その26 聖羅の頼み
文字数 1,314文字
僕なりの告白と言っても、一緒に昼を食べようぐらいの言葉で真意が伝わったかどうか分からないが、一応僕の中では目的は達成出来ていた。目に見えての変化は感じられなかったが、僕と星羅が二人で話し込む時間が多くなったような気がする。
そんな時に健斗が孤独になっているかと言えば違う。彼は相変わらず『信子さん』と語り合っているようで、逆に僕達の事など眼中に無く、自分の世界にどっぷりとはまっているように思えた。
そんなある日、僕と健斗が教室の隅で頭を突き合わせて相談事をしていると。それを見つけた星羅がやって来た。
「何してるの?」
僕は自分のスマホを操作しながら答えた。
「今度、流石君とプラネタリウムに行くんだけど、その予約」
「男二人でプラネタリウム?」
「そうさ。ダメなのか?」
「ダメってことじゃないけど……ちょっと不気味」
僕と健斗は星羅が何を言いたいのか分からず、二人で首を傾げていた。しかし彼女は全く気にしていないようで、いきなり話題を変えて来た。
「あのさ、流石君にお願いがあるんだけど」
「何?」
「流石君と会って話がしたいって子がいるんだけど」
「誰?」
「三組の石野美紀って子なんだけど。知らない?」
「石野さん? 知らないな」
星羅も無謀な質問をするものである。健斗が女の子に興味があるはずもなく、ましてやこのクラス全員の顔と名前もまだ一致していないのに、他のクラスの生徒など知るはずがないのである。
「その子がどうかしたのか?」
僕が尋ねると、星羅は机の角に腰を引っ掛けるようにして言った。
「美紀とはさ、中学からの友達なんだけど、この前の模試で流石君がとんでもない点数を取ったものだから気になっちゃったみたいで、一度会いたいんだってさ。無理かな」
健斗は困っていた。
「無理かな? 何て言われても、会って何を話しすればいいんだ?」
「それは会った時にあの子から切り出すわよ。あの子、志望が公立理系だから、その辺りの勉強の仕方みたいな話じゃないかな」
「そんな事を言われてもなぁ。僕は特別な事は何もしていないぞ」
「分かっているわ。分かっているけど、一度会うだけ会ってみてよ」
「気が乗らないな」
彼の気持ちは僕には分かりすぎるほど分かる。何が悲しくて他のクラスの女子に勉強のやり方なんて教えなきゃならないのか、面倒臭い事この上ない。しかし星羅はしつこかった。
「流石君一人でとは言わないわ。私と矢野君も一緒に行くから」
「えっ! 僕も行くのか」
「何言っているの。いきなり二人だけっていうのも、お互い気を使うでしょう。それに流石君は傍 に誰かがいないと、とんでもない話を普通にしちゃうから」
どうやら星羅は、僕と自分の関係を健斗が暴露するのではないかと警戒しているのかもしれない。それに真顔で『僕はドクロの信子さんが好きで』などと口にしようものなら、気の弱い相手だったら顔面蒼白だろう。
しかし考えてみれば、初めての女子の前で健斗がどんな顔をするのかも気になる所だ。僕は星羅の誘いに乗ることにした。
「じゃあ、僕も行くから一度会ってみれば」
「そうかぁ……じゃあ一度だけなら」
「そう! じゃあ後で連絡するから」
星羅はスカートの裾を翻 して教室を出て行った。
そんな時に健斗が孤独になっているかと言えば違う。彼は相変わらず『信子さん』と語り合っているようで、逆に僕達の事など眼中に無く、自分の世界にどっぷりとはまっているように思えた。
そんなある日、僕と健斗が教室の隅で頭を突き合わせて相談事をしていると。それを見つけた星羅がやって来た。
「何してるの?」
僕は自分のスマホを操作しながら答えた。
「今度、流石君とプラネタリウムに行くんだけど、その予約」
「男二人でプラネタリウム?」
「そうさ。ダメなのか?」
「ダメってことじゃないけど……ちょっと不気味」
僕と健斗は星羅が何を言いたいのか分からず、二人で首を傾げていた。しかし彼女は全く気にしていないようで、いきなり話題を変えて来た。
「あのさ、流石君にお願いがあるんだけど」
「何?」
「流石君と会って話がしたいって子がいるんだけど」
「誰?」
「三組の石野美紀って子なんだけど。知らない?」
「石野さん? 知らないな」
星羅も無謀な質問をするものである。健斗が女の子に興味があるはずもなく、ましてやこのクラス全員の顔と名前もまだ一致していないのに、他のクラスの生徒など知るはずがないのである。
「その子がどうかしたのか?」
僕が尋ねると、星羅は机の角に腰を引っ掛けるようにして言った。
「美紀とはさ、中学からの友達なんだけど、この前の模試で流石君がとんでもない点数を取ったものだから気になっちゃったみたいで、一度会いたいんだってさ。無理かな」
健斗は困っていた。
「無理かな? 何て言われても、会って何を話しすればいいんだ?」
「それは会った時にあの子から切り出すわよ。あの子、志望が公立理系だから、その辺りの勉強の仕方みたいな話じゃないかな」
「そんな事を言われてもなぁ。僕は特別な事は何もしていないぞ」
「分かっているわ。分かっているけど、一度会うだけ会ってみてよ」
「気が乗らないな」
彼の気持ちは僕には分かりすぎるほど分かる。何が悲しくて他のクラスの女子に勉強のやり方なんて教えなきゃならないのか、面倒臭い事この上ない。しかし星羅はしつこかった。
「流石君一人でとは言わないわ。私と矢野君も一緒に行くから」
「えっ! 僕も行くのか」
「何言っているの。いきなり二人だけっていうのも、お互い気を使うでしょう。それに流石君は
どうやら星羅は、僕と自分の関係を健斗が暴露するのではないかと警戒しているのかもしれない。それに真顔で『僕はドクロの信子さんが好きで』などと口にしようものなら、気の弱い相手だったら顔面蒼白だろう。
しかし考えてみれば、初めての女子の前で健斗がどんな顔をするのかも気になる所だ。僕は星羅の誘いに乗ることにした。
「じゃあ、僕も行くから一度会ってみれば」
「そうかぁ……じゃあ一度だけなら」
「そう! じゃあ後で連絡するから」
星羅はスカートの裾を