第51話 意外な出会い
文字数 474文字
九月一日、稲門会に所属する七十名余りの会員のうち、三十人以上が酒宴に集まっていた。
新入会員として自己紹介の挨拶をし、目立たぬように末席に潜り込む。地元の大会社の社長である七十歳過ぎの会長が挨拶に立ち、乾杯が済むと宴会が始まった。
すぐに上座の会長から、「倉知君、こっちへ来なさい」と声が掛かった。空いていたのは、会長の隣の席だった。そこで足を崩せないまま畏まって飲んでいると、遅れて入ってきた四十歳くらいの男性が遅刻を詫び、会長の向かいの席に座った。
新入会員である僕には周囲の話がまだ把握できないものばかりであったが、会長の会話からひとつだけ興味がある話が出た。選挙の話題である。
その内容から僕は、会長の前にいる人は議員秘書じゃないかと推測した。緊張しながらも、興味につられて「選挙って、誰が立候補されるのですか」と聞いてみた。
「佐々木君だよ。彼は衆議院議員なんだ」と、会長は素っ気なく答える。
「佐々木さんて、どなたですか」と聞き返すと、「彼」と向かいの席の男性を指差した。予想と違い、国会議員が意外に若い人であることに驚いた。
新入会員として自己紹介の挨拶をし、目立たぬように末席に潜り込む。地元の大会社の社長である七十歳過ぎの会長が挨拶に立ち、乾杯が済むと宴会が始まった。
すぐに上座の会長から、「倉知君、こっちへ来なさい」と声が掛かった。空いていたのは、会長の隣の席だった。そこで足を崩せないまま畏まって飲んでいると、遅れて入ってきた四十歳くらいの男性が遅刻を詫び、会長の向かいの席に座った。
新入会員である僕には周囲の話がまだ把握できないものばかりであったが、会長の会話からひとつだけ興味がある話が出た。選挙の話題である。
その内容から僕は、会長の前にいる人は議員秘書じゃないかと推測した。緊張しながらも、興味につられて「選挙って、誰が立候補されるのですか」と聞いてみた。
「佐々木君だよ。彼は衆議院議員なんだ」と、会長は素っ気なく答える。
「佐々木さんて、どなたですか」と聞き返すと、「彼」と向かいの席の男性を指差した。予想と違い、国会議員が意外に若い人であることに驚いた。