第61話 再会
文字数 508文字
選挙から一年が過ぎた。香山さんやノブちゃんの顔を見なくなって、半年が経つ。もう支持者の応援の声を聞く機会もなかった。
本当に僕はこの町に必要だったのだろうかと振り返る。必要でないから、落選したのではないか。自分を求めてくれる場所で、能力を活かしたほうがよいのではないかと考えるようになっていた。
落選から一年が過ぎた三月の初め、会社員になることを決めた。選挙で名刺やポスターを注文した印刷会社の採用試験を受け、入社が決まったのである。社長との面接で、もう二度と選挙に立候補しないことを約束した。
すべてを諦め、忘れるつもりであった。
中途採用であったが、他の新入社員とともに四月の入社式からのスタートである。
入社式の前の週末、半年振りに香山さんに電話をかけた。会社員になったことを知らせ、最後に一度だけ会いたいと告げた。彼女は三月いっぱいで幼稚園を辞めるという。結婚の準備のためである。
今は後片付けをしているだけだから、昼休みなら会えるという。電話を切ると、すぐに幼稚園に向かった。
この再会で、わずかな可能性に賭けているのか、本当に最後のお別れに行くつもりなのか、まだ自分でも判断できずにいた。
本当に僕はこの町に必要だったのだろうかと振り返る。必要でないから、落選したのではないか。自分を求めてくれる場所で、能力を活かしたほうがよいのではないかと考えるようになっていた。
落選から一年が過ぎた三月の初め、会社員になることを決めた。選挙で名刺やポスターを注文した印刷会社の採用試験を受け、入社が決まったのである。社長との面接で、もう二度と選挙に立候補しないことを約束した。
すべてを諦め、忘れるつもりであった。
中途採用であったが、他の新入社員とともに四月の入社式からのスタートである。
入社式の前の週末、半年振りに香山さんに電話をかけた。会社員になったことを知らせ、最後に一度だけ会いたいと告げた。彼女は三月いっぱいで幼稚園を辞めるという。結婚の準備のためである。
今は後片付けをしているだけだから、昼休みなら会えるという。電話を切ると、すぐに幼稚園に向かった。
この再会で、わずかな可能性に賭けているのか、本当に最後のお別れに行くつもりなのか、まだ自分でも判断できずにいた。