第15話 減りゆく級友

文字数 555文字

 二月九日の告示まで三週間余りを残すだけとなり、切迫する時間の中で、僕自身の力で支援組織を作る必要性を感じていた。
 高校からは受験を考え、進学コースのある市外の私立へ通っていたため、星野川で頼りにできる友人は、小中学校の同級生だけである。卒業アルバムの名簿を頼りに、一人ひとり電話で所在を確かめ、会いにいくことにした。十年以上離れていて、付き合いもなかったから、これまで躊躇していたが、もうそんな余裕はない。臆せず、片っ端から電話をかけた。
 しかし調べ始めてすぐに、その多くが星野川から出て行ってしまっていることが分かった。ここで働いているのは、四分の一程度。あとは進学や就職、結婚を機に、市外や県外に出て暮らしているようだ。
 こうやって若い人が出て行っているという現実には目を向けず、先細りする税収にも構わず、住民は地区の公共工事を優先的に考えている。不況で倒産する企業も多い中、ますます働き口も減るだろう。さらに働き手はここから出て行くだろう。この町の人の多くは、そのことついて一切考えず、これから先も今まで通りのことができると思っている。
 すでに慣習となっている政治手法に楔を打ち込むことができるのは、このわずかに残された若者かもしれない。小さな楔を研ぐような思いで、一人ずつ電話をかけていった。
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