第69話 稲門会入会から一年
文字数 403文字
九月一日、稲門会の例会が開かれた。場所は、かつて勤皇の志士たちが集ったという老舗の料亭だった。
通り沿いに建つ古く大きな門をくぐると、庭園の池の向こうに座敷の明かりが見えた。蔵を右手に見ながら、そぼ降る雨の中を傘も差さずに玄関へと歩く自分の姿を、幕末の志士に重ね合わせていた。
今度の例会で、入会から丸一年になる。最初半年くらいは緊張もしたが、その後、後輩の入会が続き、新参者という意識も薄れ、企業の経営者らが居並ぶ場の雰囲気にも慣れてきていた。
毎回、その月の幹事の挨拶、そして会長の乾杯で例会が始まる。三十分を過ぎた頃から、それぞれ席を離れ、移動して酒を注ぎ、話をして回る。僕も多少料理を腹に入れ、ビールが適度に回り心地よくなってから、酒を注ぎに席を立った。
上座から順に注ぎ始めて三人目、この会への紹介者である高村先輩の前に座ると、大きな声でいきなり、「おぅ、市議会議員」と声をかけられた。
通り沿いに建つ古く大きな門をくぐると、庭園の池の向こうに座敷の明かりが見えた。蔵を右手に見ながら、そぼ降る雨の中を傘も差さずに玄関へと歩く自分の姿を、幕末の志士に重ね合わせていた。
今度の例会で、入会から丸一年になる。最初半年くらいは緊張もしたが、その後、後輩の入会が続き、新参者という意識も薄れ、企業の経営者らが居並ぶ場の雰囲気にも慣れてきていた。
毎回、その月の幹事の挨拶、そして会長の乾杯で例会が始まる。三十分を過ぎた頃から、それぞれ席を離れ、移動して酒を注ぎ、話をして回る。僕も多少料理を腹に入れ、ビールが適度に回り心地よくなってから、酒を注ぎに席を立った。
上座から順に注ぎ始めて三人目、この会への紹介者である高村先輩の前に座ると、大きな声でいきなり、「おぅ、市議会議員」と声をかけられた。