第65話 第二回星天堂祭り

文字数 603文字

 第一回の星天堂祭りから一年が過ぎた。
 去年と同じ体育の日、第二回の祭りが開催された。今年は、イベントスタッフに申し込んでいない。今では、その他いっさい、星野川でのボランティアに参加していなかった。
 入社するとすぐ編集に配属され、タウン誌の制作に携わった。そして、この九月の異動で広告企画室に移り、コピーライターを務めることになった。
 入社後、少しでも応援してくれた人たちに報いたいと思い、星野川市のために、今の仕事の中で役立てればと懸命に努めた。五ヶ月間、編集部では星野川の観光スポットやレストラン、特産品などを取材して回った。活性化の一助になりたい一心であった。
 コピーライターとなった今も、編集部から次号のタウン誌で歴史的な建物の特集が組まれると聞いた時、真っ先に星天堂が思い浮かんだほどだ。
 大正時代に繊維会館として建てられた星天堂は、かつての先端産業を象徴するモダンな洋風建築であり、華やかな星野川の面影を現代に伝えている。今では、当時を偲ぶ貴重な建造物として、市の文化財指定を受けている。
 コピーライターとなった今では、タウン誌に直接関わることはない。それでも、編集部に頼んで次号の記事に取り上げてもらおうと思い、秋晴れの祭日、星天堂の写真を撮りに出かけた。
 通りの反対側に立って、カメラを構えた。イベントを遠目に見ながら、店舗の全景を写真に収めると、逃げるようにその場を離れた。
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