閑話35 「よどみに浮かぶ……」なのぢゃ!

文字数 970文字

【閑話35】

 お向かいの家が、急に普請を始めたのぢゃ。

 まず、ひと月ほどかけて、自動シャッター付き車庫を増設した。
 次に、その車庫に立派なRVの新車が収まった。
 次に、造園業者が、二週間ほどかけて庭を作っていった。 
 そして今は、外壁のリフォームをしておる。

 別に、取り立てて見張っている訳ではないのぢゃがな、儂の書斎兼寝室の真向かいに、そのお家があるのでな、朝、カーテンを開ける度に、目をつぶらん限りは、いやでも目に入るのぢゃわい。
 儂の見立てでは、お向かいさんは、宝くじでも当たったのではないかと睨んでおる。

 儂は、複雑な気持ちで、お向かいの様子を眺めておる。
 けっして、羨望や嫉妬のようなものでなく、むしろ逆の気持ちぢゃ。

 儂の家は、海岸線から1kmほどの海抜30mから20mの高台の分譲地にあるのぢゃがな、買い物やらなんやらは、下に降りて用を足してくるわけぢゃ。

 最近は、下の土地では田んぼを潰した分譲地が目立って、盛んに家を建てておる。
 おそらく、子供がまだ小さい若夫婦が、希望に胸を膨らませて普請しているのぢゃろ……。
 ハンドルを握る儂は、その光景を横目で見やりながら、複雑な気持ちになるのぢゃ……。

 千島海溝日本海溝地震津波が、切迫していると云う。
 それは、マグニチュード9以上、震源直近地域震度7、震源直近地域津波24m~30m、と云う東日本大震災をも上回る規模の地震と津波災害ぢゃ。
 これが今現在、いつ起きてもおかしくない、切迫した状況だと盛んに云われておる。

 この状況を受けて、つい最近、行政関係各所は、浸水予想とハザードマップの見直しを行ったのぢゃ――。

 縄文時代と云われた、1万年前から4000年前は、地球は温暖化の時期で、当然、極致の氷は溶けており、当時の海面は現代より、「平均4m高かった」と云われ、これを我が国の考古学では「縄文海進」と呼んでおる学術上の常識なのぢゃ。

 現在までに発見されている縄文遺跡は、海岸線から遠く離れているにも関わらず、巨大な貝塚に大量の魚介類の廃棄物が投棄されているのはなぜか?
 それは、縄文時代にはその遺跡のところまで海だったからぢゃ。
 よいか皆の衆、この日本はの、太平洋沿岸でも日本海沿岸でも、現代の都市が構築されている土地は、縄文時代は、ぜ~んぶ海の底だったのぢゃわい。
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