第71話 星天堂忘年会

文字数 604文字

 その年の暮れ、星天堂の番頭が集まり、忘年会が開かれた。
 僕を番頭に推薦してくれた川岸さんをはじめ、さまざまな町おこしのイベントに携わっている洋菓子店の杉山さん、映画制作サークルを主催している高木さん、『市長への手紙』で全国の星野さんと交流するという企画提案をした県職員の土田さんをはじめとする十人の番頭、そして星天堂の担当課である観光課の松田係長と主査の久保田さんも参加して、皆で鍋を作り、酒を飲んだ。
 宴もたけなわ、酔いも十分に回った頃、松田係長が僕の向かいに座り、真剣な顔で話し始めた。
「倉知さん、来年の補欠選挙に出てもらえんやろか。今の市議会ではどうしようもないんや。私らも星野川市を何とか活性化しようと思うて、こうやって星天堂をやったりしてるけど、議員さんはただ反対するばかりで、前向きな提案が全く出てこん。このままではあかんのや。私は選管にいたこともあるで、票読みもできます。次の選挙では、私も立場上陰ながらやけど応援させてもらうで。もう一回出てもらえんやろか」
 即座に「出ます」とは答えられなかった。
「立候補しても、足を引っ張る人がいるんではどうしようもないですよ」
 松田さんの言葉をありがたく思いながらも、全くその気がないような素振りで、苦笑した表情を作ってみせた。
「そうや、頑張んねや。僕らも応援するし。高校の同級生たちにも頼んであげるよ」
 川岸さんが力強く僕の肩を叩いた。
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