第58話 ステータス

文字数 493文字

 市長からは、いつでも市長室に遊びに来るように言われていたので、その言葉に甘えて何度か会いに行ったことがある。
 まず、秘書室に電話して、
「倉知と申しますが、市長にお会いしたいのですが、そうお伝え願えますか」
 と申し込むと、
「市長は一般の方とはお会いになれません」
 という返答。
「そう市長がおっしゃっているのですか」
「いえ、違います。私の判断です」と女性職員は答えた。
「ともかくも倉知という者が会いたいと言っていると、市長に伝えてもらえますか」と電話を切った。
 三十分もしないうちに、電話が鳴った。さっきの女性職員からだった。
「さきほどは失礼いたしました。市長がお会いしたいと申しておりますので、日程のほうを決めさせていただきたいのですが。ご一緒に昼食をと申しておりますが、明日のお昼はご都合はいかがでしょうか」
 話はすぐに決まった。
 しかし、そのような特別な応対も自慢にならないし、何の意味もない。市長と親しく振舞うステータスが与えられ、次回の選挙へのモチベーションを失わせない配慮が感じられるだけで、実際に何かを形にできるような行動が取れたわけではないからだ。
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