その37 これも二股?
文字数 1,264文字
星羅も星羅で思う所があったのか、彼等に直球を投げていた。
「いつから二人はそんなに仲が良くなったの?」
美紀が照れる訳でもなく自然に答えていた。
「別に、普通じゃない? ねぇ流石君」
「そうだね。別に驚くほどの事でもないと思うけどな。君達だって仲がいいじゃないか。だって……」
星羅が一つ大きく咳払いをして鬼の顔で健斗を睨んでいた。彼もその意図が分かったようで、やんわり言葉尻を変えていた。
「君達はずっと前から友達だからね」
健斗の笑いは引きつっていた。しかし星羅の疑問は僕の疑問でもある。何しろ彼には『信子さん』がいるのである。厳密に言えば、これは浮気であり二股ではないのだろうか。そう考える自分が相当いかれているような気がした。
僕は嫌らしいとは思ったが、わざとらしく訊いてみた。
「じゃあ、信子さんはどうなるのかな」
健斗と美紀は二人で目を合わせたかと思うと揃って笑みを浮かべていた。そして美紀が言った。
「矢野君が言っているのは、理科標本室の頭蓋骨の話でしょ」
「そうだよ。知っていたんだ」
「ええ、昨日送ってもらった時に、流石君から色々教えてもらって……信子さんって凄い美人らしいから、早く会いたいと思っているんです」
どうやら美紀も僕達側の人間かもしれない。昨日、あれだけビビリまくっていた女子が一夜明けると頭蓋骨に興味を持つなんて、少なくとも星羅では考えられない。昨日から今日にかけて何があったのだろう。
それから僕達は何を話すわけでもなく、適当に話題を探しながら食事を終えた。そしてこれも恒例のようにその場に仰向けに横になった。ただ美紀だけは、やはり足が都合悪いのか横になろうとせず、横座りのまま健斗の隣にいた。
「もうすぐ夏休みか」
僕が誰に言うでもなく口にすると、美紀が言った。
「そうだね。来週の定期試験が終わったらもう夏休みだから、あっと言う間だね」
「あと一週間か」
健斗も誰に言うでもなく口にすると、星羅が健斗の横顔を見て言った。
「流石君はいいよ。何もしなくても点が取れるんだから」
「そんな事ないよ」
「だって、特別な事は何もしないんでしょ?」
「まぁ、それはそうだけど。基本的に面倒臭いからね」
「いいなぁ。勉強が面倒臭いなんて、私も言ってみたいな。今言っても、何をふざけている! で、終りだもんね」
星羅の何気ない一言で、僕達は笑い声を上げてしまった。
その内一人だけクラスの違う美紀が言った。
「午後は私達、美術の時間だから準備もあるし先に行くね」
健斗が普通に答えていた。
「ああ、じゃあ、放課後に」
「分かった」
そう言って立ち上がった僕の目の前に、いつかの星羅のように美紀のスカートの中が飛び込んできた。『まずいな』とは思ったが、見えてしまったものは仕方がない。
彼女の下着が白だと分かったのだが、もう一つ白い物が見えた。彼女の左の太腿辺りに白い包帯が巻かれていたのである。足を微妙に引きずる姿や白い包帯から推測すると、美紀は昨日の一件で怪我をしたのかもしれない。
それを訊こうとする前に彼女は屋上から姿を消していた。
「いつから二人はそんなに仲が良くなったの?」
美紀が照れる訳でもなく自然に答えていた。
「別に、普通じゃない? ねぇ流石君」
「そうだね。別に驚くほどの事でもないと思うけどな。君達だって仲がいいじゃないか。だって……」
星羅が一つ大きく咳払いをして鬼の顔で健斗を睨んでいた。彼もその意図が分かったようで、やんわり言葉尻を変えていた。
「君達はずっと前から友達だからね」
健斗の笑いは引きつっていた。しかし星羅の疑問は僕の疑問でもある。何しろ彼には『信子さん』がいるのである。厳密に言えば、これは浮気であり二股ではないのだろうか。そう考える自分が相当いかれているような気がした。
僕は嫌らしいとは思ったが、わざとらしく訊いてみた。
「じゃあ、信子さんはどうなるのかな」
健斗と美紀は二人で目を合わせたかと思うと揃って笑みを浮かべていた。そして美紀が言った。
「矢野君が言っているのは、理科標本室の頭蓋骨の話でしょ」
「そうだよ。知っていたんだ」
「ええ、昨日送ってもらった時に、流石君から色々教えてもらって……信子さんって凄い美人らしいから、早く会いたいと思っているんです」
どうやら美紀も僕達側の人間かもしれない。昨日、あれだけビビリまくっていた女子が一夜明けると頭蓋骨に興味を持つなんて、少なくとも星羅では考えられない。昨日から今日にかけて何があったのだろう。
それから僕達は何を話すわけでもなく、適当に話題を探しながら食事を終えた。そしてこれも恒例のようにその場に仰向けに横になった。ただ美紀だけは、やはり足が都合悪いのか横になろうとせず、横座りのまま健斗の隣にいた。
「もうすぐ夏休みか」
僕が誰に言うでもなく口にすると、美紀が言った。
「そうだね。来週の定期試験が終わったらもう夏休みだから、あっと言う間だね」
「あと一週間か」
健斗も誰に言うでもなく口にすると、星羅が健斗の横顔を見て言った。
「流石君はいいよ。何もしなくても点が取れるんだから」
「そんな事ないよ」
「だって、特別な事は何もしないんでしょ?」
「まぁ、それはそうだけど。基本的に面倒臭いからね」
「いいなぁ。勉強が面倒臭いなんて、私も言ってみたいな。今言っても、何をふざけている! で、終りだもんね」
星羅の何気ない一言で、僕達は笑い声を上げてしまった。
その内一人だけクラスの違う美紀が言った。
「午後は私達、美術の時間だから準備もあるし先に行くね」
健斗が普通に答えていた。
「ああ、じゃあ、放課後に」
「分かった」
そう言って立ち上がった僕の目の前に、いつかの星羅のように美紀のスカートの中が飛び込んできた。『まずいな』とは思ったが、見えてしまったものは仕方がない。
彼女の下着が白だと分かったのだが、もう一つ白い物が見えた。彼女の左の太腿辺りに白い包帯が巻かれていたのである。足を微妙に引きずる姿や白い包帯から推測すると、美紀は昨日の一件で怪我をしたのかもしれない。
それを訊こうとする前に彼女は屋上から姿を消していた。