかし、ここまで決まった話を断ると、この先が思いやられる。僕は従うことにした。
「仕方がないな。こうなったら行くしかないな。なぁ流石君」
「あ、うん」
僕達は二人に引っ張られるように歩き始めるのだった。
歩き始めてしばらくして健斗が僕の耳元で、彼女達に聞こえないような小さな声で言った。
「ねぇ、矢野君。石野さんの脚って、美味しそうだね」
「えっ!」
僕は思わず彼の顔を見た。いつもより細くしている目が無気味だった。
「そうかな」
「そうだよ」
どうにも健斗の趣味が分からない。筋肉の全く付いていない頭蓋骨が綺麗だと言ったかと思えば、今度は肉感溢れる女子の脚が良いなどと言う。しかも美味しそうだと……僕はもう一度彼の顔を見たがいつもの健斗で、おかしな所は感じられなかった。