その25 これが恋?
文字数 1,075文字
僕達が公園に到着して準備をしていると、星羅が乗ってきた自転車を押しながらやって来た。
「お待たせ!」
今夜の星羅はいつもの制服姿とは違って私服だった。Tシャツにジーパンというありふれた姿だったが、制服姿以外の彼女を見るのが初めての僕は、心がときめいてしまった。どうしたんだろう。飲んだビールが今頃効いて来たのだろうか。
彼女は僕達の近くに来ると鼻を摘まんでいた。
「あなた達、お酒を飲んだの? それに生臭い」
健斗が「はぁ」と自分の手に息を吐きかけながら匂いを嗅いでいた。
「そうかな。自分じゃ気が付かないけど」
「かなり臭いわよ」
「矢野君の家で、カニ缶でビールを飲んだんだ」
星羅の目が大きくなった。これは彼女が驚いた証拠である。
「カニ缶でビールなんて、もろオジサンじゃない」
「別に構わないだろう。さぁ、それより火を点けるぞ。矢野君。準備はいいか」
「あ、あぁ」
それから僕達は順番に火を点けては歓声を上げていた。まだ梅雨にも入っていないのに夏本番のように騒ぐ僕達は少し季節外れ感はあったものの、しばらくすると何とも思わなくなっていた。
僕も星羅が来た時は心臓がバクついたが、いつの間にかいつもの僕になっていた。健斗だけは普段よりテンションが高くなっていて、火の点いた花火を持ってそこらを走り回っていた。
手持ち花火でも派手な物から使ったので、最後の方は地味な線香花火ばかり残ってしまった。僕達は三人集まるようにして指先の小さな火の玉に集中していた。
気が付けば僕のすぐ隣に星羅がいて、甘い香りが漂っていた。星羅はこんないい匂いがしていたのかと、僕は初めて気が付いた。
何度か彼女を抱いた後の今頃こんな風に思うのはどうかと思うが、本当なのだから仕方がない。僕の心臓がまたドキドキしだした。
目線をそれとなく健斗に向けると、彼も僕の方をじっと見ていた。その目には「それが恋だよ」と言った時と同じ輝きがあった。
星羅に視線を戻すと、手元の線香花火の小さな火の塊をじっと見つめる瞳があった。その瞳を見て、僕はこれが恋なのかと思った。ただそうなると、僕と星羅は普通の恋愛とは逆を辿った事になる。
気持ちを伝えるより先にセックスをしてしまうなんて……まぁ、そんな形の恋愛もあっていいかと勝手に納得するのだった。
「ねぇ、渡辺さん」
「何?」
聖羅は指先の赤く燃えている塊を見ながら答えた。
「明日からまた一緒にお昼を食べようね」
彼女は何を言うのかと驚いた様子を見せたがすぐに元に戻り、僕が思うにこれまでで最高の笑顔を見せてくれた。
「いいよ」
僕なりの告白のつもりだった。
「お待たせ!」
今夜の星羅はいつもの制服姿とは違って私服だった。Tシャツにジーパンというありふれた姿だったが、制服姿以外の彼女を見るのが初めての僕は、心がときめいてしまった。どうしたんだろう。飲んだビールが今頃効いて来たのだろうか。
彼女は僕達の近くに来ると鼻を摘まんでいた。
「あなた達、お酒を飲んだの? それに生臭い」
健斗が「はぁ」と自分の手に息を吐きかけながら匂いを嗅いでいた。
「そうかな。自分じゃ気が付かないけど」
「かなり臭いわよ」
「矢野君の家で、カニ缶でビールを飲んだんだ」
星羅の目が大きくなった。これは彼女が驚いた証拠である。
「カニ缶でビールなんて、もろオジサンじゃない」
「別に構わないだろう。さぁ、それより火を点けるぞ。矢野君。準備はいいか」
「あ、あぁ」
それから僕達は順番に火を点けては歓声を上げていた。まだ梅雨にも入っていないのに夏本番のように騒ぐ僕達は少し季節外れ感はあったものの、しばらくすると何とも思わなくなっていた。
僕も星羅が来た時は心臓がバクついたが、いつの間にかいつもの僕になっていた。健斗だけは普段よりテンションが高くなっていて、火の点いた花火を持ってそこらを走り回っていた。
手持ち花火でも派手な物から使ったので、最後の方は地味な線香花火ばかり残ってしまった。僕達は三人集まるようにして指先の小さな火の玉に集中していた。
気が付けば僕のすぐ隣に星羅がいて、甘い香りが漂っていた。星羅はこんないい匂いがしていたのかと、僕は初めて気が付いた。
何度か彼女を抱いた後の今頃こんな風に思うのはどうかと思うが、本当なのだから仕方がない。僕の心臓がまたドキドキしだした。
目線をそれとなく健斗に向けると、彼も僕の方をじっと見ていた。その目には「それが恋だよ」と言った時と同じ輝きがあった。
星羅に視線を戻すと、手元の線香花火の小さな火の塊をじっと見つめる瞳があった。その瞳を見て、僕はこれが恋なのかと思った。ただそうなると、僕と星羅は普通の恋愛とは逆を辿った事になる。
気持ちを伝えるより先にセックスをしてしまうなんて……まぁ、そんな形の恋愛もあっていいかと勝手に納得するのだった。
「ねぇ、渡辺さん」
「何?」
聖羅は指先の赤く燃えている塊を見ながら答えた。
「明日からまた一緒にお昼を食べようね」
彼女は何を言うのかと驚いた様子を見せたがすぐに元に戻り、僕が思うにこれまでで最高の笑顔を見せてくれた。
「いいよ」
僕なりの告白のつもりだった。