閑話31「続・身も蓋もない話」なのぢゃ!

文字数 825文字

【閑話31】

 「恋愛」とは、言い換えれば「距離」なのぢゃ。

 七日前、私とあなたの距離はゼロだった……
 六日前、私とあなたの距離は10kmだった
 五日前、私とあなたの距離は、おそらく20kmだった
 四日前、私とあなたの距離は、2mだった
 三日前、私とあなたの距離は、1m~2mだった
 二日前、私とあなたの距離は、1m~2mだった
 そして今日、私とあなたの距離はゼロ~2mだった

 金曜日、私とあなたはホテルで愛し合いました……
 土曜日、休日のあなたは良き夫
 日曜日、良き夫は家族とおでかけ
 月曜日、部長と私の席の距離は2m
 火曜日、部長のデスクの前でお仕事の報告
 水曜日、部長が給湯室に来て、私を含む女子たちにお菓子の差し入れ
 木曜日、部長が給湯室に来て、こっそり私の手を握り、次の密会の予定を耳打ち

 このように、二人の身体的距離で、社内不倫の恋のストーリーが出来上がるのぢゃな。
(いや、これ、即興ながらなかなか良いではないか! これは小説に使えるわい)

 ラブストーリーとは、この身体的距離の変化に対応する精神的距離の変化によって、生み出されるものなのぢゃな。

 身体的距離には物理的な制約があるが、精神的距離は制約が無く起伏が激しいし、身体的距離と精神的距離は必ずしも比例しない。
 往々にして、身体的距離が近い時に精神的距離が離れてしまうこともあって、これを「痴話喧嘩」や「幻滅」と言うし、身体的距離が遠いほど精神的距離が近づく「遠距離恋愛」という場合もある。
 そして、これに「時間」が加われば、また話はややこしくなって、「遠距離恋愛」も初めのうちは燃え上がるけれど、時間が経てば経つほど「ああ、やっぱりダメ、こんな恋、私耐えられない」と破局してしまいがちぢゃな。

 まっ、しかし、「恋」と云うものを身も蓋もなく言い表せば、

「あなたと私の身体的距離を限りなくゼロに近づけたい! ゼロにしたい!」

 と云う「身体的接触欲求」に言い換えることができるぢゃろうな。
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