第20話 出陣式
文字数 508文字
告示の朝、冷たい雨が降っていた。
事務所の横にある運送会社の駐車場を借りて、八時から出陣式を行った。
集まったのは、大半が町内の人である。一週間前には同級生の家を回って、出陣式に来てくれるように頼んでおいたのだが、姿が見えたのは小学校からの友達の藤山君だけだった。日曜の朝早く、しかも雨だったからかもしれない。近所から集まってくれた人たちを見る限り、地域代表という感が否めない。
門先生が応援演説に立つ。
「金森先生と私と倉知さんのお父さんと三人で飲んだ席で、金森先生が私に『今度、倉知さんの息子さんを市議に出すから、しっかり応援頼むな。彼を私の跡継ぎにするつもりやで』と言われたのが、私への最後の言葉になりました。私はその遺言を叶えるために、どうしても倉知さんを勝たせてやりたいのです。生涯を通して、県政のため、星野川市のために尽力された金森先生の思いが叶えられるよう、みなさんにもどうか力を貸してやっていただきたい。心からお願いいたします」
その熱い弁舌に、心が震えた。
初めて聞く経緯に不思議な感銘を受けながらも、ここに集まる人には市政や県政は縁遠い話なのかもしれないと冷静に感じている自分がいた。
事務所の横にある運送会社の駐車場を借りて、八時から出陣式を行った。
集まったのは、大半が町内の人である。一週間前には同級生の家を回って、出陣式に来てくれるように頼んでおいたのだが、姿が見えたのは小学校からの友達の藤山君だけだった。日曜の朝早く、しかも雨だったからかもしれない。近所から集まってくれた人たちを見る限り、地域代表という感が否めない。
門先生が応援演説に立つ。
「金森先生と私と倉知さんのお父さんと三人で飲んだ席で、金森先生が私に『今度、倉知さんの息子さんを市議に出すから、しっかり応援頼むな。彼を私の跡継ぎにするつもりやで』と言われたのが、私への最後の言葉になりました。私はその遺言を叶えるために、どうしても倉知さんを勝たせてやりたいのです。生涯を通して、県政のため、星野川市のために尽力された金森先生の思いが叶えられるよう、みなさんにもどうか力を貸してやっていただきたい。心からお願いいたします」
その熱い弁舌に、心が震えた。
初めて聞く経緯に不思議な感銘を受けながらも、ここに集まる人には市政や県政は縁遠い話なのかもしれないと冷静に感じている自分がいた。