閑話9「帝国の崩壊」なのぢゃ!

文字数 1,160文字

【閑話9】

【今日……、いくつかの帝国が崩壊した。
それは、何の前触れもなく、突然やってきて、一瞬のうちに帝国を滅ぼしていった……。

 神殿や宮殿の屋根が、突然崩れ去った。
  我々が(あが)める生命(いのち)の樹が、メリメリと根こそぎ引き抜かれた。
 引き抜かれたあとの巨大な穴の周りでは、逃げ遅れた多くの仲間たちが右往左往していたが、ある者は土砂の下敷きとなり、ある者は見えない巨大な力に踏みつぶされ、跡形もなくなっていた。
 
 その見えない巨大な力は瞬時に移動し、遥か彼方の別の帝国までも破壊し尽くしていた。
 嗚呼、空をも覆い隠す、あの巨大な影は神なのか? 我々に災いをもたらす破壊神なのか?
 嗚呼、我らはこのまま永久に、破壊神の突然の出現に怯えて暮らさねばならぬのか……。】

 えっ? 「とうとう懲無庵先生も、作品を執筆する気になったのですか?」とな?
 いやいや、とんでもない。
 儂しゃもう、面倒なことはやりたくないぢゃ! 
 まあ、ちょっとは考えていることも、無いでは無いがの。ふぉっふぉっふぉっふぉ

 実は昨日、庭の草むしりをしたのぢゃ。
 で、庭に目立っておる大きめの草を引っこ抜いたらば、その下から、ミジンコほどのちっちゃな蟻どもがワシャワシャと出てきよったのぢゃ。
 その草の下に巣を作っていたらしく、突然巣穴を壊されて慌てて右往左往しておるのぢゃ。

 少し離れた場所にも同じような草があって、それを引っこ抜いたら、また蟻どもがワシャワシャと慌てふためいて出てきよった。
 どうやら蟻どものなかには、草の下に巣を作る種族があるらしいわい。

 その光景を見ていたら「蟻んこ帝国の崩壊」という言葉が思い浮かんでな、蟻どもの立場になれば、「ああ、この突然の地獄絵図は、神の怒りだ! 祟りじゃ~、お許しを~」などと思っておるのぢゃろうと、ついつい妄想してしまったのぢゃ。

 あのミジンコほどの、ちっちゃな蟻んこでは、人間の姿の全貌は見えぬはずぢゃから、自分たちの巣穴をぶっ壊しているものの正体は分からないはずぢゃ。
 巨大な黒い影が迫ってきた途端に、巣穴の上の大木(草)は引っこ抜かれ、巣穴はガラガラと壊され、逃げ遅れた仲間は踏みつぶされてペチャンコになってしまう……。
それがなんの前触れもなく、突然起きるのぢゃからな……。
おお、これは怖いのう。
 蟻んこどもは、人間の存在を、自然災害や神様のように感じているはずなのぢゃ。

 まあ、儂が破壊神の場合は、草を引っこ抜いて巣穴を壊すだけぢゃから、蟻んこどもは、また巣穴を修繕すればいいだけの話ぢゃ。
 しかし、我が家の奥様が破壊神となった場合は、「蟻んこ帝国の崩壊」では済まず、「蟻んこ帝国の滅亡」になってしまうのぢゃ。
 おお怖っ!

 では、その話はまた次回にの。
ふぉっふぉっふぉっふぉ
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