その8 謝ればいい

文字数 547文字

 日差しは暖かく風も無い。このまま目を閉じると眠ってしまいそうだった。僕がつい本当に目を閉じていると彼が言った。

「いい天気だね」
「うん。いい天気だ」
「サボってどこか行こうか」
「えっ?」

 僕は横になったまま健斗の顔を見た。彼も目を閉じていた。

「流石君はそんな事をしていたの?」
「うん。前の学校じゃ時々ね」
「そうなんだ。でもバレたでしょ」
「もちろん。いつもバレバレだった」
「じゃあ、前の学校じゃあ謹慎とか停学になったとか?」

 健斗は起き上がって言った。

「そんなのにはならないよ」
「どうして?」
「謝るから」
「謝る?」
「そう。悪い事をしたら謝るって小学生の頃に習っただろう」

 僕は健斗と僕は全く同じジャンルだと、今また再認識させられた。この適当感が僕には心地よいのだ。

「そうだよね。謝ればいいんだよね」
「だから、今から街に行かないか」

 僕は少し考えてから答えた。

「やっぱり行かない」
「どうして」
「謝るのが面倒臭いから」

 健斗はぽかんと口を開けたまま僕の顔を見ていたかと思うと、いつもの笑みを浮かべて言った。

「そうだよね。考えてみれば面相臭いかもしれないね」
「そうだろう。謝らなくてもいいのなら行ってもいいけどね」
「本当、そうだよね」

 僕達はまた並んで横になると、示し合わせたかのように大きく伸びをした。
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