『余白』

文字数 284文字

風に揺れる銀杏の
柔らかな彩りの変化に目を留めて
目深にしていたキャスケットのつばを
少しばかり上げた

紅く色付いたナナカマドへ
ときおり話しかけるように
ゆららゆららと銀杏は躍る

そっと樹々の袂へ近づいて
話し声に耳を澄ませる
風に揺られる一員の振りをして





一枚、また一枚
シャッターをきるその向こう
ハッとして手をとめる

まんまる瞳のエゾリス
両手に何かを持ち
不思議そうにこちらを見ていた

交わした視線は一瞬
その一瞬で
カラダのなか
柔らかな色が満ちていく

軽やかに素早く駆けてゆく姿
見失わぬよう追い求め
近すぎぬよう注意して
呆けたように
しばらく眺めていた
余白のじかん



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